25 / 27
第五章 ――晩餐会へ至る道、そして新たな未来へ――
25話
しおりを挟む
フィナーレ――国王からの賛辞、そして自由への道
晩餐会も終盤に差し掛かり、宴席が落ち着きを見せはじめた頃。なんと、国王陛下 ご自身が私たちのコーナーに足を運んでくださるという一報が届いた。一気に周囲が緊張感に包まれ、ファビアンやリヴィエールは「まさか、直々に……!」と蒼白になっている。
少しして現れた国王は、白髪混じりの威厳ある壮年男性で、大柄な身体を纏うローブに金糸の刺繍がきらめいている。その背後には王太子や多くの近衛兵、宮廷貴族が従っていた。国王は私を見ると、柔らかな笑みを浮かべて声をかけてくれた。
「アーデルハイド公爵令嬢、レイラ・フォン・アーデルハイド殿。今回のワインの件、大変感謝しておる。それに加えて、こうして領地の新しい産物をお披露目していただくとは、実に面白い試みだ」
「もったいないお言葉です、陛下。私がほんの少し思いついたアイデアを、領地の皆さんが形にしてくれたにすぎません。陛下にお気に召すかどうか、まだまだ分かりませんが……」
私が会釈すると、国王はテーブルに並ぶ商品を一通り見回し、ひとつひとつ興味深げに確認している。ハーブパンやスパイス料理を軽く口に運んだり、ぶどうジュースを試したりもして、「ほう……」と唸るように頷く。周囲の貴族や近衛兵たちも、控えめに目を輝かせていた。
そして、国王は私に向き直って、静かに言葉を紡ぐ。
「我々の国は長らくワイン文化を誇りとしてきたが、同時にそれ以外の産業や食文化にも目を向ける時期に来ているのかもしれん。……レイラ・フォン・アーデルハイド殿のように、枠にとらわれず新しいものを取り入れる姿勢は、今後の我が国にとって貴重な財産となろう」
「恐れ多い限りです、陛下。私など、まだ始めたばかりで、失敗も多いでしょうが……領地に秘められた可能性を少しでも広げたいと思っております」
「うむ……その心掛け、しかと受け止めたぞ。もしさらなる支援が必要なときは、遠慮なく声をかけるがよい。――婚約破棄の件があったとはいえ、アーデルハイド公爵家は我が国を支える大切な柱のひとつだ。これからも頼りにしておるぞ」
国王はそれだけ言うと、満足そうな顔で「さて、そろそろ余興の舞踏が始まる」と言い、取り巻きを連れて移動していく。私は深く頭を下げながら、その背中を見送った。父公爵は少し離れたところで誇らしげに笑っており、こちらへ視線を送っている。
王太子は国王の背後で複雑そうな表情をしていたが、結局何も言わなかった。浮気相手令嬢も俯いている。私は内心「そっちがどうであれ、私はこのまま好きにやるから」と心の中で呟き、そっとため息をつく。これにて私の役目はほぼ完了だ。あとは余興の舞踏会が進み、宴が終わるのを見届けるだけ。
晩餐会も終盤に差し掛かり、宴席が落ち着きを見せはじめた頃。なんと、国王陛下 ご自身が私たちのコーナーに足を運んでくださるという一報が届いた。一気に周囲が緊張感に包まれ、ファビアンやリヴィエールは「まさか、直々に……!」と蒼白になっている。
少しして現れた国王は、白髪混じりの威厳ある壮年男性で、大柄な身体を纏うローブに金糸の刺繍がきらめいている。その背後には王太子や多くの近衛兵、宮廷貴族が従っていた。国王は私を見ると、柔らかな笑みを浮かべて声をかけてくれた。
「アーデルハイド公爵令嬢、レイラ・フォン・アーデルハイド殿。今回のワインの件、大変感謝しておる。それに加えて、こうして領地の新しい産物をお披露目していただくとは、実に面白い試みだ」
「もったいないお言葉です、陛下。私がほんの少し思いついたアイデアを、領地の皆さんが形にしてくれたにすぎません。陛下にお気に召すかどうか、まだまだ分かりませんが……」
私が会釈すると、国王はテーブルに並ぶ商品を一通り見回し、ひとつひとつ興味深げに確認している。ハーブパンやスパイス料理を軽く口に運んだり、ぶどうジュースを試したりもして、「ほう……」と唸るように頷く。周囲の貴族や近衛兵たちも、控えめに目を輝かせていた。
そして、国王は私に向き直って、静かに言葉を紡ぐ。
「我々の国は長らくワイン文化を誇りとしてきたが、同時にそれ以外の産業や食文化にも目を向ける時期に来ているのかもしれん。……レイラ・フォン・アーデルハイド殿のように、枠にとらわれず新しいものを取り入れる姿勢は、今後の我が国にとって貴重な財産となろう」
「恐れ多い限りです、陛下。私など、まだ始めたばかりで、失敗も多いでしょうが……領地に秘められた可能性を少しでも広げたいと思っております」
「うむ……その心掛け、しかと受け止めたぞ。もしさらなる支援が必要なときは、遠慮なく声をかけるがよい。――婚約破棄の件があったとはいえ、アーデルハイド公爵家は我が国を支える大切な柱のひとつだ。これからも頼りにしておるぞ」
国王はそれだけ言うと、満足そうな顔で「さて、そろそろ余興の舞踏が始まる」と言い、取り巻きを連れて移動していく。私は深く頭を下げながら、その背中を見送った。父公爵は少し離れたところで誇らしげに笑っており、こちらへ視線を送っている。
王太子は国王の背後で複雑そうな表情をしていたが、結局何も言わなかった。浮気相手令嬢も俯いている。私は内心「そっちがどうであれ、私はこのまま好きにやるから」と心の中で呟き、そっとため息をつく。これにて私の役目はほぼ完了だ。あとは余興の舞踏会が進み、宴が終わるのを見届けるだけ。
1
あなたにおすすめの小説
「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして
東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。
破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢マリオンの婚約者アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
セラフィーヌの幸せ結婚 ~結婚したら池に入ることになりました~
れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。
しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。
ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。
ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。
セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。
それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。
*前半シリアス、後半コミカルっぽいです。
*感想欄で所々ネタバレしてしまいました。
感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m
*他サイトでも投稿予定です
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる