王太子妃の器ではないと言われましたが、帝国の未来そのものでした

鍛高譚

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6話

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 フローラ・フォン・リヴェールがラグナ帝国の皇太子――クラウス・イーグレッド・ラグナと初めて対面してから、すでに数日が経過していた。
 その朝、重厚な作りの馬車に揺られながら、フローラは車窓の外に広がる風景をじっと見つめている。道なき荒野が続いていたかと思えば、いつの間にか石畳の大通りへと変わり、行き交う人々の姿が増え始めた。
 ここはラグナ帝国の首都、通称「灰銀の都」とも呼ばれる グラナート。今までは名の知れた大国の首都という程度にしか思っていなかったが、いざ目前に広がる街並みを目にすると、そのスケールと活気には圧倒されるばかりだった。

「フローラ様、まもなく帝都の中心街を抜けまして、王宮――いえ、我が帝国では『皇宮』と呼びますが、そちらへ到着いたします」
 窓の外を眺めるフローラに声をかけたのは、護衛の騎士 エドガー・レヴィン だ。初対面のときから変わらず、礼儀正しく穏やかな物腰を崩さない。彼の隣では、同じくラグナ帝国の騎士たちが馬を駆り、フローラを守るように取り囲んでいた。
「はい……ありがとうございます」
 フローラは緊張で少し硬くなった声を返す。これから向かう皇宮こそが、自分の新たな居場所になる。実感が湧かないと同時に、どこか恐ろしさのようなものも感じていた。
 だが、彼女の不安を払うように、前を進む漆黒の馬が一度こちらを振り返る。その背に乗っているのはクラウス――ラグナ帝国の皇太子であり、フローラの「婚約者」になるはずの男性だ。
 彼はほんの少し視線を向け、口元をゆるめる。それは「大丈夫だ。俺がついている」という無言のメッセージにも思えて、フローラの胸は少しだけ温かくなった。
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