異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
107 / 185

80「エビアン村の惨劇」

しおりを挟む

 イギーさんとアンテオ様が現れてから数日が経ちました。
 僕らは西へ西へと、森の中を横断中です。

『ねえヴァン殿、あれから考えてたんでござるが』
「なんです?」
『それがしもロップス殿の魔力操作の技、できるでござろうか?』
「できるとは思いますが、お勧めはしませんね」
『え? そう……で、ござるか……』

 あ、見るからにションボリしてしまいました。

「止めておけ。この技のリスクはこの前話した通りだ」
『でも喰らわなければ良いってロップス殿も……』
「私には竜鱗がある。叔父上の竜鱗に比べればやわいが、それでもそこそこの耐久力がある。それが無ければこんなリスクの高い技はできん」
『……そう、で、ござるか』

 実際問題、恐らくロップス殿の竜鱗だって大して役に立たないでしょう。ロボに気を遣ってああ言ってくれただけだと思います。

 ロップス殿は相当な覚悟を持った上での選択ですからめませんが、ロボには勧められません。

 ロボも以前に比べれば戦力に数えられるくらいには成長しています。
 昨日も森で出会でくわしたマトンや狐の魔獣・マコたちはロボとタロウで仕留めて貰いました。
 それでももっと役に立ちたい思いがあるんでしょうね。

「それにロボの精霊力量がどの程度あるのか、僕らには見当もつきませんし、精霊力の効果的な使い方も分かりません。タイタニア様に伺ってから考えましょう」

 ロボの霊法の練習はあまり芳しくありません。魔法元素との相性は悪くなさそうなんですが、精霊力との混ぜ方が僕にもロボ本人にも良く分からないんです。

 やはり精霊力は精霊女王に教えて貰うのが一番でしょう。




 アンテオ様の威圧で追い散らされた獣や魔獣たちも森に戻ってきているようで、その後の数日間はチラホラ現れる魔獣を食糧としながら進みました。

 移動中もロップス殿は魔力操作の練習を怠っていません。
 この技の良い所はやはり、魔力を放出しない事、これが大きいですね。

 僕らが使う一般的な魔力による身体強化は魔力を消費しますが、この技は体内のあちこちに魔力を集めるだけですので、魔力量の少ないロップス殿向きです。

「この先の森が拓けた所に村があるはずです。そこで一泊しましょう」





「村ってこれっすか?」

 エビアン村は閑散としていました。
 建物は所々破壊され、地面には魔法で穿たれたであろう穴がいくつも開いていました。

「戦いのあとだと思うか?」
「戦いと言うよりは、蹂躙と言う方が正しそうですね」

 とにかく生きている村人がいないか捜索です。
「タロウはプックルと、ロボはロップス殿と、敵がいないとも限りません、三手に別れて怪我人がいないか探しましょう」
「おす! プックルよろしくっす!」


 結論で言いますと、一人の生存者もいませんでした。
 皆殺しです。
 予想はしていましたが非常に残念です。

「死体の数は少ないですが、夥しい血の跡……恐らくは魔獣の襲撃でしょう」
「喰われた……か」

 残された死体には噛み跡や爪跡に数種のものが確認できました。
 最低でも三種、恐らくマロウ、熊の魔獣・マユウ、あとは鳥、鷹の魔獣・マヨウでしょうか。

『何があったか、明き神なら分からんでござろうか?』
「そうですね。タロウ、聞いてみて貰えますか?」

 タロウが白眼をむいて口を開きます。

 少し沈黙。

「……明き神さま居なかったっす」
「そういう事はよくあるんですか?」
「けっこうあるっす。というかこの何日かはいつ行ってもいないっす」

 タロウは以前、明き神が中に入った、というような事を言っていましたが、タロウの中に明き神がいて会話できる訳ではなく、明き神がいる空間(?)に精神が出入りできるようになっているそうです。

「明き神の力は使えるのか?」
「それは問題ないっす。ほら」

 タロウが足から明き神の魔力を吸い上げ、紫の魔力を纏いました。

「ね。使えるっしょ」



 嫌な予感がします。
  僕の考え通りなら襲われる事はないでしょうが、ここでの滞在は見合わせて次へ向かいましょう。

「エビアン村での滞在は避け、次を目指します。良いですか?」
「気にはなるが長く居たい所ではない。賛成だ」

 エビアン村を後にし、少し西へ向かった森の中で野営にします。


 重い空気の中で、黙々と食事の準備を進めます。さすがにお肉を食べる気はしませんね。

「先程の村だが、どう思う?」
 食事が始まると共にロップス殿が口を開きました。

「こっちの世界ではああいうのって、あるもんなんすか?」
「無いことは無いです。ですが数種の魔獣が徒党を組んで、というのは僕が聞いた限りではありませんね」

 群れを作る魔獣は多いですが、マロウならマロウ、マエンならマエンという風に同種の魔獣で群れを成すのが普通です。

「それを踏まえてどう思う?」
「恐らくは有翼人絡み、でしょうね」
『え? でもイギーが襲わないって言ってたでござる!』

 イギーさんは、ヴァン達を襲わない、って仰ってました。

「襲われたのは僕らじゃないですからね。数種の魔獣を操って村を襲ったと考えるのが妥当かと思います」

「一体なんのためっすか?」
「なんのため?」
「俺たち襲わんのなら、もう魔獣いらんのちゃいます?」

 チャイマス? 
 ああ、違います? ですかね。
 タロウの言うのももっともですね。

「本当ですね。イギーさんが言っていた事を鵜呑みにせずにいた方が良いかも知れませんね」

 イギーさんが言っていた、計画の変更についても、当初の計画も新しい計画も内容が分かりません。
 それに、『しばらくは』僕らを襲わない、と言っていました。いつかは襲う、という事ですよね。

「やはり出来るだけ早く五英雄の証を集めましょう。もうあと二日もすれば森を抜けます。その後二日で父の城です」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...