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第1章 ――思い出された二つの人生――
4話
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王宮へと続く大通りは、左右に商店や屋敷が立ち並び、道路の舗装もしっかりとしている。道行く人々は、時折きらびやかな馬車を目にすると、その中に乗っている貴族の姿を興味深げに見つめていた。私の馬車にもちらほらと視線が向けられるが、レイラの記憶によれば、アーデルハイド公爵家は非常に尊敬される名家らしいので、道行く人は敬意と羨望のまなざしを送っているようだ。
馬車がしばらく走り、やがて壮麗な王宮の正門が見えてきた。守衛たちが検査を行うが、アーデルハイド公爵家の紋章を確認すると、すぐに道を開けてくれる。
王宮の中庭は広大で、手入れの行き届いた草花や噴水が美しい景観を作り出していた。私は馬車から降り、先導してくれる近衛兵に従って、王宮の奥へと進む。廊下には豪華なカーペットが敷かれ、壁には数々の絵画やタペストリーが飾られている。どこを見ても絢爛豪華で、前世の私には縁遠い世界だ。
(さすがは王宮……すごいなぁ。庶民が一生かかってもお目にかかれない場所よね。まあレイラとしては慣れっこなのかもしれないけど)
そんなことを思いながら、私は近
前世の私が一番欲しかったもの――自由。ブラック企業から解放されるように、貴族としての人生も余計なしがらみから解放されるなら、それはむしろ好都合だ。貴族令嬢の身分はそのままに、面倒ごとは消え去るなんて、こんなに素敵な展開はないと思う。
いわゆる“ザマァ”展開を望むなら、ここで「断罪シーン」だの「復讐」だの、ドラマチックに盛り上がるところかもしれない。でも私の価値観では、そんなことにエネルギーを注ぐより、まずは自分の暮らしを充実させるほうが圧倒的に重要だ。
「さて、まずは何をしようかしら。お茶会? それとも舞踏会? それに……レイラの領地にはぶどう園があるみたいだし、ワインの品種改良が行われているとか。興味あるわね……!」
さっそく頭に浮かぶのは、レイラの記憶に残っているアーデルハイド領の豊かな風景だ。森と湖、そして広大なぶどう畑が広がる光景。そこから生まれるワインは、この国でもなかなかの評判らしい。前世でもワインは嗜む程度だったけれど、まさか自分がその生産側に関われるなんて、ちょっとワクワクしてくる。
馬車が公爵家に近づくにつれ、私の心はどんどん弾んでいった。屋敷に着いたら、まず侍女たちとお茶を楽しみたい。その後は、ぶどう園の責任者に話を聞いてみよう。もし品種改良に何か工夫ができるなら、前世の知識を活かせる可能性もあるかもしれない。インターネットはないけれど、基本的な農学や生物学の知識は多少なりとも覚えている。
「うん、悪くないわ。婚約破棄よりも、今はそっちのほうが大切よね」
私はそう呟いて、窓の外を見つめる。
これが私、レイラ・フォン・アーデルハイドとしての新しい人生のスタート。どうやら、“婚約破棄”を巡るドロドロしたドラマは私の興味の外にあるらしい。周囲は騒ぐだろうが、私は私のやりたいことを優先する。
(復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やりたくないわ。それに、復讐は新たな憎しみを生むだけって、前世のドラマや小説で散々見てきたもの)
そう、負の連鎖に巻き込まれるより、のんびり優雅に生きるのが一番だ――私は心の中で確信する。
王太子がどう後悔しようと、新しい令嬢がどれだけあざとく私を見下そうと、知ったことではない。私は今、この恵まれた環境で、自由と優雅さを噛みしめながらのんびり暮らす。そのほうが、はるかに有意義で、はるかに幸せではないだろうか。
かくして、私――レイラ・フォン・アーデルハイドの物語は幕を開ける。
婚約破棄? そんなもの、大したことではない。
まだ気づいていないが、この先、私の行動は多くの人々を巻き込み、思わぬ波紋を呼ぶことになるのだが……。
でも、それはまた別の機会に語るとして、とにかく今はこう言わせてほしい。
