言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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最終章

03 幸せな未来

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 何百年も一緒に生きていきたいーー。

 嘘偽りのない想い。

 私の切なる願い。

 私はそう告げた後、イシリス様の腕をギュッと掴み歩き出す。

 一歩、一歩、湖に近付くために。

「イシリス様、ここで大丈夫ですか?」

 私はイシリス様の腕から手を放すと尋ねた。

「……ああ、構わない」

「では、始めましょう」

 私は微笑むと、その場に膝を付く。そして、自分の両手を握り締め祈りの体勢をとった。

 若干、惚けていたイシリス様も、同じように私の隣に膝を付き、祈りの体勢をとる。

 私は強く願う。

 愛する人と一緒に生きていけますようにと。

 不器用で優しいこの人の隣で、笑ったり、感動したり、苦しんだり、一緒に悩んだりしたい。同じ景色を一緒に見続けていきたいの。

 出会った時は、イシリス様の番になるなんて思いもしなかった。畏れおおくてね。私のような平凡が傍に立つことなど、とんでもないことだって思ってた。

 そんな私を、イシリス様は無理強いすることなく、優しくて、とても温かい愛情のある目で見守ってくれた。

 そして、いつしか、イシリス様の隣にいたいと願うようになったの。聖獣様だからじゃない。イシリス様の隣にね。

 だから、勉学にいっそう力を入れた。特に薬学と植物学をね。

 容姿に自信がないから。

 どんなに頑張っても、顔の造形は変わらないし、化粧品にお金はかけられない。限度もあるしね。それに、イシリス様は化粧品の匂いが苦手だから無理。

 なので、容姿以外に、私が誰にも負けない魅力を手に入れたかった。

 私の隣に立つイシリス様が嘲笑われないために。

 イシリス様は素晴らしい方ですもの。だから、私の勉学と研究は終わることはないわね。

 祈りの最中なのに、口元が緩みそうになっちゃった。

 創世神様、お願いします。

 イシリス様と一緒に生きる時間が永遠に続きますように。

 それだけを願い続けた。何度も、何度も。

 どれぐらい祈り続けただろう。不意に、全身が温かいものに包み込まれた感じがした。寒い日に掛けられたブランケットのような感じ。

『我々は、ミネリア・ベルケイドを正式な番として認めよう』

 耳からではなく、頭に直接響いた重層な声。

 まさか……創世神様の声……

 手の甲にある紋章が熱くなった。

 ……もしかして、成功したの?

「ミネリア!!」

 反応できない私を、イシリス様は抱き寄せ抱き締めてくれた。なかなか強い力で。

「せ、成功したのですね……」

「そうだ!!」

 イシリス様の嬉しそうな声。顔は見えないけど、絶対、満面な笑顔に違いないわ。私もとてもとても嬉しいけど……そろそろヤバいかも。

「……く、苦しい…………落ちる……」

 息も絶え絶えでそう告げると、イシリス様は慌てて拘束を解いてくれた。

「ご、ごめん!! 嬉しくてつい」

 青褪めた顔で私を見下ろすイシリス様。

 ほんと……最後の最後で、ボケるなんて、イシリス様らしいっていえば、らしいわね。ううん、違うわ。私たちらしいのね……

 思わず、口元が緩む。

「……帰りましょう、我が家に」

「ああ、帰ろう」

 イシリス様は私を宝物のように優しく抱き上げ、優しいキスをしてくれた。

 私が覚えてるのはここまで。

 たぶん、失敗した過去の番たちは、おそらく、祈りの途中で、家族や友だちの顔を思い出したんだと思う。

 そして、躊躇してしまった。

 そのことが悪いとは思わない。

 彼女たちを責めるつもりもない。そのせいで、イシリス様が傷付いたとしてもね。

 だって、人は選択して生きて行く生き物だから。

 彼女たちは選択しただけ。ただそれだけ。

 私も選択した。

 人の枠から外れても、愛しい人と共に歩き続ける道をね。

 私の人生は私自身が決める。

 その先にある幸せを信じてーー。

 まぁ、なにかと騒がしいとは思うけどね。それもいいかな、楽しそうで。


 

 後に、私とイシリス様の間に子供ができたり、ユーリ様とエンドキサン王国の王太子殿下とのいざこざに巻き込まれたり、色々騒がしくなるのは、また別のお話。

 
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みんなの感想(78件)

はちわれ
2023.06.15 はちわれ
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田中角栄
2023.03.21 田中角栄
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ちゃっぴ〜
2023.03.18 ちゃっぴ〜
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