白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚

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第2章:夫の愛人と親友になりましたわ

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王太子アルベルトとの“白い結婚”が正式に決まってから、わたくしルチアーナ・ヴェルディは、結婚式までの日々をそれなりに忙しく過ごしていた。とはいえ、ただドレスを選んだり、両親やメイドたちにそれなりの体裁を取り繕ったりしていただけであり、わたくしが自ら積極的に何か大きな行動を起こしたわけではない。

 実のところ、形式上の婚礼とはいえ、国を挙げての王太子殿下の結婚式だ。王宮でも貴族社会でも、皆が盛り上がり、慌ただしく準備を進めるのは当然だろう。ドレスの試着だけでも数多くの仕立て屋が出入りし、宝飾品を扱う職人や香料専門の商人までが公爵家を訪れる。これほどまでの豪華絢爛な準備に対し、わたくし自身の興味は薄い。むしろ、あまりにも華々しすぎて眩暈を覚えるほどだ。

 しかし、わたくしの両親は名高い公爵家の当主として、そして「王太子殿下の義家族となる」という重みを自覚している。母は特に、わたくしの衣装や振る舞いに隙がないよう、事あるごとに「もう少し立ち居振る舞いを優雅にしなさい」「微笑はこう、あごの角度はこう」と事細かに口を挟んでくる。幼い頃から同じように指導されてきたので、わたくしとしてはさほど苦ではないのだが、それでも一日中気を張り詰めていると少し疲労が募るものだ。
 一方、父は主に国家的儀礼や式典の段取り面で助力している。ヴェルディ公爵家と王家の結びつきの強さが改めて周囲に誇示される絶好の機会であるため、公爵家の人間としては抜かりなく準備を進めたいのだろう。もっとも、わたくしが本当にそうした政治的思惑に協力しているのかといえば、それもまた微妙なところで……わたくしが思うのはただ、「式が終わったら、わたくしはアルベルト様に放っておいてもらえればそれでいい」ということだけ。
 もちろん、公爵家を支える娘として最低限の義務は果たすし、周囲にも恥をかかせるつもりはない。むしろ、完璧に“王太子妃”らしく振る舞うことは、のちのちわたくし自身の立場を強固にするためにも重要だ。けれど、派手な場や人目を引く華やかな行事の連続は、やはりひどく疲れる。わたくしの本音を言えば、一刻でも早く式を終えて、自分の書斎で紅茶でも飲みながら読書に没頭したい。

 そんなわたくしの願いもむなしく、挙式が目前となるにつれ、慌ただしさは加速度的に増していった。公爵家の屋敷には、毎日のように関係者が訪れ、広い玄関ホールや応接室が入り乱れた人々の声で満ちている。さらに祝賀の品や祝いの言葉が全国から届けられ、使用人たちはその対応に追われていた。母も父もやることが山積みで、わたくしも逃げ回ってばかりもいられない。求められる場面では笑顔で相手をもてなし、丁寧な言葉を返し、礼状を書き、訪れる客の前で優雅に振る舞う。
 まさに世の中には、王太子殿下と公爵令嬢の結婚を一大イベントとして楽しもうとする人々が存在するのだと、改めて思い知らされた。わたくしは「こんな狂騒はさっさと終わってほしい」と心底思いつつ、日々をこなしていた。
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