「さて、まずはお茶を飲みに帰りましょうか。ふふ、どんなスイーツが待っているのかしら」
馬車は石畳を優雅に走り抜け、公爵家の玄関へと滑り込んでいった。
私の新たな人生は、意外にもあっさりと“婚約破棄”から始まるのだった。
馬車がしばらく走り、やがて壮麗な王宮の正門が見えてきた。守衛たちが検査を行うが、アーデルハイド公爵家の紋章を確認すると、すぐに道を開けてくれる。
王宮の中庭は広大で、手入れの行き届いた草花や噴水が美しい景観を作り出していた。私は馬車から降り、先導してくれる近衛兵に従って、王宮の奥へと進む。廊下には豪華なカーペットが敷かれ、壁には数々の絵画やタペストリーが飾られている。どこを見ても絢爛豪華で、前世の私には縁遠い世界だ。
(さすがは王宮……すごいなぁ。庶民が一生かかってもお目にかかれない場所よね。まあレイラとしては慣れっこなのかもしれないけど)
そんなことを思いながら、私は近
前世の私が一番欲しかったもの――自由。ブラック企業から解放されるように、貴族としての人生も余計なしがらみから解放されるなら、それはむしろ好都合だ。貴族令嬢の身分はそのままに、面倒ごとは消え去るなんて、こんなに素敵な展開はないと思う。
いわゆる“ザマァ”展開を望むなら、ここで「断罪シーン」だの「復讐」だの、ドラマチックに盛り上がるところかもしれない。でも私の価値観では、そんなことにエネルギーを注ぐより、まずは自分の暮らしを充実させるほうが圧倒的に重要だ。
「さて、まずは何をしようかしら。お茶会? それとも舞踏会? それに……レイラの領地にはぶどう園があるみたいだし、ワインの品種改良が行われているとか。興味あるわね……!」
さっそく頭に浮かぶのは、レイラの記憶に残っているアーデルハイド領の豊かな風景だ。森と湖、そして広大なぶどう畑が広がる光景。そこから生まれるワインは、この国でもなかなかの評判らしい。前世でもワインは嗜む程度だったけれど、まさか自分がその生産側に関われるなんて、ちょっとワクワクしてくる。
馬車が公爵家に近づくにつれ、私の心はどんどん弾んでいった。屋敷に着いたら、まず侍女たちとお茶を楽しみたい。その後は、ぶどう園の責任者に話を聞いてみよう。もし品種改良に何か工夫ができるなら、前世の知識を活かせる可能性もあるかもしれない。インターネットはないけれど、基本的な農学や生物学の知識は多少なりとも覚えている。
「うん、悪くないわ。婚約破棄よりも、今はそっちのほうが大切よね」
私はそう呟いて、窓の外を見つめる。
これが私、レイラ・フォン・アーデルハイドとしての新しい人生のスタート。どうやら、“婚約破棄”を巡るドロドロしたドラマは私の興味の外にあるらしい。周囲は騒ぐだろうが、私は私のやりたいことを優先する。
(復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やりたくないわ。それに、復讐は新たな憎しみを生むだけって、前世のドラマや小説で散々見てきたもの)
そう、負の連鎖に巻き込まれるより、のんびり優雅に生きるのが一番だ――私は心の中で確信する。
王太子がどう後悔しようと、新しい令嬢がどれだけあざとく私を見下そうと、知ったことではない。私は今、この恵まれた環境で、自由と優雅さを噛みしめながらのんびり暮らす。そのほうが、はるかに有意義で、はるかに幸せではないだろうか。
かくして、私――レイラ・フォン・アーデルハイドの物語は幕を開ける。
婚約破棄? そんなもの、大したことではない。
まだ気づいていないが、この先、私の行動は多くの人々を巻き込み、思わぬ波紋を呼ぶことになるのだが……。
でも、それはまた別の機会に語るとして、とにかく今はこう言わせてほしい。
「さて、まずはお茶を飲みに帰りましょうか。ふふ、どんなスイーツが待っているのかしら」
馬車は石畳を優雅に走り抜け、公爵家の玄関へと滑り込んでいった。
私の新たな人生は、意外にもあっさりと“婚約破棄”から始まるのだった。
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