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94「三つめの証」
しおりを挟む『お姫様抱っこでござるか……、初めてタロウ殿がカッコ良く見えたでござるよ……』
タロウがタイタニア様を抱え上げて階段を登って行きました。
タイタニア様の証については二人に任せるしかありませんね。
「外に出ておいた方が良いかな?」
「出ておいた方が良いんじゃないかしら?」
セイとレインがそんなやり取りをしています。
「ロボの精霊力についての為ですか?」
セイとレインがお互いの顔を見つめ合ってからこちらに向き直りました。
「まあ、それも外の方が良いけど」
「タイタニア様の声がね、割りと大きいのよ」
『マ、マ、マママジすかー! いきなり全裸っすかー!?』
あ、なるほど。
三階からでもタロウの声が筒抜けですね。
「出ましょう。二人が降りてくるまで、僕らは野営ですね」
そう言って振り向くと、ロップス殿が血溜まりの中で前のめりに倒れていました。
『鼻血、吹イタ』
全裸のタイタニア様を妄想してしまいましたか。
「実は初心なんだね、トカゲマン」
「逆に好感度高いわ、トカゲマン」
みんなでロップス殿を外に運び、木陰に横たわらせました。
目が覚めるまではこのままにしておくしかありませんね。
『ロップス殿はどうしたんでござるか? 病気でござるか?』
「心配いりませんよ」
「若い男の子に特有のやつだね」
「あら、女の子もなる子はなるわよ」
妄想で鼻血出ますかね?
青い若さが眩しいですね。本当に。
昼食はロップス殿が目を覚ましてからにするとして、早速セイとレインにロボの精霊力を見てもらう事にしました。
「とりあえず今は何ができる?」
「もちろん精霊力を使った話ね」
『今はほとんど何もできないでござるよ。精霊力を遠吠えに籠めて放つぐらいしか……』
へぇ、と少し驚いた顔のセイとレイン。
ウチのロボは出来る子ですからね。
「ロボちゃんってお幾つかしら?」
『十歳でござるよ』
「十でそれだけ出来れば優秀さ」
『そんなもんでござるか?』
僕が十歳の頃はもっと色々できましたが、精霊力と魔力の違いがあるとそんなもんなんでしょうか。
「はーい、ヴァンは退場!」
「それもしょうがないわね」
え? 僕なにか悪いことしましたか?
「何か不味いことしましたか?」
「頭の中で自分が十歳の頃と比べたでしょ」
「ロボちゃんが嫌な気持ちになっちゃうじゃない」
追い出されました。
倒れたロップス殿の隣で三角座り中です。
「マサンヨウの君」
『プックル』
「プックルは居ててね」
『分カッタ、見テル』
プックルは良いそうです。
退屈ですね。
暇なんでロップス殿に癒しの魔法でもかけときますか。
セイとレインに精霊力の循環を披露したり、霊力砲を披露したりと、ロボの現状確認を進めているようですね。
しばらくしてロップス殿が目を覚ましました。
「……私はどうしたんだ?」
「鼻血を出して倒れちゃったんですよ」
「……そうか。みっともない所を見せたな。すまん」
「いえいえ、みんな通る道ですよ」
キョロキョロと辺りを見回すロップス殿が、ロボたちを見つけました。
「タロウはタイタニア様と上、ロボは精霊たちとトレーニングか」
「ええ、セイとレインに追い出されたんで僕は暇していました」
ロップス殿が目を覚まされたんでお昼ご飯の準備でもしましょうか。
邪魔するのも悪いですから、タロウ達の分は用意しないでおきましょう。
お昼はいつも通り簡単ですのであっという間です。
「セイ! レイン! お昼の準備ができました。少し休憩しませんか?」
「「いらない!」」
『それがしも結構でござる!』
『プックルモ、要ラナイ』
そうですか。なんだか寂しいですね。
「私は頂こう」
「じゃあ二人で食べましょうか」
午後もロボはセイとレインとトレーニング、僕らも暇なんで二人でトレーニングでした。
時折、換気のためか三階の窓を開けるようで、タイタニア様の嬌声やタロウの悲鳴じみた絶叫が聞こえ、その度にロップス殿が前屈み、休憩せざるを得ませんでした。
何度も言いますが、青い若さが眩しいです。
明日からはもう少し離れたところでトレーニングした方が良さそうですね。
三日後の午後一番、タロウとタイタニア様が降りて来られました。
タイタニア様は普段の小さいお姿に戻られて、タロウの頭の上に優雅に座っておられます。
タロウは目の下にクマを作っていますが、タイタニア様はお肌ツヤツヤ、美しさに磨きがかかっていますね。
「おい、タロウ、どんなだった?」
「なんか、凄かったでござるよ」
「おい、口調がロボみたくなってるぞ」
「ナんカ、湿ッテル、トイウカ、泥濘ンデル、ッテ言ウんスカネ」
「おい、今度はプックルみたくなってるぞ」
「凄いんすよ……、柔らかいって言うか、にゃわらかいっていうか……」
「なんなんだ、にゃわらかいって」
「でもアイアンクローよりキツいんすよ。良い意味で」
「ナニがキツいんだ?」
「はい、そこまで。それ以上はアウトでお願いします」
話題を変えるのが一番ですね。
「それでタロウ、証は頂けたんですか?」
「……え? なんか言ったすか?」
まだ呆けていますね。
「タイタニア様、どうなんですか?」
「え? さぁ? あるんじゃないかしら?」
何のために三日も引きこもってたんですか。
若い男と同衾したかっただけなのかと疑ってしまいそうです。
三日前のセイとレインの発言が真実味を帯びてきましたね。
満足そうにボンヤリするタロウには悪いですが、しょうがありませんね。
「ぐはぁ」
脳天を殴りました。
三日ぶりの手刀です。
「……いきなり何するんすかヴァンさん!」
「いきなりじゃありませんよ。ねぇみんな」
タイタニア様とタロウを除く全員が大きく頷きます。ロップス殿が一番大きく頷いていますが。
「証は貰えたんですか?」
「え? ああ、証っすね。どうっすかね?」
慌てて胸元を開いて確認するタロウ。
「緑がアンセムさん、黄色がガゼルさん、で……あったっす! 今度は白い丸!」
タイタニア様は白ですか。
ピンクとかの方が良かったんじゃないでしょうか。
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