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3話
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時間は無慈悲に過ぎ、両親が亡くなってから二週間が経とうとしていた。私は寝不足と過労、そして深い悲しみでほとんど眠れない。使用人たちは優しく接してくれるが、私の内心をどうケアすればいいのかわからない様子だった。
その夜、私は書斎で父の遺品を整理していた。膨大な書類や手紙の山の中から、ふと目に留まったのは一通の手紙。差出人はリヒト・フェンリル――私の幼馴染であり、現在は宮廷魔導師として仕えている青年だった
手紙にはこう書かれている。
「公爵様と奥方の事故について、不審な点がいくつもあります。念のため調査を進めておりますので、落ち着いたら王宮までいらしてください」
リヒトも同じ疑念を抱いているらしい。彼は父とも母とも親交が深く、以前から実家同様にアストラル家を行き来していた。私が幼い頃から世話になった兄のような存在でもある。そんな彼が言うのだから、何か手がかりを掴んでいるのだろう。
(リヒト……私、どうすればいいの?)
ひとりごとのように呟きつつ、私は手紙を胸に抱えた。答えは見えないまま。それでも、じっと屋敷に閉じこもっているだけでは何も解決しない。ならば、王宮へ行き、リヒトに会って詳しい話を聞くしかない。
だが、私が行動を決意したその夜、さらなる悲劇が襲いかかる。
深夜、執務室で書類を整理していたとき、バサリと窓が開く音がした。振り向いた瞬間、黒装束の人物が躍りかかってくる。
私に武術の心得はほとんどない。悲鳴を上げようとしたが、口を塞がれ、首筋に冷たい刃が押し当てられた。
「……っ!」
呼吸ができないほどの恐怖。視線だけが必死に周囲を探すが、こんな真夜中に助けを呼べる人はいない。離れの屋敷にいる使用人たちも、この執務室まで駆けつけるのに時間がかかるだろう。
暗殺者は低い声で囁いた。
「お前が余計なことを知ったのが運の尽きだ。両親の死がただの事故ではないと気づいたようだが……もう遅い」
やはり、両親は殺されたのだ。しかも私まで消そうとするとは、なんて卑劣なことだろう。抵抗しようにも、私は細腕で必死に身を捩じるのが精一杯。男の腕力には遠く及ばない。
(このまま殺される……? こんな形で終わるなんて……!)
私が死を覚悟しかけた、そのとき。胸の奥から不思議な魔力が噴き出るのを感じた。熱いようで、冷たい。矛盾する感覚が全身を貫き、視界が暗転する。
次の瞬間、私の体が透き通り、暗殺者の刃をすり抜けていた。
「な、なんだと……!?」
相手は明らかに怯えている。私自身、何が起きているのかわからないが、とにかく奇妙な浮遊感に包まれていた。
私は自分の腕を見る。そこには半透明の肌がある。まるで幽霊のように、実体が希薄になったかのようだ。
(これが……《幽体化》?)
まさか自分がこんな力を持っているとは思わなかった。いや、正確に言えば“持っていなかった”はずだ。だが、極限状態で何かが引き出されたのかもしれない。
暗殺者は苛立ちを露わに、短剣を振り回そうとするが、半透明となった私には当たらない。私は怖くなって部屋の隅へ逃げ込む。声も出せないし、何をどうすればいいのか混乱していたが、このままここに居続ければいずれは殺されるだろう。
(誰か……助けて……!)
私の心の声も虚しく、暗殺者が追ってくる足音が背後に迫る。どうしよう、窓から飛び降りるか? いや、幽体化していても、地面に落ちれば無事ではいられないかもしれない。
そんなとき、屋敷の門のほうから誰かが駆け込んでくる足音が聞こえた。夜更けにもかかわらず、急を要する様子。外灯の下に見えた姿は、見覚えのある青年だった。
(リヒト……!)
私は思わず心の中で彼の名を呼ぶ。リヒトは庭のほうへ回り込み、暗殺者と鉢合わせになる寸前で私の半透明の姿を認めたようだった。一瞬目を見開くが、すぐに魔力を練り上げて唱える。
「リカバリ・フィールド!」
聖属性の回復魔法が光の奔流となって広がり、私を包み込む。途端に私の体がずしりと重くなり、幽体化が解けて実体が戻ってきた。私は地面に膝をつき、荒い息を吐き出す。倒れ込む寸前で、リヒトが支えてくれた。
しかし、危機は去っていない。暗殺者が塀を乗り越え、こちらを目掛けて突進してくる。リヒトは素早く詠唱を始めた。
「サンダー・バースト!」
鋭い稲妻が夜闇を裂き、暗殺者の体を焼く。男は悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。どうやら気絶したらしく、ピクリとも動かない。
私は胸を撫で下ろしながらリヒトを見上げる。漆黒の髪と深い瞳が月光に照らされ、険しい表情をしていた。
「大丈夫か、ユウナ。けがはない?」
「リヒト……ありがとう。助かったわ……」
声が震える。恐怖もあったが、それ以上に安堵感で涙が溢れそうになる。リヒトは私の肩を支えながら、倒れた暗殺者を一瞥した。
「こいつ……ただの盗賊じゃないな。計画的だ。やっぱり両親の事故に関わった連中が動いているのかもしれない」
その言葉に、私は唇を噛む。両親を殺したのは何者なのか。どうしてそこまでアストラル公爵家を潰そうとするのか。
(王太子殿下、まさか本当に……?)
もはや嫌な予感しかしなかった。リヒトは低く続ける。
「実は、王宮で耳にしたんだが……アルファルド王太子の裏で、いろいろと噂が立っている。アストラル夫妻が亡くなったのも、王太子が仕組んだ可能性があるって」
まだ確実な証拠はないものの、状況的には十分ありえる話だろう。少なくとも私はもう、あの優しかった王太子を信じることができなくなりかけていた。
そのとき、地面に倒れている暗殺者が急に闇の魔力を放出し始めた。リヒトが「しまった!」と叫ぶが、間に合わない。まるで自爆でもするかのように、男の体が黒い靄に包まれ、みるみるうちに消失してしまう。
「……遺体すら残さないとは、徹底してるな。どこかの組織に雇われた殺し屋か」
リヒトは悔しそうに息を吐き、短剣と黒い布の切れ端を拾い上げる。あれほど命を脅かした男が痕跡もほとんど残さず消えてしまったことに、私も寒気を覚えた。
このままでは、いずれまた別の刺客がやってくるだろう。私は立ち上がりながら、リヒトを見つめる。
「リヒト……私、どうしても真実を暴きたい。両親の死の真相を。だって、こんなの……許せない」
「わかってる。俺も協力するさ。だけど……」
彼の視線は私に向けられたまま、どこか困惑を帯びていた。
「さっき、ユウナがおかしな状態になっていただろう? 身体が透き通っていた。あれは一体なんだ?」
私もよくわからない。ただ、死にかけた瞬間に強く“生きたい”と願ったとき、自分が幽体のようになったのだ。
「リヒトはあれを、《幽体化》みたいだと言ってたけど……私、そんな魔法、学んだことないわ」
「普通の魔導師が使えるものじゃない。おそらく、何らかの異能か、覚醒スキルに近いものだろう。危険もあるだろうが、状況によっては自分を守る大きな力になるかもしれないな」
リヒトの言葉に、私は小さく息をついた。まだ信じられないが、少なくとも暗殺者の刃を避けるには十分役に立ったのは事実だ。使い方によっては、相手の目を盗んで屋敷や宮廷に忍び込むことすらできるかもしれない。
そして、私はある考えを思いつく。
「リヒト……私、少しの間、死んだことにしておいてほしいの」
「は……? 何を言ってるんだ?」
「私が生きているとわかれば、また暗殺者が送り込まれる。今度は成功するかもしれない。それなら、いっそ“死んだ”ことにすればいいのよ。そうしたら、敵は私の始末を終えたと思い込み、警戒を解くわ。それに、《幽体化》を使えば、人目を忍んで調査するのもできるかもしれない」
リヒトは目を丸くし、すぐに渋い表情になった。
「無茶だ。お前が本当に殺されかけたっていうのに、さらに危険な手段を取るなんて……」
「だけど……このまま公爵家を継いで普通に暮らすほうが、よほど危険よ。アルファルド殿下は王太子。正面から立ち向かえば、私なんてあっという間に消されてしまう。だったら私も姿を消すしかないじゃない。死んだふりをして、幽霊として動くの。それが私に残された唯一の道だと思う」
両親を殺され、私自身も危うく殺されかけた。何もしなければ、次は必ず仕留められる。ならば先手を打って、自分の“死”というフェイクを逆手に取るしかない。
リヒトは苦しそうに眉を寄せるが、やがて深く頷いた。
「……わかった。お前がそこまでの決意なら、俺も協力する。ただし絶対、無茶はするなよ」
「ありがとう。リヒト……本当に、ありがとう」
私が心から感謝すると、彼は少し照れたように目を伏せた。けれど表情は真剣そのものだ。
その夜、私はリヒトの支えの下で意識を失った暗殺者の始末や、その場の後処理を手伝った。といっても、暗殺者は闇の術式で消滅しかけていたため、ほとんど証拠は残らなかったが……。
両親を奪った者の正体を掴むために、私はこうして復讐への第一歩を踏み出す。
その夜、私は書斎で父の遺品を整理していた。膨大な書類や手紙の山の中から、ふと目に留まったのは一通の手紙。差出人はリヒト・フェンリル――私の幼馴染であり、現在は宮廷魔導師として仕えている青年だった
手紙にはこう書かれている。
「公爵様と奥方の事故について、不審な点がいくつもあります。念のため調査を進めておりますので、落ち着いたら王宮までいらしてください」
リヒトも同じ疑念を抱いているらしい。彼は父とも母とも親交が深く、以前から実家同様にアストラル家を行き来していた。私が幼い頃から世話になった兄のような存在でもある。そんな彼が言うのだから、何か手がかりを掴んでいるのだろう。
(リヒト……私、どうすればいいの?)
