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敵の敵は見方
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敵の敵は味方という言葉があるようにキヌさんと梅さんは結託したようです。
二人は先生の部屋にずかずかと入ってきて、夜食を置いてきました。
「据え膳食わぬは男の恥ですよね。先生?」
梅さんが言います。
先生は頭を掻きました。
「まぁそうだけど意味が違うんじゃない?」
「いいえ、そのままの意味です」
キヌさんも言います。
私は二人が邪魔をしに来たのだと分かり、服を着始めました。
「ああっさきちゃんまで」
先生は名残惜しそうです。
私はこれから二人に折檻なり何なりされるのだと思います。仕方がありません。
でも、此処で二人を叱ったり、追い出せない辺りが先生の狡いところでもあります。
「ほら、あんたも出ていくよ!」
キヌさんが服を着た私を引っ張ります。
「はい。失礼いたしました」
「さきちゃん~」
先生は最後まで未練がましく私の名前を呼びました。
ーーー
女中の部屋に着くと、まずは梅さんに左頬を平手打ちされました。次はキヌさんに右頬を打たれました。パンッパンッと立て続けに威勢の良い音が響きます。
「あんたさぁ~何やってるか自分で分かってんの?!」
キヌさんが責めてきます。
「今日、吉田さんと活動写真見に行ったんだろう?何で先生の床に入ってるんだよ」
「そうだよ。ふざけんなって話よ」
梅さんも憤慨しています。
「も、申し訳御座いませんでした」
私が謝っても二人の怒りは収まりません。
ツネさんとイネさんもこの場に居るのですが、触らぬ神に祟りなしという言葉の通り、気まずそうにただ黙っています。
「あんたさぁ、言葉遣いだけは綺麗だけど本性は真っ黒だね」
キヌさんが言います。
「そうだ。そうだ」
梅さんも援護するかのように言います。
「ちょっと可愛いからって二股掛けて恥ずかしくないのかい!」
キヌさんが声を張り上げます。
私は泣くのを必死で堪えました。泣けば泣いたで二人は責め立ててくるでしょう。
しかし、じんわり涙が込み上げてきました。
「おあいにく様、此処では泣いても誰も助けてくれないんだよ。」
「そうだよ。諦めるこった」
私は命乞いするかのように言います。
「もっもう先生とは寝ません。吉田さんとはもう出掛けません。だからどうか許して下さい」
「信用ならないねぇ」
「そうだ。そうだ」
「でも、そんなに言うなら」
するとキヌさんが何か思い付いたようでニヤリとしました。
「それじゃあ、念書を書いてもらおうか」
「どっどんな念書ですか?」
「先生と寝たり、吉田さんと出掛けたりしたら罰金二千圓だよっ!」
「二千圓……!」
その金額の高さに私は驚きました。
「じゃあ、そうと決まれば念書を書いてもらうよ」
キヌさんがそう言うと梅さんが自分の持ち物から紙とペンとインクを持ってきました。
キヌさんがサラサラと文字を書いていきます。
当然私は読めないので何と書いているのか分かりませんでした。
そうこうしている内にキヌさんが書き終え、念書を私に差し出してきました。
「ほら、此処に名前を書くんだよ!下には拇印も押しな!」
指を指された所に私はミミズが這ったような汚い字で自分の名前を書きました。
そして、親指に朱肉をつけて拇印を押しました。
「これであんたは先生と吉田さんには指一本触れられることが許されないからね!分かったかい!」
「はい。承知しました」
私は深々と頭を下げ、この場は収まりました。
二人は先生の部屋にずかずかと入ってきて、夜食を置いてきました。
「据え膳食わぬは男の恥ですよね。先生?」
梅さんが言います。
先生は頭を掻きました。
「まぁそうだけど意味が違うんじゃない?」
「いいえ、そのままの意味です」
キヌさんも言います。
私は二人が邪魔をしに来たのだと分かり、服を着始めました。
「ああっさきちゃんまで」
先生は名残惜しそうです。
私はこれから二人に折檻なり何なりされるのだと思います。仕方がありません。
でも、此処で二人を叱ったり、追い出せない辺りが先生の狡いところでもあります。
「ほら、あんたも出ていくよ!」
キヌさんが服を着た私を引っ張ります。
「はい。失礼いたしました」
「さきちゃん~」
先生は最後まで未練がましく私の名前を呼びました。
ーーー
女中の部屋に着くと、まずは梅さんに左頬を平手打ちされました。次はキヌさんに右頬を打たれました。パンッパンッと立て続けに威勢の良い音が響きます。
「あんたさぁ~何やってるか自分で分かってんの?!」
キヌさんが責めてきます。
「今日、吉田さんと活動写真見に行ったんだろう?何で先生の床に入ってるんだよ」
「そうだよ。ふざけんなって話よ」
梅さんも憤慨しています。
「も、申し訳御座いませんでした」
私が謝っても二人の怒りは収まりません。
ツネさんとイネさんもこの場に居るのですが、触らぬ神に祟りなしという言葉の通り、気まずそうにただ黙っています。
「あんたさぁ、言葉遣いだけは綺麗だけど本性は真っ黒だね」
キヌさんが言います。
「そうだ。そうだ」
梅さんも援護するかのように言います。
「ちょっと可愛いからって二股掛けて恥ずかしくないのかい!」
キヌさんが声を張り上げます。
私は泣くのを必死で堪えました。泣けば泣いたで二人は責め立ててくるでしょう。
しかし、じんわり涙が込み上げてきました。
「おあいにく様、此処では泣いても誰も助けてくれないんだよ。」
「そうだよ。諦めるこった」
私は命乞いするかのように言います。
「もっもう先生とは寝ません。吉田さんとはもう出掛けません。だからどうか許して下さい」
「信用ならないねぇ」
「そうだ。そうだ」
「でも、そんなに言うなら」
するとキヌさんが何か思い付いたようでニヤリとしました。
「それじゃあ、念書を書いてもらおうか」
「どっどんな念書ですか?」
「先生と寝たり、吉田さんと出掛けたりしたら罰金二千圓だよっ!」
「二千圓……!」
その金額の高さに私は驚きました。
「じゃあ、そうと決まれば念書を書いてもらうよ」
キヌさんがそう言うと梅さんが自分の持ち物から紙とペンとインクを持ってきました。
キヌさんがサラサラと文字を書いていきます。
当然私は読めないので何と書いているのか分かりませんでした。
そうこうしている内にキヌさんが書き終え、念書を私に差し出してきました。
「ほら、此処に名前を書くんだよ!下には拇印も押しな!」
指を指された所に私はミミズが這ったような汚い字で自分の名前を書きました。
そして、親指に朱肉をつけて拇印を押しました。
「これであんたは先生と吉田さんには指一本触れられることが許されないからね!分かったかい!」
「はい。承知しました」
私は深々と頭を下げ、この場は収まりました。
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