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6話
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王宮の一角に設けられた王太子執務室――案内板の表示を確認しながら、私は狭い階段を上り、分厚い扉の前へと到達した。扉の下側から、かすかに灯りが漏れている。どうやら中に人がいるらしい。
(さて、どうする? 幽体化で中に入るのは簡単だけど、いきなり姿をさらしては危険が大きい。まずは会話を盗み聞きできないか……)
私は扉に耳を当てようとした。しかし、幽霊状態で壁をすり抜ければ、そのまま扉越しに中へ移動できるのでは――そう考え、実行に移す。
一瞬、冷気が走った。扉を越えて、中の空間へとするりと潜り込む。そこには、大きな机があり、几帳面に並んだ書類が山積みになっている。奥には執事風の人物が立っていた。
そして――机の前に立っているのは、私の元婚約者、王太子アルファルド。その横には、銀髪が印象的なセレスティナ・ロゼリアの姿がある。
「殿下、本当にあの娘は死んだのでしょうか。噂だけが先行しているようですが、遺体が見つかったという確かな報告は……」
セレスティナが不安げに問う。アルファルドは書類を整理しながら苛立たしげに答えた。
「まだ断定はできないが、ほぼ死んだとみていいだろう。そもそも、あの令嬢は“生きていても邪魔”なだけだったからな。アストラル家を潰すのが目的だった以上、あれで十分さ」
私は壁際で息を呑む。このやり取り――やはり、両親を殺したのはアルファルドとセレスティナ。その黒幕が、まぎれもなく彼らだというのが、こうしてもろに伝わってきた。
「まさかあんなに簡単に事が運ぶとは思いませんでしたわ。公爵夫妻があっさりと“事故”で亡くなるだなんて……ふふ、意外に脆いものですのね」
セレスティナの横顔が、嗜虐的な笑みで歪んでいる。私は怒りで身体が震えそうになるのを必死にこらえた。今ここで飛び出しても、二人を仕留めるだけの力はない。第一、護衛や周囲の兵が押し寄せてきたら一巻の終わりだ。
(でも……やっぱり両親を殺したのは、この人たちなんだわ)
改めて突きつけられる真実に、胸が焼けそうになる。けれど今は情報収集が先。私は必死に感情を押し殺し、二人の会話に耳を傾ける。
「殿下。もし、あの令嬢が生き延びていたら……どうなさるおつもりです?」
「そんなもの、当然――もう一度始末するまでだ。俺の邪魔をするものはすべて、排除あるのみ。あの公爵家の莫大な資産を取り込めたのは大きいが、まだアストラルの旧臣や友好関係のある貴族からの反発が残っている。これらを根絶するには、ユウナが死んだという事実を確固たるものにすればいい」
「ええ、そうですわね。ですが噂では、亡霊が出るとか……。ああ気味が悪い! 何も知らない人たちが騒いでいるだけでしょうけれど、私のような繊細な女性には堪え難いですわ」
セレスティナはわざとらしく胸元に手を当て、か細い演技をしてみせる。
あまりに腹立たしい姿ではあるが、その言葉に嘘はないのだろう。王太子はむしろ軽く笑っているようだった。
「はは、亡霊だと? 馬鹿馬鹿しい。ユウナは死んでいるのだから、幽霊が出てもおかしくないというわけか? どれほど呪われようと、俺にはもう関係のない話だ」
(……そう、幽霊が出るのは“馬鹿馬鹿しい”と思うのね?)
まさに今、幽霊のような私が目の前で話を聞いているというのに、まったく気づいていない。私は奥歯を噛みしめた。その悔しさと、自分がこうして何もできない無力さに苛立つ。
「セレスティナ。お前も近々、正式に王宮へ移り住むことになる。王家の正統な花嫁として、相応の振る舞いを心得ておけ。あのアストラル令嬢みたいに、余計な疑いを持たれるような行動はするな」
「もちろんですわ。私が殿下を支えて、国をよりよくして差し上げますわ!」
セレスティナはそう言うと、優雅にスカートの裾を揺らして微笑む。彼女の瞳には明らかに野心の色が宿っている。
そこで執務室の扉がノックされ、執事が一礼して入ってきた。
「殿下。まもなく巡回の兵が来ますゆえ、そろそろお休みになられては……。セレスティナ様も今宵はお戻りになるご予定かと」
「ああ、そうだったな。では、執務はここまでだ」
アルファルドは書類を一括りにまとめ、執事に渡す。そしてセレスティナとともに扉へ向かった。
(まずい、ここで出くわしたら……!)
私は慌てて部屋の隅へと移動し、壁の中へスッと身を溶け込ませる。扉が開き、二人が外に出ていく気配がした。執事も続くように退室し、部屋には誰もいなくなる。
あたりが静まり返る。私はほっと息を吐いた。
「……本当は、ここで二人の首をはねたいくらいだけど」
そんな過激なことができるはずもない。ただ、彼らの会話でわかったことがある。――私の両親が“偶然死んだ”のではなく、“狙って殺された”のは確定的。それどころか、アストラル家の財産を吸い上げるために徹底的に仕組まれた犯行だったのだ。
さらに、セレスティナの王宮入りはもう時間の問題らしい。あの女が将来の王妃になるなんて、身震いするほど嫌悪感を覚えるが、そこまでしても権力を手に入れたいのだろう。アルファルドも彼女を“利用できる相手”と見ているに違いない。
私の死を笑い飛ばし、両親の殺害を当然のように語る二人が、これから悠々と国の中心に立とうとしている。そんな未来、認められるわけがない。
「でも……絶対に好きにはさせないわ。あなたたちが殺したつもりのユウナ・アストラルは、まだ生きているんだから」
私は机の上に視線を向ける。何か手掛かりとなる書類が残されていないかと思ったが、執事が撤去してしまったようだ。ほんの数枚だけ、雑に置かれたメモ書きが散らばっている程度。
ざっと目を通すと、セレスティナの持参金や婚礼の準備についての走り書きがあった。あと、気になる名前がひとつ。“グラン・クルール”……? 何かの組織名だろうか。それらしき言葉がメモ書きに載っているだけで、詳細はわからない。
私はひとまずそのメモを透き通った指先で拾い、試しに懐へ仕舞ってみた。幽体化している状態で物を持ち運べるのか――やってみると、なんとか保持できるようだ。慣れないので少し集中力が必要だが、物体を薄い膜のように包む感覚で同化させれば、私と一緒に移動ができるらしい。
(これは使えるわね。証拠品を運ぶのに役立ちそう)
とりあえず、今夜はここまでだろう。これ以上うろついて見つかる危険を冒すよりは、一度リヒトのところへ戻って情報を共有するほうが先決だ。
私は執務室を後にし、再び廊下から壁をすり抜けて屋外へ。見張りの兵士たちに気づかれないように気を遣いながら、塀を超えて王宮の外へと脱出する。
こうして初めての“幽霊としての潜入”は大きな成果こそ得られなかったものの、彼らが真犯人だという確証を掴むには十分な一夜となった。
(さて、どうする? 幽体化で中に入るのは簡単だけど、いきなり姿をさらしては危険が大きい。まずは会話を盗み聞きできないか……)
私は扉に耳を当てようとした。しかし、幽霊状態で壁をすり抜ければ、そのまま扉越しに中へ移動できるのでは――そう考え、実行に移す。
一瞬、冷気が走った。扉を越えて、中の空間へとするりと潜り込む。そこには、大きな机があり、几帳面に並んだ書類が山積みになっている。奥には執事風の人物が立っていた。
そして――机の前に立っているのは、私の元婚約者、王太子アルファルド。その横には、銀髪が印象的なセレスティナ・ロゼリアの姿がある。
「殿下、本当にあの娘は死んだのでしょうか。噂だけが先行しているようですが、遺体が見つかったという確かな報告は……」
セレスティナが不安げに問う。アルファルドは書類を整理しながら苛立たしげに答えた。
「まだ断定はできないが、ほぼ死んだとみていいだろう。そもそも、あの令嬢は“生きていても邪魔”なだけだったからな。アストラル家を潰すのが目的だった以上、あれで十分さ」
私は壁際で息を呑む。このやり取り――やはり、両親を殺したのはアルファルドとセレスティナ。その黒幕が、まぎれもなく彼らだというのが、こうしてもろに伝わってきた。
「まさかあんなに簡単に事が運ぶとは思いませんでしたわ。公爵夫妻があっさりと“事故”で亡くなるだなんて……ふふ、意外に脆いものですのね」
セレスティナの横顔が、嗜虐的な笑みで歪んでいる。私は怒りで身体が震えそうになるのを必死にこらえた。今ここで飛び出しても、二人を仕留めるだけの力はない。第一、護衛や周囲の兵が押し寄せてきたら一巻の終わりだ。
(でも……やっぱり両親を殺したのは、この人たちなんだわ)
改めて突きつけられる真実に、胸が焼けそうになる。けれど今は情報収集が先。私は必死に感情を押し殺し、二人の会話に耳を傾ける。
「殿下。もし、あの令嬢が生き延びていたら……どうなさるおつもりです?」
「そんなもの、当然――もう一度始末するまでだ。俺の邪魔をするものはすべて、排除あるのみ。あの公爵家の莫大な資産を取り込めたのは大きいが、まだアストラルの旧臣や友好関係のある貴族からの反発が残っている。これらを根絶するには、ユウナが死んだという事実を確固たるものにすればいい」
「ええ、そうですわね。ですが噂では、亡霊が出るとか……。ああ気味が悪い! 何も知らない人たちが騒いでいるだけでしょうけれど、私のような繊細な女性には堪え難いですわ」
セレスティナはわざとらしく胸元に手を当て、か細い演技をしてみせる。
あまりに腹立たしい姿ではあるが、その言葉に嘘はないのだろう。王太子はむしろ軽く笑っているようだった。
「はは、亡霊だと? 馬鹿馬鹿しい。ユウナは死んでいるのだから、幽霊が出てもおかしくないというわけか? どれほど呪われようと、俺にはもう関係のない話だ」
(……そう、幽霊が出るのは“馬鹿馬鹿しい”と思うのね?)
まさに今、幽霊のような私が目の前で話を聞いているというのに、まったく気づいていない。私は奥歯を噛みしめた。その悔しさと、自分がこうして何もできない無力さに苛立つ。
「セレスティナ。お前も近々、正式に王宮へ移り住むことになる。王家の正統な花嫁として、相応の振る舞いを心得ておけ。あのアストラル令嬢みたいに、余計な疑いを持たれるような行動はするな」
「もちろんですわ。私が殿下を支えて、国をよりよくして差し上げますわ!」
セレスティナはそう言うと、優雅にスカートの裾を揺らして微笑む。彼女の瞳には明らかに野心の色が宿っている。
そこで執務室の扉がノックされ、執事が一礼して入ってきた。
「殿下。まもなく巡回の兵が来ますゆえ、そろそろお休みになられては……。セレスティナ様も今宵はお戻りになるご予定かと」
「ああ、そうだったな。では、執務はここまでだ」
アルファルドは書類を一括りにまとめ、執事に渡す。そしてセレスティナとともに扉へ向かった。
(まずい、ここで出くわしたら……!)
私は慌てて部屋の隅へと移動し、壁の中へスッと身を溶け込ませる。扉が開き、二人が外に出ていく気配がした。執事も続くように退室し、部屋には誰もいなくなる。
あたりが静まり返る。私はほっと息を吐いた。
「……本当は、ここで二人の首をはねたいくらいだけど」
そんな過激なことができるはずもない。ただ、彼らの会話でわかったことがある。――私の両親が“偶然死んだ”のではなく、“狙って殺された”のは確定的。それどころか、アストラル家の財産を吸い上げるために徹底的に仕組まれた犯行だったのだ。
さらに、セレスティナの王宮入りはもう時間の問題らしい。あの女が将来の王妃になるなんて、身震いするほど嫌悪感を覚えるが、そこまでしても権力を手に入れたいのだろう。アルファルドも彼女を“利用できる相手”と見ているに違いない。
私の死を笑い飛ばし、両親の殺害を当然のように語る二人が、これから悠々と国の中心に立とうとしている。そんな未来、認められるわけがない。
「でも……絶対に好きにはさせないわ。あなたたちが殺したつもりのユウナ・アストラルは、まだ生きているんだから」
私は机の上に視線を向ける。何か手掛かりとなる書類が残されていないかと思ったが、執事が撤去してしまったようだ。ほんの数枚だけ、雑に置かれたメモ書きが散らばっている程度。
ざっと目を通すと、セレスティナの持参金や婚礼の準備についての走り書きがあった。あと、気になる名前がひとつ。“グラン・クルール”……? 何かの組織名だろうか。それらしき言葉がメモ書きに載っているだけで、詳細はわからない。
私はひとまずそのメモを透き通った指先で拾い、試しに懐へ仕舞ってみた。幽体化している状態で物を持ち運べるのか――やってみると、なんとか保持できるようだ。慣れないので少し集中力が必要だが、物体を薄い膜のように包む感覚で同化させれば、私と一緒に移動ができるらしい。
(これは使えるわね。証拠品を運ぶのに役立ちそう)
とりあえず、今夜はここまでだろう。これ以上うろついて見つかる危険を冒すよりは、一度リヒトのところへ戻って情報を共有するほうが先決だ。
私は執務室を後にし、再び廊下から壁をすり抜けて屋外へ。見張りの兵士たちに気づかれないように気を遣いながら、塀を超えて王宮の外へと脱出する。
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