27 / 185
21「仲間入り」
しおりを挟むタロウが少し青い顔をしています。そういえば、こちらに来た当初は素が青白い顔でしたが、ここの所は健康的な顔色ですね。
それこそしっかり食べているからでしょうね。
「心配するなタロウよ。ファネルの後釜の生贄となるまで、およそ一年だ。それまでには余裕で魔力量も満ちる。竜の因子のお陰で、すなわち私のお陰でな」
「そっすね! 魔力が空っぽにならなきゃ良いんすもんね!」
タロウもお気楽極楽です。でもそれがタロウの良いところでしょう。
「そういえば、俺の世界では一年って365日なんすけど、こっちはどれくらいなんすか?」
「タロウの世界は長いんですね。こちらでは275日です。十月で割って、偶数月は二十七日、奇数月は二十八日です」
「ちなみに今は何月っすか?」
「二月の頭ですね」
「じゃぁ来年の一月中に行けば良いんすね」
「一応は年内に着くべきだな。ファネルの寿命は、大体一年、と聞いている」
余裕がありそうでなさそうな、微妙なところですね。単純に距離だけ考えれば充分なんですが。
「年内って聞くと何故か慌てるっすね」
タロウも同じような事を考えていましたか。
「それでな。ヴァンよ、お主の魔力は変わりないか?」
さすがアンセム様。お気付きでしたか。
「はい。正直なところ、不調です。今すぐにどうこうという事はありませんが、絶不調ですね」
「やはりな。どうもボンヤリしてる様子があるのでな」
「魔法を使わなくても回復量以上に消費しています。回復量をやや上回る程度ですので、一晩眠ればほとんど回復してはいますが」
ふむん、と腕を組んで考えるアンセム様。
「やはりブラムの眠りに伴う物であろうな」
「アンセム様もそう思われますか」
他に理由が考えられません。タロウがこちらに来た日、あれからずっとですから。
「異世界からの強制転移で相当に魔力を使ったはず。眷族がいれば魔力回復の足しになるのだが、奴はなぜか眷族を作りたがらないので眷族はゼロ。眠りながら無意識に血縁者から魔力を吸収しているのであろう」
「血縁者も僕しかいませんからね」
最近とみに、僕とした事が、の台詞が多いのもそのせいでしょう。普段の僕ならそんな事はないんです。
本当ですよ?
「そんな事で大丈夫なんすか! 俺を守れるのはヴァンさんしかいないんすよ!」
『プックルモイルゾ』
「プックルにも期待してるっす! よろしくお願っす!」
実は僕も少し不安でした。マトン程度ならどうという事もないですが、マロウの群れや、それ以上の魔獣も多くいますから。
時間無制限ならば、魔獣の巣を迂回するなどいくらでも考えられますが、時間的に厳しい場合が出て来そうです。
「その為にロップスを呼んだ。ロップス」
「は!」
「貴様、ヴァン達と共に行け」
「な!? 私がこのバカタロウとともに? 私には主をお守りする使命が」
「貴様に守られる私ではないわ」
「……そ、それはそうですが」
確かにロップス殿に来ていただければ心強いです。あの食べっぷりですので食費的には不安ですが。
「別にタロウらと馴れ合えとは言わん。これは竜族の長としての命令だ。共に行って世界を守れ」
「世界を……。かしこまりました。このロップス、主の命、間違いなく果たして参ります!」
ロップス殿が膝を折りアンセム様に誓う。
「ロップスさん、よろしくっす!」
タロウが右手を差し出して握手を求めました。タロウはそういう所、割りとキチンとしていますね。
が、ロップス殿はバチンとその手を払います。
「勘違いするな。私は貴様を守るのではない。この世界の為に生贄を守るのだ」
そしてこちらに右手を差し出し、よろしく、と言うロップス殿。
タロウがオロオロしています。
うーん、気まずいですね。でもきっと道々仲良くなるでしょう。
「よろしくお願いします、ロップス殿」
ロップス殿の右手を固く握り返しました。
「では行け! 世界を守るの、
「ちょーっと待ったっす!」
このタイミングで話の腰を折るとは、やりますねタロウ。
「なんだタロウ」
「なんだじゃないっすよ。俺が結界仲間に認められる話、済んでないっしょ!?」
「あ」
「あ」
「あ」
『ア』
すっかり忘れていました。ここに伺ったメインの用事でしたのに。
「忘れておったのお。最近歳をとったせいか物忘れが……」
「父に魔力を吸収されるので最近うっかりが多くて……」
「私は貴様らを守る事が仕事だからな……」
『メェェェ』
プックルまでヤギの真似で誤魔化しています。
「そんな言い訳は良いんすよ! 何したら認めて貰えるんすか?」
「勘違いするでない。私が忘れていたのは、既に認めた、と伝えるのを忘れていたのだ」
アンセム様、それ今考えたんじゃないんですか?
「それ今考えたんじゃないんすか?」
「バッ、バカを言うでない。タロウの中の竜の因子を見つけた際にな、既に認めておったのだ」
疑いの目を向けるタロウ。僕は自重しました。
「その証拠にほれ。胸をはだけてみよ」
言われて胸をはだけて覗き込みます。
「なんすかこれ? 変な病気とかじゃないっすよね?」
タロウの胸の中心に、小指の先程の緑色で塗り潰された円が見えます。少し怯えているようです。
「私が認めた証よ。タロウに潜った際に、魂に刻みつけた。五英雄と呼ばれる他の連中にもつけてもらうが良い」
ホッと胸を撫で下ろすタロウ。本当に病気かと疑ってたんでしょうか。
「疑ってすんませんした!」
「さぁ、これでここに用はあるまい。次はガゼルの所か? それともタイタニアか?」
悩みどころです。アンセム様の所からファネル様の所へ行けば良いと思ってましたからね。どちらから参りましょう。
10
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる