【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス

文字の大きさ
6 / 10

決闘

しおりを挟む
 4月3日の夕刻、モターリ川の河川敷にアイリーンの姿があった。

 時は16時半過ぎ、もうそろそろショーンが来てもおかしくない時間になっていた。

 アイリーンは武者震いをしていた。

 ショーンを倒せば、明日の戦地へと向かうことが出来る。

 そう思うと居ても立っても居られなかった。

 あの岩をも粉砕する秘技ナデシコを習得してきたのである。

 ショーンがアイリーンの間合いに入ってきたら直ぐに仕掛けられるよう体勢を整えていた。

 しばらく待っているとショーンらしき影が見えてきた。

 こちらに向かって手を振っている。

 間違い無いショーンだ。

 アイリーンは直ぐに臨戦態勢を取った。
 体にオーラを纏わせていく。

 するとショーンも何か感じ取ったのか一定の距離で立ち止まってしまった。

 そして遠くから言われる。

「アイリーン、今日は俺の話を聞いてくれ~」

 アイリーンはショーンの言葉を無視した。
 そして、距離感を確かめる。
 秘技ナデシコはこちらの間合いに入って貰わないと発動出来ない。

 アイリーンは慎重にショーンとの間合いを詰めていく。
 しかしショーンも同じように距離を取っていく。

「アイリーン、オーラを仕舞ってくれ。今日は戦いに来たんじゃないんだ」

 ショーンはそのつもりでもアイリーンは違う。
 今日こそショーンに勝って戦地に自分が向かうんだ、そう思っていた。

 アイリーンは間合いを詰める。
 しかしショーンが距離を取っていく。

 堂々巡りして、これでは埒が明かない。

 アイリーンは一気にショーンの元へと走り込んだ。

 するとショーンも後ろ向きに走り出した。

「今日はお前と戦う気はない」

 ショーンが逃げながら言う。

「戦う気がないなら何故怪文書を送ってきた」

 アイリーンが追いかけながら言う。

「そうでもないと今居る部隊では面倒事になってしまうんだ」

「黒炎の龍での話か」

「そうだ」

「それならば死の4番隊隊長になったって言うのは本当か?」

「ああ、そうだ」

「黒炎の龍では実力次第で上に上がれるって話は本当なんだな?」

「ああ、その話も合っている。前任は俺が倒した」

「なるほどな」

 徐々に2人のスピードは上がっていく。

「それならば、今日、私がショーンを倒せば4番隊隊長ということだな?」

 バキッバキッとアイリーンが腕を鳴らす。

「それが出来れば、の話だが」

 ショーンも何か意味ありげに逃げながら言う。

「今日は絶対にショーンを倒す」

「果たして出来るかな、それは」

 河川敷も永遠に続いている訳ではない。
 おいかけっこをしている内にアイリーンはとうとうショーンを河岸まで追い詰めた。

「とうとうここまで来たな」

 アイリーンはにじり寄る。

 ショーンは両手を挙げた。

「アイリーンもう一度聞いてくれ。今日は戦いに来たんじゃないんだ」

 しかしアイリーンは聞く耳を持たない。

「ショーンにそのつもりがなくとも私は戦いに来た。あの日の雪辱を果たしに!」

 アイリーンはオーラを一気に身体中に纏わせた。
 それにつられてか河川敷の小石も空間に浮かび出した。

 そして、忌々しげに言う。

「あの日、ショーンは私を助けたつもりかもしれないが、あの戦いのせいで私は騎士としての資格を失った」

「面接会場でのことか。あの日、お前は……」

「黙れ!ショーンの言い訳など聞きたくもない」

「ちょっと待ってくれ。俺の話を……」

 アイリーンはショーンの話も聞かず空高く舞い上がった。
 河川敷に突風が吹き荒れる。

「食らえ!秘技ナデシコ!」

 ショーンの体目掛けて技を繰り出す。

 アイリーンは宙に舞いながら完全にその姿を捕らえた!

「一の儀、春!」

 ショーンが突風に包まれる。

「ぐわぁぁ」

 ショーンが叫び声を出す。
 効いているようだ。

 直ぐにアイリーンは体勢を変える。
 そして、再びショーンへと技を繰り出す。

「二の儀、夏」

 またもショーンが突風に包まれる。

「ぐはっ!」

 ショーンは血まで吐いている。
 効いているようだ。

 直ぐにアイリーンはまた体勢を変える。
 そして、三度ショーンへと技を繰り出す。

「三の儀、秋」

 またもショーンが突風に包まれる。

「ぐはっはぁ~」

 ショーンは大量の血を吐き出した。
 効いているようだ。

 直ぐにアイリーンはまた体勢を変える。
 そして、最後の技をショーンへと繰り出す。

「四の儀、冬」

 またもショーンが突風に包まれる。

「ぐわっぐわっぐわっああっああ~」

 ショーンが大量の血を吐き、倒れた。

 最後まで無抵抗な呆気ない戦いだった。

 アイリーンは静かにショーンに両手を合わせた。

「御免」

 そして、アイリーンがオーラを仕舞うと襲ってきたのかとてつもない倦怠感だった。

 先生が言った通り、秘技ナデシコは諸刃の剣だった。

 アイリーンは立っているのがやっとという状況になった。

 しかし、アイリーンは心の中では歓喜していた。

 あの有名な黒炎の龍の4番隊隊長に勝った。

 これで自分が明日戦地へ向かえると。

 そして、ショーンの死体に背を向けた瞬間。

 ゾゾゾゾゾゾ

 今までに感じたことの無い気味の悪さを味わった。

「ななな……何これ」

 体が石のように動かない。
 まるで固定されているかのようだ。

 そして、直ぐ背後から声がした。

「お前も少しは強くなったな」

「ショーン、貴様」

 生きていたのか、と言おうとした瞬間、頸動脈に強い圧迫を感じた。
ショーンがアイリーンの首を絞めているのだ。

息が出来ない。

「さっきのは俺も痛かったぜ。体術も捨てたもんじゃねーな」

苦しい。

「このじゃじゃ馬女め、人の話は最後まで聞け。
アイリーン今日呼び出したのは俺との……」

ショーンがしゃべっている途中で、アイリーンは意識を手放してしまった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました

ラム猫
恋愛
 セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。  ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。 ※全部で四話になります。

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

処理中です...