【完結】貴方の愛は信じても良いのでしょうか?【大正恋愛奇譚】

白井ライス

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残り香

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御屋敷に着く頃にはすっかり日が暮れていました。
何せ吉田さんが御屋敷まで送ると言い張るものですから断るのに苦労しました。
でも結局は押し切られてしまい、御屋敷まで送ってもらいました。
私の予定ではデェトを夕方までに終わらせてその後銭湯に行こうと思っていたのですがそれは叶いませんでした。
もう暫く風呂に入っていません。
私の次の休みまであと5日先です。
そうなると大分、風呂を我慢しなければいけません。
そして、気になっていたのですが吉田さんの香水の匂いが強くそれが移り香していました。
こうなると他の女中達に何やかんや詮索されるのが嫌でした。
そんなことを考えながら御屋敷の扉を開けるとそこには先生が立っていたのです。
暗がりの中だったのでまるで亡霊のように見えました。

「先生……!」

すると不機嫌そうな声で先生が言いました。

「さきちゃん随分遅かったね」

「申し訳御座いません」

私は深々と謝罪しました。

「もしかして吉田さんとお楽しみだったのかな」

在らぬ疑いをかけられて私は急いで訂正しました。

「そんなことしていません!」

すると先生が私の後ろに回って来ました。そして、先生が言います

「さきちゃん何か匂うよ」

先生が首元をクンクンと嗅ぎます。私は風呂に入っていなかったので臭いのかと思いました。

「申し訳御座いません」

少しの間があった後、先生が言いました。

「吉田さんの匂いだ」

私は焦りました。そして、隠そうとするあまり失言をしてしまいます。

「吉田さんの香水がキツくて匂いが移ってしまいました。決して抱き締められたわけではありません!」

「ふうん。そうか」

「そうです。決して何かあった訳ではーー」

「抱き締められたんだ。あいつに」

先生には見抜かれてしまいました。

「えっと……」

私は言葉に詰まりました。これでは肯定しているのと同じです。
すると鋭い言葉を先生から浴びせかけられました。

「さきちゃんって軽い女なんだね」

「えっ……」

「僕とは接吻をするし、吉田さんには抱かれるし。そうゆう風に男を誑かすんだね」

「いえ、そんなことは……」

「そんなことあるじゃない」

「えっと……」

「じゃあ、さきちゃんは吉田さんが好きなのかい?」

「その……」

私にもよく分かりませんでした。
吉田さんは良い人だと思いますし、ちゃんとした職業にも就いていらしてる方です。
ですが、何故だか触れられることに関しては嫌悪感がありました。
一線を引きたくなるのです。

「ほら答えられない」

「……」

先生の言う通りでした。

「じゃあさ、僕とも出来るよね」

「何を……」

出来るんですか、と聞こうとした時、先生が被せるように言います。

「吉田さんがさきちゃんにしたくて堪らないことさ」

先生のやろうとしていることが分かりました。

「ちょっと待って下さい。先生。私はそういうことは」

「僕の部屋に行こう」

「待って下さい」

すると痺れを切らした先生が再度聞きます。

「じゃあ、さきちゃんは吉田さんが好きなんだね?」

私は反射的に答えます。

「ちっ違います」

「それなら何の問題もないね。じゃあ行こう」

先生に腕をがっちりと掴まれました。これでは逃げれません。
私は先生の自室に連れて行かれました。
途中でキヌさんに会い、まるでこの世の終わりといった顔で私を見ていました。


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