言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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聖国の大神官長様がやって来た

10 とんでもない置き土産

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 今日は朝から晴天。

 雨季に入ったこの時期にしては珍しく天気が良いわね。

 これも、日頃の行いが良いからかな……どっちの?

「ありがとうございました、大神官長様」

 大神官長様一行が聖国に帰る日、お父様やラリーお兄様がお礼を述べた後、私も続けた。

「寂しいですね。もう、名前を呼んではくれないのですか? ミネリア様」

 その顔でそんな寂しげな表情しないでよ。完全に私が悪者じゃない。マリアなんて足元にも及ばないわ。

 ほんと面倒くさ。大神官長様ってこういうところあるのよね。反応を楽しむってやつ。される方はたまったもんじゃないけどね。

 あれ? 

 背後にいる付き人たちの表情が変わらないわね。臨戦模様でもないし。どうしたの? かえって気味が悪いわ。なんか、身構えてしまう。

 当の本人は、私が身構えているのがわかってても平然としているから、なおのことたち悪いわね。まぁ、らしいっていったら、らしいけど。

「これでも、場はわきまえていますわ」

 無難な台詞でさらりと躱す。深くは考えない。藪から蛇を出したくないからね。

 すると、あろうことか、突然大神官長様は私に膝を付いた。付き人たちも後に続く。

 えっ!?

 あまりの出来事に思考が止まったわよ。でも、体は反応するのよね。反射的に膝を付こうとしたんだけど、イシリス様に止められた。

「場を弁えなければならないのは、私たちの方です。聖獣様の番であられるミネリア王女殿下に、聖国は忠誠を誓います」

 ……はい?

 忠誠……聖国が………?

「ちょっとお待ちください!! 大神官長様!!」

 超焦るわ。話の展開に付いていけないよ!! だって、この大陸で二番目に偉い人に頭下げられたのよ!! 膝まで付かれたのよ!!

 お父様とラリーお兄様は呆気にとられて言葉失ってるし、ジュリアは溜め息を吐いてるし、リアスはやけにキラキラした目で私を見詰めている。

 腰に回されたイシリス様の腕に力が入った。

「イシリス様!?」

「ミネリアは聖獣である俺の唯一の番。ユーリの態度は至極当然だ。今まで、そうでなかった方がおかしい」

 いやいや、そうかもしれないけど……偉いのはイシリス様であって、私じゃないし。私が何か偉業を成し遂げたわけでもないし。

「はい、その通りでございます。ミネリア王女殿下、今までのご無礼お許しください」

 大神官長様がそう言いながら頭を下げると、付き人たちも謝罪の言葉を述べてから、同じように頭を下げた。

 居た堪れないって、こういうことを言うのね。マジ、この場から逃げ出したいわ。

「どうするんだ? 許すのか? 許さないのか?」

 イシリス様が訊いてきた。

 どうやら、私が行動しないと先に進まないみたい。も~~わかったわよ。

「許します!! 許しますから、立ち上がってください」

 それ一択しかないよね。

「ありがとうございます、ミネリア王女殿下。これからは、私のことはユーリと名前でお呼びください」

 は~い、名前呼び決定。大陸で二番目に偉い人を。

 大神官長様は立ちあがると、とても良い笑顔でそう告げる。少し冷静になると、何か違和感を感じた。

 ん? もしかして、イシリス様と打ち合わせでもしたのかな? 

 ふと、そんな考えが頭を過る。

「ユーリ、大義であった。これからも、頼むぞ」

 イシリス様が強引に終わらせようとしている。

 もしかして、本当にそうだったの!? 

 さすがに口には出さないわよ。空気が読めない私でも、これぐらいはわかるわ。

「はい。ミネリア様、これをどうぞ。通信用の魔法具です」

 そう言って渡されたのは、最新の魔法具だった。

 これ一個で国の予算が軽く飛ぶやつよね……

 さすがに、受け取る手が震えるわ。もしも壊したらって考えると、胃がズキッと痛みだす。できれば受け取りたくない。

「博識ですね、ミネリア王女殿下。予備はありますので、壊れても構いません。ご安心を」

 いやいや、安心できないわよ!!

 半ば強引に魔法具を渡してから、大神官長様一行は帰って行った。数人の付き人を残して。

 彼らは王都の教会に居を移した。

 とんでもない置き土産を残してね。


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