王太子妃の器ではないと言われましたが、帝国の未来そのものでした

鍛高譚

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25話

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フローラの決断と、ざまあなる王国の行く末

 かくして、王国の特使団はラグナ帝国の皇宮内で、著しく不利な立場に追い込まれることとなった。
 彼らがいくら「和平を結びたい」と願っても、それはラグナ帝国の意向に沿う形でしか許されない。そもそも、実質的に戦力で勝ち目がない以上、王国には厳しい条件を吞む以外の選択肢などなかった。
 フローラは――というと、皇帝やクラウスの傍らで、この経緯をすべて見届ける立場にあった。かつて憎んだわけではない父を前にしながらも、彼女の心は不思議と冷静だった。
 公爵家の人々に裏切られ、アルベルトに侮辱されてきた記憶が、もう過去の痛みとして胸に残っているだけで、彼らに対して怒りをぶつけようとも思わない。むしろ、ここまで来ると「あわれ」に近い感情を抱くほどだ。
 それでも、あのときの自分に言い聞かせるような思いが湧いてくる。――「逃げるのではなく、今を見据えて進んでよかった」と。

 数日の交渉を経て、王国の特使団はほぼラグナ帝国の要求を丸呑みする形で「新条約案」への仮調印を行う羽目になった。貿易の関税や国境近くの一部領土の管理権など、王国にとっては大幅な譲歩を余儀なくされる内容だ。
 さらに、「万が一、条約に違反するような事態があれば、ラグナ帝国は軍事介入も辞さない」という一文が付け加えられており、もはや王国が帝国の属国のように振る舞わざるを得ない状況になりつつある。
 公爵らは、それでも「国を守るために仕方がない」と自分に言い訳しながら、帰国の途につく。帰国後は、さらに激しい非難や混乱が待ち受けているだろうが、ラグナ帝国の条件を呑む以外に道がなかったのだから仕方ない。

 そして、今回の交渉の過程で、フローラが「皇太子妃候補」として帝国で明確に認知され、ひとかどの地位を築いている事実も、公爵たちの間で痛いほど知らしめられることになった。
 彼らにとっては、まさに「ざまあ」な結果だ。捨てた娘が、より強大な国で高い地位を得て、自分たちに致命的な譲歩を飲ませる原因の一つとなったのだから。
 公爵は帰国の馬車の中で、まるで白髪が増えたかのようにげっそりとしながら、何度も「まさか……まさか……」とつぶやいていた。後悔しても、もう手遅れ――という事実を突きつけられているかのようだ。
 さらに、アルベルトとカトリーナの耳にこの結果が伝われば、どれほど動揺するだろう。彼らは、自分たちが捨てたフローラがラグナ帝国で溺愛されていることすら知らないままだろうし、王国の没落がさらに加速するのは明らかだ。
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