言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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聖国の大神官長様、今度は遊びに来る

08 番

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 ユーリ様は、あれからかもちょくちょく遊びに来ては、魔獣料理をたくさん食べて帰って行く。色々愚痴ってね。

 そのほとんどが、エンドキサン王国の王太子殿下との婚約解消の件なんだよね。一応、婚約は解消したみたいなんだけど、王太子様が諦めきれずに宣言したんだって。

 ユーリ様に認められる男になる。そして、再度、ユーリ様にプロポーズするってね。

 その話を聞いたとき、正直、キモって思ったわ。だって、一回断られているのに、諦めきれないから自分を磨いて再チャレンジって……ないわ。大人しく引き下がれって話だよね。

 それに、毎日、王太子殿下から手紙が届くんだって。う~さむいぼが。婚約していた時は、週に一度くらいだったらしいけど。

 毎日送られてくる手紙に、さすがのユーリ様もゲンナリしていて、今は読まずに焼き捨ててるそうよ。一回、開封しないで手紙をそのまま送り返したら、三倍の厚さの手紙が届いたらしい。マジか……まぁでも、王太子殿下が突撃してこないだけマシかな。エンドキサン王国も今は大変な様子だし、来たくても、なかなか国をあけることはできないよね。一応、王太子殿下だし。

 という感じに、新しくできた友だちがいきなり突撃してくるけど、それを除いたら、私の周りは至って平和かな。

 だから、なおさら色々考えるの。

 私はイシリス様を愛してる。

 始めは戸惑いもあったけど、イシリス様の番になれて、今はとても幸せよ。

 幸せだけど……聖獣様の番になるって意味を、私は深く考えていなかった。考えていた振りをしていたの。

「……眠れないのか?」

 ベッドの上で膝を抱えていると、獣姿のイシリス様が心配そうな声音で話し掛けてきた。

 私の寝室で一緒に夜を過ごすことはあっても、イシリス様は絶対、人に変異して同じベッドで寝ることはなかった。大事にされてるって、心からそう思う。

「はい……ちょっと、考えごとをしていて」

 素直にそう答えると、イシリス様がペロリと私の頬を舐めた。

「ミネリア、あまり難しく考えなくていい。俺が傍にいる。ミネリアが間違いそうになったら、俺が止める。反対に、俺が間違いそうになったら、ミネリアが止めてくれ。俺たちは番なんだから」

 本当に、イシリス様は優しい。言葉の端々に温かみを感じる。

 まだ、答えはでない。たぶんこれから先も、明確な答えなんてでないと思う。だから、ずっと悩み続けるんでしょうね。

 それでいいと、イシリス様が気付かせてくれた。

「……そうですね。私は一人じゃない。私の隣にはイシリス様がいますから」

 それに、大切な家族に、ちょっと変わった友だちもいる。頼れる人たちがいるから大丈夫。

「俺の番になってくれて、ありがとう、ミネリア」

「私の方こそ、番にしてくれてありがとうございます、イシリス様」

 そう答えると、イシリス様が前足で顔を隠し唸りだす。

 えっ、変なこと言った? あっでも、可愛い。

「そんな可愛い顔で笑いかけるな」

 そう言われても困る。

「普通ですが……」

「首を傾げるな。あ~~あと、一年もあるのか……」

 一年後に、イシリス様と結婚式をあげることになってるの。私の十八歳の誕生日にね。

「一年なんて、すぐに過ぎますよ」

「そうだな。番になるまでも、かなり待ったんだ、後一年くらい我慢する」

「はい、イシリス様」

 にっこりと微笑みながら、私は答えた。

 ーー私も我慢してるんですからね。

 絶対、口にはしないけど。まぁそれでも、イシリス様には伝わってるんだけどね。






☆☆☆

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 私事ですが、〈第六回 ライト文芸大賞〉に参加しています。

 タイトルは【俺は妹が見ていた世界を見ることはできない】です。完結済み作品です。

 拙い文章ですが、少しでも読んでいただけると、とてもとても嬉しいです。

 これからも、頑張って書いていくので、応援宜しくお願い致します。


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