ひとりごとのように呟きつつ、私は手紙を胸に抱えた。答えは見えないまま。それでも、じっと屋敷に閉じこもっているだけでは何も解決しない。ならば、王宮へ行き、リヒトに会って詳しい話を聞くしかない。
だが、私が行動を決意したその夜、さらなる悲劇が襲いかかる。
深夜、執務室で書類を整理していたとき、バサリと窓が開く音がした。振り向いた瞬間、黒装束の人物が躍りかかってくる。
私に武術の心得はほとんどない。悲鳴を上げようとしたが、口を塞がれ、首筋に冷たい刃が押し当てられた。
「……っ!」
呼吸ができないほどの恐怖。視線だけが必死に周囲を探すが、こんな真夜中に助けを呼べる人はいない。離れの屋敷にいる使用人たちも、この執務室まで駆けつけるのに時間がかかるだろう。
暗殺者は低い声で囁いた。
「お前が余計なことを知ったのが運の尽きだ。両親の死がただの事故ではないと気づいたようだが……もう遅い」
やはり、両親は殺されたのだ。しかも私まで消そうとするとは、なんて卑劣なことだろう。抵抗しようにも、私は細腕で必死に身を捩じるのが精一杯。男の腕力には遠く及ばない。
(このまま殺される……? こんな形で終わるなんて……!)
私が死を覚悟しかけた、そのとき。胸の奥から不思議な魔力が噴き出るのを感じた。熱いようで、冷たい。矛盾する感覚が全身を貫き、視界が暗転する。
次の瞬間、私の体が透き通り、暗殺者の刃をすり抜けていた。
「な、なんだと……!?」
相手は明らかに怯えている。私自身、何が起きているのかわからないが、とにかく奇妙な浮遊感に包まれていた。
私は自分の腕を見る。そこには半透明の肌がある。まるで幽霊のように、実体が希薄になったかのようだ。
(これが……《幽体化》?)
まさか自分がこんな力を持っているとは思わなかった。いや、正確に言えば“持っていなかった”はずだ。だが、極限状態で何かが引き出されたのかもしれない。
暗殺者は苛立ちを露わに、短剣を振り回そうとするが、半透明となった私には当たらない。私は怖くなって部屋の隅へ逃げ込む。声も出せないし、何をどうすればいいのか混乱していたが、このままここに居続ければいずれは殺されるだろう。
(誰か……助けて……!)
私の心の声も虚しく、暗殺者が追ってくる足音が背後に迫る。どうしよう、窓から飛び降りるか? いや、幽体化していても、地面に落ちれば無事ではいられないかもしれない。
そんなとき、屋敷の門のほうから誰かが駆け込んでくる足音が聞こえた。夜更けにもかかわらず、急を要する様子。外灯の下に見えた姿は、見覚えのある青年だった。
(リヒト……!)
私は思わず心の中で彼の名を呼ぶ。リヒトは庭のほうへ回り込み、暗殺者と鉢合わせになる寸前で私の半透明の姿を認めたようだった。一瞬目を見開くが、すぐに魔力を練り上げて唱える。
「リカバリ・フィールド!」
聖属性の回復魔法が光の奔流となって広がり、私を包み込む。途端に私の体がずしりと重くなり、幽体化が解けて実体が戻ってきた。私は地面に膝をつき、荒い息を吐き出す。倒れ込む寸前で、リヒトが支えてくれた。
しかし、危機は去っていない。暗殺者が塀を乗り越え、こちらを目掛けて突進してくる。リヒトは素早く詠唱を始めた。
「サンダー・バースト!」
鋭い稲妻が夜闇を裂き、暗殺者の体を焼く。男は悲鳴を上げて地面に倒れ込んだ。どうやら気絶したらしく、ピクリとも動かない。
私は胸を撫で下ろしながらリヒトを見上げる。漆黒の髪と深い瞳が月光に照らされ、険しい表情をしていた。
「大丈夫か、ユウナ。けがはない?」
「リヒト……ありがとう。助かったわ……」
声が震える。恐怖もあったが、それ以上に安堵感で涙が溢れそうになる。リヒトは私の肩を支えながら、倒れた暗殺者を一瞥した。
「こいつ……ただの盗賊じゃないな。計画的だ。やっぱり両親の事故に関わった連中が動いているのかもしれない」
その言葉に、私は唇を噛む。両親を殺したのは何者なのか。どうしてそこまでアストラル公爵家を潰そうとするのか。
(王太子殿下、まさか本当に……?)
もはや嫌な予感しかしなかった。リヒトは低く続ける。
「実は、王宮で耳にしたんだが……アルファルド王太子の裏で、いろいろと噂が立っている。アストラル夫妻が亡くなったのも、王太子が仕組んだ可能性があるって」
まだ確実な証拠はないものの、状況的には十分ありえる話だろう。少なくとも私はもう、あの優しかった王太子を信じることができなくなりかけていた。
そのとき、地面に倒れている暗殺者が急に闇の魔力を放出し始めた。リヒトが「しまった!」と叫ぶが、間に合わない。まるで自爆でもするかのように、男の体が黒い靄に包まれ、みるみるうちに消失してしまう。
「……遺体すら残さないとは、徹底してるな。どこかの組織に雇われた殺し屋か」
リヒトは悔しそうに息を吐き、短剣と黒い布の切れ端を拾い上げる。あれほど命を脅かした男が痕跡もほとんど残さず消えてしまったことに、私も寒気を覚えた。
このままでは、いずれまた別の刺客がやってくるだろう。私は立ち上がりながら、リヒトを見つめる。
「リヒト……私、どうしても真実を暴きたい。両親の死の真相を。だって、こんなの……許せない」
「わかってる。俺も協力するさ。だけど……」
彼の視線は私に向けられたまま、どこか困惑を帯びていた。
「さっき、ユウナがおかしな状態になっていただろう? 身体が透き通っていた。あれは一体なんだ?」
私もよくわからない。ただ、死にかけた瞬間に強く“生きたい”と願ったとき、自分が幽体のようになったのだ。
「リヒトはあれを、《幽体化》みたいだと言ってたけど……私、そんな魔法、学んだことないわ」
「普通の魔導師が使えるものじゃない。おそらく、何らかの異能か、覚醒スキルに近いものだろう。危険もあるだろうが、状況によっては自分を守る大きな力になるかもしれないな」
リヒトの言葉に、私は小さく息をついた。まだ信じられないが、少なくとも暗殺者の刃を避けるには十分役に立ったのは事実だ。使い方によっては、相手の目を盗んで屋敷や宮廷に忍び込むことすらできるかもしれない。
そして、私はある考えを思いつく。
「リヒト……私、少しの間、死んだことにしておいてほしいの」
「は……? 何を言ってるんだ?」
「私が生きているとわかれば、また暗殺者が送り込まれる。今度は成功するかもしれない。それなら、いっそ“死んだ”ことにすればいいのよ。そうしたら、敵は私の始末を終えたと思い込み、警戒を解くわ。それに、《幽体化》を使えば、人目を忍んで調査するのもできるかもしれない」
リヒトは目を丸くし、すぐに渋い表情になった。
「無茶だ。お前が本当に殺されかけたっていうのに、さらに危険な手段を取るなんて……」
「だけど……このまま公爵家を継いで普通に暮らすほうが、よほど危険よ。アルファルド殿下は王太子。正面から立ち向かえば、私なんてあっという間に消されてしまう。だったら私も姿を消すしかないじゃない。死んだふりをして、幽霊として動くの。それが私に残された唯一の道だと思う」
両親を殺され、私自身も危うく殺されかけた。何もしなければ、次は必ず仕留められる。ならば先手を打って、自分の“死”というフェイクを逆手に取るしかない。
リヒトは苦しそうに眉を寄せるが、やがて深く頷いた。
「……わかった。お前がそこまでの決意なら、俺も協力する。ただし絶対、無茶はするなよ」
「ありがとう。リヒト……本当に、ありがとう」
私が心から感謝すると、彼は少し照れたように目を伏せた。けれど表情は真剣そのものだ。
その夜、私はリヒトの支えの下で意識を失った暗殺者の始末や、その場の後処理を手伝った。といっても、暗殺者は闇の術式で消滅しかけていたため、ほとんど証拠は残らなかったが……。
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