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私、ユウナ・アストラルが婚約者であるアルファルド王太子殿下から婚約破棄を宣告されたのは、半月ほど前のことだった。
ルノワール王国を治める王家の嫡男であり、将来の国王となるはずの殿下が、突如として「君とは結婚できない」と告げてきたのだ。
今でもその場面を思い出すだけで、胸がざわつく。あの日、私は盛大に開催された宮廷舞踏会で、殿下から薔薇の花と共にある言葉を期待していた。それはもちろん、「結婚を前提とした正式な求婚」か、あるいは社交界を卒業して互いの絆を深める誓約のようなものだと思っていた。なぜなら、私たちは幼い頃からの許嫁関係だったから。誰もが、この縁組に疑いの余地などないと信じていた。
けれど、その期待は無残にも裏切られた。
「君との婚約は、破棄する」
そう言われたとき、私は呆然とするしかなかった。まるで周囲のすべてが遠ざかり、音も色も失っていくようだった。
なにが起きているのか、理解できなかった。あれほど優しく、私をいつも気遣ってくれた王太子殿下が、どうしてこんなにも簡単に私を捨てるのだろう。いや、“捨てる”という生易しい言葉すら憚られるほど、殿下は冷徹で、まるで他人を見るかのような表情を浮かべていた。
私は会場中の視線を浴びながら、それでも必死に笑みを作った。もしここで取り乱せば、アストラル公爵家の令嬢としての品位を疑われてしまう。しかし、頭の中は真っ白で、足元が崩れ落ちそうだった。
殿下は続けて言う。
「君には悪いが、真に愛すべき人が見つかった。これ以上、君を欺き続けるわけにはいかない」
華やかな音楽が流れる舞踏会の中心で、ざわめきが大きくなるのがわかった。王太子との婚約――それは、アストラル家にとっても王宮にとっても既定路線だった。にもかかわらず、それが覆るだなんてスキャンダルもいいところだ。
私は胸が痛くて、まっすぐに立っているのもやっとだった。けれど、王太子の横には見覚えのある令嬢が佇んでいる。光沢のある水色のドレスを纏い、美しい銀髪を揺らす彼女こそ、殿下の“真に愛すべき人”なのだろう。
(やはり、あれは噂などではなく事実だったということ……?)
私は、どうしようもない胸の痛みと恥辱に耐えながら、頭を下げた。
「……そう、ですか。殿下がお望みならば、私は……婚約破棄を受け入れます」
声が震えそうになるのを必死で堪える。すると、アルファルド王太子は少しだけ表情を曇らせたように見えたが、その視線には未練も後悔も感じられなかった。
そして、殿下は踵を返し、銀髪の令嬢――セレスティナ・ロゼリアとともに舞踏会場の奥へと消えていった。私はその背中を見送りながら、心臓がひび割れるような感覚を味わうしかなかった。
ルノワール王国を治める王家の嫡男であり、将来の国王となるはずの殿下が、突如として「君とは結婚できない」と告げてきたのだ。
今でもその場面を思い出すだけで、胸がざわつく。あの日、私は盛大に開催された宮廷舞踏会で、殿下から薔薇の花と共にある言葉を期待していた。それはもちろん、「結婚を前提とした正式な求婚」か、あるいは社交界を卒業して互いの絆を深める誓約のようなものだと思っていた。なぜなら、私たちは幼い頃からの許嫁関係だったから。誰もが、この縁組に疑いの余地などないと信じていた。
けれど、その期待は無残にも裏切られた。
「君との婚約は、破棄する」
そう言われたとき、私は呆然とするしかなかった。まるで周囲のすべてが遠ざかり、音も色も失っていくようだった。
なにが起きているのか、理解できなかった。あれほど優しく、私をいつも気遣ってくれた王太子殿下が、どうしてこんなにも簡単に私を捨てるのだろう。いや、“捨てる”という生易しい言葉すら憚られるほど、殿下は冷徹で、まるで他人を見るかのような表情を浮かべていた。
私は会場中の視線を浴びながら、それでも必死に笑みを作った。もしここで取り乱せば、アストラル公爵家の令嬢としての品位を疑われてしまう。しかし、頭の中は真っ白で、足元が崩れ落ちそうだった。
殿下は続けて言う。
「君には悪いが、真に愛すべき人が見つかった。これ以上、君を欺き続けるわけにはいかない」
華やかな音楽が流れる舞踏会の中心で、ざわめきが大きくなるのがわかった。王太子との婚約――それは、アストラル家にとっても王宮にとっても既定路線だった。にもかかわらず、それが覆るだなんてスキャンダルもいいところだ。
私は胸が痛くて、まっすぐに立っているのもやっとだった。けれど、王太子の横には見覚えのある令嬢が佇んでいる。光沢のある水色のドレスを纏い、美しい銀髪を揺らす彼女こそ、殿下の“真に愛すべき人”なのだろう。
(やはり、あれは噂などではなく事実だったということ……?)
私は、どうしようもない胸の痛みと恥辱に耐えながら、頭を下げた。
「……そう、ですか。殿下がお望みならば、私は……婚約破棄を受け入れます」
声が震えそうになるのを必死で堪える。すると、アルファルド王太子は少しだけ表情を曇らせたように見えたが、その視線には未練も後悔も感じられなかった。
そして、殿下は踵を返し、銀髪の令嬢――セレスティナ・ロゼリアとともに舞踏会場の奥へと消えていった。私はその背中を見送りながら、心臓がひび割れるような感覚を味わうしかなかった。
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