4 / 13
⑴
私は秘書?
しおりを挟む
その後、持ち場に戻って、最後の仕事を終わらせて、支社長室へ。
上篠さんは待ってたように、
「じゃあ、行こうか」
と言った。
うちの社の駐車場は、ビルの裏手にある。エレベーターに乗り、
「丹代はあまり変わらないな」
「子供っぽいって事ですか?」
「いい意味若いってことだよ」
「いい意味ね」
「俺は?」
「え?そうですねぇ・・・」
見つめていると恥ずかしくなって、顔を逸らした。
6階で他の人も乗ってきたので、話は中断した。
車まで行き、鍵を開けてから、
「運転、お願いします」
「おぉ」
私は助手席に座った。
上篠さんは難なく運転し、やっぱ、この方が安心だ。
「いつから?車」
「上篠さんが転勤した後、7月にボーナスで車買って、それからですね」
「なるほどな。免許は持ってるって言ってたもんな」
「うん」
「俺がいた頃は、俺が送り迎えしてたから、いらなかったわけだ」
そうゆう言い方しなくても。確かに、仲良くなってからは、ほぼ一緒で。仕事以外でも。
上篠さんが向こうに出かけていく日以外は。
「なんかさ、あれだな。ブランクのせい?ちょっと緊張するな」
「上篠さんでも?」
「何だよ、その言い方。俺だって緊張くらいするよ」
「そっか」
「琳の部屋は、前と一緒?」
あ、今、琳って呼んだ。これは仕事モードではない。
「ううん。引っ越したよ、2年前に」
「そっか。行ってもいい?」
「え?」
「今日じゃなくて、その内な」
「あ、うん」
会社から30分程でホテルに着いた。
「会社からちょっと距離あるけど、駅から近いからさ」
確か、特急が停まる駅が近くにある。
車を路肩に停め、
「ありがとな」
「明日の朝は?」
「あぁそうだな。来てくれる?」
「はい」
「8時な。その前にロビーで待ってるから」
「はい」
車を降りて、席を変わった。
すぐに走り出し、思った。
上篠さんは変わっていない。あのころと変わらない接し方だ。
緊張すると言ったけど。
優しくて、強引で、そこが何だか心地よくて、惹かれて行ったのだ。
でも、もう、前のようにはいかない。
前だって、私は本命ではなかった。
それでも、まだ結婚はしていなかった。
今は違う。
上篠さんは待ってたように、
「じゃあ、行こうか」
と言った。
うちの社の駐車場は、ビルの裏手にある。エレベーターに乗り、
「丹代はあまり変わらないな」
「子供っぽいって事ですか?」
「いい意味若いってことだよ」
「いい意味ね」
「俺は?」
「え?そうですねぇ・・・」
見つめていると恥ずかしくなって、顔を逸らした。
6階で他の人も乗ってきたので、話は中断した。
車まで行き、鍵を開けてから、
「運転、お願いします」
「おぉ」
私は助手席に座った。
上篠さんは難なく運転し、やっぱ、この方が安心だ。
「いつから?車」
「上篠さんが転勤した後、7月にボーナスで車買って、それからですね」
「なるほどな。免許は持ってるって言ってたもんな」
「うん」
「俺がいた頃は、俺が送り迎えしてたから、いらなかったわけだ」
そうゆう言い方しなくても。確かに、仲良くなってからは、ほぼ一緒で。仕事以外でも。
上篠さんが向こうに出かけていく日以外は。
「なんかさ、あれだな。ブランクのせい?ちょっと緊張するな」
「上篠さんでも?」
「何だよ、その言い方。俺だって緊張くらいするよ」
「そっか」
「琳の部屋は、前と一緒?」
あ、今、琳って呼んだ。これは仕事モードではない。
「ううん。引っ越したよ、2年前に」
「そっか。行ってもいい?」
「え?」
「今日じゃなくて、その内な」
「あ、うん」
会社から30分程でホテルに着いた。
「会社からちょっと距離あるけど、駅から近いからさ」
確か、特急が停まる駅が近くにある。
車を路肩に停め、
「ありがとな」
「明日の朝は?」
「あぁそうだな。来てくれる?」
「はい」
「8時な。その前にロビーで待ってるから」
「はい」
車を降りて、席を変わった。
すぐに走り出し、思った。
上篠さんは変わっていない。あのころと変わらない接し方だ。
緊張すると言ったけど。
優しくて、強引で、そこが何だか心地よくて、惹かれて行ったのだ。
でも、もう、前のようにはいかない。
前だって、私は本命ではなかった。
それでも、まだ結婚はしていなかった。
今は違う。
0
あなたにおすすめの小説
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
五年越しの再会と、揺れる恋心
柴田はつみ
恋愛
春山千尋24歳は五年前に広瀬洋介27歳に振られたと思い込み洋介から離れた。
千尋は今大手の商事会社に副社長の秘書として働いている。
ある日振られたと思い込んでいる千尋の前に洋介が社長として現れた。
だが千尋には今中田和也26歳と付き合っている。
千尋の気持ちは?
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
私と彼の恋愛攻防戦
真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。
「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。
でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。
だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。
彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。
離れて後悔するのは、あなたの方
翠月るるな
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。
岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。
財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。
だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。
結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。
しかしそれは、一つの計画の為だった。
そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる