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15話
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ロゼリア家の屋敷に続き、王宮での仮面舞踏会でも暗躍してみせた私、ユウナ・アストラル。
“幽霊”として恐怖を振りまき、アルファルド王太子とその新しい婚約者セレスティナを追い詰めてきたが、未だに決定的な証拠を掴めず、彼らの悪行を公に晒すところまでは至っていない。
しかし、時間は確実に動いている。両親を殺してまで手に入れようとしたアストラル公爵家の資産や利権をめぐって、アルファルドとセレスティナは着実に王宮での影響力を拡大しつつあったが、その裏では“亡霊騒ぎ”という不穏な噂が彼らへの不信感を生むきっかけにもなっている。
そして、すべてが最後を迎える引き金となったのは、王宮から突然発せられた“緊急招集”の報せだった。
ある晩、協力者であるリヒトから告げられたのは、「国王陛下が重病」との報道。そして、王太子であるアルファルドが「王位継承の宣誓式を行うため、宮廷の主要貴族を総動員する」と発表したということ。
まさか――あの父王まで手をかけられたのか、それとも突然の病なのか。いずれにしても、これがアルファルドの“王位簒奪”に繋がる動きであることは想像に難くなかった。
「もし、国王陛下が崩御されたら、アルファルドが即位することになる。そうなれば、ユウナ、お前の復讐は……」
「ええ、難しくなるわ。逆賊扱いされるか、二度と公には姿を現せなくなるかもしれない」
私は隠れ家の机に両手をつき、唇を噛みしめる。父と母の無念を晴らす前に、アルファルドを正統な王として戴冠させてしまっては、手の打ちようがなくなる可能性が高い。
だからこそ、この“緊急招集”こそが、最後の大逆転を狙う絶好の機会ともいえるのだ。式典には主要な貴族や王族、騎士団の上層部が集まる。そこでは公然とした“場”が設けられ、国王――仮に病床であっても、ある程度は関与するだろう。
「ここしかない。私が幽霊の仮面を脱ぎ捨て、堂々と姿を現し、彼らの罪を白日の下に晒すのは……」
そのためには、決定的な“切り札”が必要だ。幸運にも、リヒトが連日にわたる調査でいくつかの証拠書類を掴んでくれていた。両親を暗殺した闇ギルドとの契約書や、セレスティナの実家ロゼリア家が横領した公爵家の財産の一部を裏金として動かしていた痕跡。それらはかなり有力な材料だ。
だが、王太子を直接追及するには、彼自身の口から「殺した」「潰した」と自白させるのが一番早い。なぜなら、たとえどんな書類があっても、それが捏造だと言い逃れる可能性は残るからだ。
そして、私は思い出す――自分が持っているもう一つのスキル。幽体化とは別の力、《憑依》。
(あれを使えば、アルファルドの身体を乗っ取って、勝手に“自白”させることだって可能かもしれない……)
先日、わずかな実験をしたときに感じた手応えは、確かに私の中にある。ただ、相手の意識が強いときに憑依しようとすると、抵抗に遭って難しい可能性があるし、成功しても“乗っ取れる時間”は限られるだろう。
それでもやってみる価値はある。私はもう死んだ身として、この最後の賭けにすべてを注ぐしかないのだ。
「リヒト、国王陛下に直接会えるチャンスを作りたいわ。たとえ病床でも、彼がおられる場でアルファルドを暴走させ、罪を白状させるの。私が《憑依》を使ってね」
「……正気か? 相手は王太子だぞ。警備も厳重だし、陛下の近くとなれば、さすがに幽体化していても危険すぎる。失敗すれば、即座に騎士団に取り押さえられるぞ」
「わかってる。でも、これが最善の策。両親の仇を取るためには、王太子の口から真相を暴かせるのが一番よ。私が“いない”と思い込んでいる今なら、油断が生まれるかもしれない」
リヒトは深刻な面持ちで黙り込み、やがて決意したように頷いた。
「……わかった。そこまで言うなら、俺も全力で協力する。どのみち、王太子が即位してしまえば、ユウナに生きる道はない。だったら、一か八か、総力戦でやるしかないな」
私たちはそうして目を合わせ、次の大舞台――「王位継承宣誓式」と呼ばれる公的行事に狙いを定めたのだった。
“幽霊”として恐怖を振りまき、アルファルド王太子とその新しい婚約者セレスティナを追い詰めてきたが、未だに決定的な証拠を掴めず、彼らの悪行を公に晒すところまでは至っていない。
しかし、時間は確実に動いている。両親を殺してまで手に入れようとしたアストラル公爵家の資産や利権をめぐって、アルファルドとセレスティナは着実に王宮での影響力を拡大しつつあったが、その裏では“亡霊騒ぎ”という不穏な噂が彼らへの不信感を生むきっかけにもなっている。
そして、すべてが最後を迎える引き金となったのは、王宮から突然発せられた“緊急招集”の報せだった。
ある晩、協力者であるリヒトから告げられたのは、「国王陛下が重病」との報道。そして、王太子であるアルファルドが「王位継承の宣誓式を行うため、宮廷の主要貴族を総動員する」と発表したということ。
まさか――あの父王まで手をかけられたのか、それとも突然の病なのか。いずれにしても、これがアルファルドの“王位簒奪”に繋がる動きであることは想像に難くなかった。
「もし、国王陛下が崩御されたら、アルファルドが即位することになる。そうなれば、ユウナ、お前の復讐は……」
「ええ、難しくなるわ。逆賊扱いされるか、二度と公には姿を現せなくなるかもしれない」
私は隠れ家の机に両手をつき、唇を噛みしめる。父と母の無念を晴らす前に、アルファルドを正統な王として戴冠させてしまっては、手の打ちようがなくなる可能性が高い。
だからこそ、この“緊急招集”こそが、最後の大逆転を狙う絶好の機会ともいえるのだ。式典には主要な貴族や王族、騎士団の上層部が集まる。そこでは公然とした“場”が設けられ、国王――仮に病床であっても、ある程度は関与するだろう。
「ここしかない。私が幽霊の仮面を脱ぎ捨て、堂々と姿を現し、彼らの罪を白日の下に晒すのは……」
そのためには、決定的な“切り札”が必要だ。幸運にも、リヒトが連日にわたる調査でいくつかの証拠書類を掴んでくれていた。両親を暗殺した闇ギルドとの契約書や、セレスティナの実家ロゼリア家が横領した公爵家の財産の一部を裏金として動かしていた痕跡。それらはかなり有力な材料だ。
だが、王太子を直接追及するには、彼自身の口から「殺した」「潰した」と自白させるのが一番早い。なぜなら、たとえどんな書類があっても、それが捏造だと言い逃れる可能性は残るからだ。
そして、私は思い出す――自分が持っているもう一つのスキル。幽体化とは別の力、《憑依》。
(あれを使えば、アルファルドの身体を乗っ取って、勝手に“自白”させることだって可能かもしれない……)
先日、わずかな実験をしたときに感じた手応えは、確かに私の中にある。ただ、相手の意識が強いときに憑依しようとすると、抵抗に遭って難しい可能性があるし、成功しても“乗っ取れる時間”は限られるだろう。
それでもやってみる価値はある。私はもう死んだ身として、この最後の賭けにすべてを注ぐしかないのだ。
「リヒト、国王陛下に直接会えるチャンスを作りたいわ。たとえ病床でも、彼がおられる場でアルファルドを暴走させ、罪を白状させるの。私が《憑依》を使ってね」
「……正気か? 相手は王太子だぞ。警備も厳重だし、陛下の近くとなれば、さすがに幽体化していても危険すぎる。失敗すれば、即座に騎士団に取り押さえられるぞ」
「わかってる。でも、これが最善の策。両親の仇を取るためには、王太子の口から真相を暴かせるのが一番よ。私が“いない”と思い込んでいる今なら、油断が生まれるかもしれない」
リヒトは深刻な面持ちで黙り込み、やがて決意したように頷いた。
「……わかった。そこまで言うなら、俺も全力で協力する。どのみち、王太子が即位してしまえば、ユウナに生きる道はない。だったら、一か八か、総力戦でやるしかないな」
私たちはそうして目を合わせ、次の大舞台――「王位継承宣誓式」と呼ばれる公的行事に狙いを定めたのだった。
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