67 / 78
聖国の大神官長様がやって来た
10 とんでもない置き土産
しおりを挟む今日は朝から晴天。
雨季に入ったこの時期にしては珍しく天気が良いわね。
これも、日頃の行いが良いからかな……どっちの?
「ありがとうございました、大神官長様」
大神官長様一行が聖国に帰る日、お父様やラリーお兄様がお礼を述べた後、私も続けた。
「寂しいですね。もう、名前を呼んではくれないのですか? ミネリア様」
その顔でそんな寂しげな表情しないでよ。完全に私が悪者じゃない。マリアなんて足元にも及ばないわ。
ほんと面倒くさ。大神官長様ってこういうところあるのよね。反応を楽しむってやつ。される方はたまったもんじゃないけどね。
あれ?
背後にいる付き人たちの表情が変わらないわね。臨戦模様でもないし。どうしたの? かえって気味が悪いわ。なんか、身構えてしまう。
当の本人は、私が身構えているのがわかってても平然としているから、なおのこと質悪いわね。まぁ、らしいっていったら、らしいけど。
「これでも、場は弁えていますわ」
無難な台詞でさらりと躱す。深くは考えない。藪から蛇を出したくないからね。
すると、あろうことか、突然大神官長様は私に膝を付いた。付き人たちも後に続く。
えっ!?
あまりの出来事に思考が止まったわよ。でも、体は反応するのよね。反射的に膝を付こうとしたんだけど、イシリス様に止められた。
「場を弁えなければならないのは、私たちの方です。聖獣様の番であられるミネリア王女殿下に、聖国は忠誠を誓います」
……はい?
忠誠……聖国が………?
「ちょっとお待ちください!! 大神官長様!!」
超焦るわ。話の展開に付いていけないよ!! だって、この大陸で二番目に偉い人に頭下げられたのよ!! 膝まで付かれたのよ!!
お父様とラリーお兄様は呆気にとられて言葉失ってるし、ジュリアは溜め息を吐いてるし、リアスはやけにキラキラした目で私を見詰めている。
腰に回されたイシリス様の腕に力が入った。
「イシリス様!?」
「ミネリアは聖獣である俺の唯一の番。ユーリの態度は至極当然だ。今まで、そうでなかった方がおかしい」
いやいや、そうかもしれないけど……偉いのはイシリス様であって、私じゃないし。私が何か偉業を成し遂げたわけでもないし。
「はい、その通りでございます。ミネリア王女殿下、今までのご無礼お許しください」
大神官長様がそう言いながら頭を下げると、付き人たちも謝罪の言葉を述べてから、同じように頭を下げた。
居た堪れないって、こういうことを言うのね。マジ、この場から逃げ出したいわ。
「どうするんだ? 許すのか? 許さないのか?」
イシリス様が訊いてきた。
どうやら、私が行動しないと先に進まないみたい。も~~わかったわよ。
「許します!! 許しますから、立ち上がってください」
それ一択しかないよね。
「ありがとうございます、ミネリア王女殿下。これからは、私のことはユーリと名前でお呼びください」
は~い、名前呼び決定。大陸で二番目に偉い人を。
大神官長様は立ちあがると、とても良い笑顔でそう告げる。少し冷静になると、何か違和感を感じた。
ん? もしかして、イシリス様と打ち合わせでもしたのかな?
ふと、そんな考えが頭を過る。
「ユーリ、大義であった。これからも、頼むぞ」
イシリス様が強引に終わらせようとしている。
もしかして、本当にそうだったの!?
さすがに口には出さないわよ。空気が読めない私でも、これぐらいはわかるわ。
「はい。ミネリア様、これをどうぞ。通信用の魔法具です」
そう言って渡されたのは、最新の魔法具だった。
これ一個で国の予算が軽く飛ぶやつよね……
さすがに、受け取る手が震えるわ。もしも壊したらって考えると、胃がズキッと痛みだす。できれば受け取りたくない。
「博識ですね、ミネリア王女殿下。予備はありますので、壊れても構いません。ご安心を」
いやいや、安心できないわよ!!
半ば強引に魔法具を渡してから、大神官長様一行は帰って行った。数人の付き人を残して。
彼らは王都の教会に居を移した。
とんでもない置き土産を残してね。
121
あなたにおすすめの小説
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる