言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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聖国の大神官長様がやって来た

07 マジで敵に回したくない

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 ちょっとした騒動があったけど、相談の結果、マントの町の祈りはその日の昼から行われることになった。

 三時間ほどで儀式は終わるらしいわ。長いのか短いのかわかんない。勿論、私もイシリス様も同行するわよ。とはいえ、昼には少し時間があったから、早いけど昼食をとることにしたの。

 私とイシリス様は少し離れた丸太の上に腰を下ろす。

 すると、視界に豪華な馬車が入った。自然と、監視している付き人の一人と目が合う。死者を冒涜した付き人たちとは違うわよ。軽く会釈されたわ。私は軽く手を上げ笑みを浮かべて答えた。少し、引き攣ってると思うけど。

 つい、ほんの少し前の付き人たちの手際の良さを目撃したら、誰でも引き攣るわ。容赦なかったからね。

 陣営の周囲にはイシリス様の結界が張られている。だから大丈夫なんだけど、同乗していた付き人たちが馬車から降りることを、大神官長様は許さなかったの。まぁそうよね。あれほど、穢れた地と叫んでいたんだから。

 親切に降りなくていいって言ってるのに、彼女たちは騒ぎ出したの。騒音レベルぐらいの声でね。今は静かだけど。

 いくら大神官長様が出ないように命令しても、自分の進退が掛かってるんだから、大人しく命令を聞くわけはないよね。

 それとも、懇願すれば助けてくれるとでも思ったのかな。情で訴えれば、あの腹黒女が許すとでも。流されると。甘い甘い。傍で働いていてわからなかったのが不思議だわ。

 煩いからといって、私たちが馬車の扉を開けて怒鳴るわけにはいかないし。どうしたものかと考えていると、違う馬車に乗っていた数人の付き人が音もなく駆け付けて、無言のまま取手の穴に棒を差し込んでいた。

 バンバンと扉を叩く音と叫び声。

 それも、あっという間に聞こえなくなったわ。音を遮る結界を馬車を中心に掛けたから。音は一切漏れていない。

 馬車を取り囲むように、付き人たちは立つ。大神官長様の代わりに、目を光らせ監視している。その間、大神官長様は一度も馬車に視線を向けてなかったわ。当然、別の馬車に乗車していた付き人たちに指示を出してはいない。

 なのに、この統率力。

 阿吽の呼吸。

 マジで、敵に回したくないわ……

 改めて、そう思ったよ。

 一応、軟禁されてる付き人たちの食事は用意したわよ。しばらくして、空になって返ってきたわ。てっきり、そのまま手を付けずに返ってくると思ったんだけどね。あ~ドアを開けた時、何か囁いてたよね。うん、怖い。さすが、あの大神官長様の部下だわ。

「軟禁されてる元付き人たち、終わりましたね」

 温かいスープを飲みながら、ポツリと呟く。

「完全に詰んだな」

 イシリス様もボソッと答えた。

「聖国に戻ったら、確実に降格。いや、降格で済めばいいですけど、最悪、聖国を追い出されて巡礼の旅に出されますね」

 元付き人たちの未来が目に浮かぶわ。

「だろうな」

 聖職者にとって、巡礼の旅はとても大事なお勤めよ。無事巡礼を終えて帰って来た者には、それなりの地位が与えられるって聞いたわ。

 でもね、考えてみて。

 準備をキチンとしてからの出発でも、安全とは言えない過酷な旅よ。果たして、元付き人たちの準備はどこまでしてくれるのか。それによって大きく変わるからね……特に生存確率が。

 

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