128 / 185
96「婚約祝い」
しおりを挟む「ロボ、今夜からは貴女がワタシと寝なさい」
『それがしと? ご先祖様がでござるか?』
……見境なしですか。
「勘違いしないで。ワタシからも婚約祝いを上げようと思うの」
『婚約祝いでござるか!?』
勘違いしてました。すみません。
「この首輪に着いた石、これはブラムの石ね?」
「ええ、逸れた時の為です」
「ロボ、ここにワタシからも三つ、いえ、四つの石を着けても良いかしら?」
『それが婚約祝いでござるな? もちろんでござるよ!』
ロボが嬉しそうですね。それにしてもすっかり婚約首輪で決まってしまいましたか。
まぁ僕もロボの事は大好きですし、満更でもありませんから良いですけどね。
「じゃあ決まりね。その婚約祝いでロボの精霊力陣を覚えられない問題は解消できるはずよ」
『え!? もう覚えなくて良いでござるか!?』
「とりあえず基本の三つは覚えなくても使えるわ」
『やったでござる!』
「ただし、術の構成速度や効果、さらに応用の術については練習が必要よ」
その後もセイとレインに交代で見本の精霊力陣を描いてもらい、それを見ながらロボも書く練習を繰り返しました。
何度か見本無しで挑戦してみましたが、やはりさっぱりでした。
精霊力の霧散で済んだ時は幸運な方で、癒しの力であるはずの『慰撫』で僕が甚大なダメージを負った時はさすがに怯えました。
是が非でもタイタニア様の婚約祝いを頂戴しなければ身が持ちませんよ。
「術自体はそう悪くないわ。陣が覚えられないのは致命的だけど、ワタシからのプレゼントが揃えばなんとかなるでしょう」
トレーニング終了後の夕食時にはタロウも目を覚ましました。
今夜はタイタニア様たちもご一緒されるという事なので、少しだけ多めに作りました。
少しで良いから楽チンですよね。
「ロボの番が済んだら私とも同衾して頂けないだろうか?」
ロップス殿が凄い事を言い出しました。
ヴァン先生としては、食事中にする話題ではないという点で手刀を繰り出しても良いレベルです。
「一緒に寝るだけならいつでも良いけど、もつれ込むのは無理よ。ロボの婚約祝いを作るので精霊力がギリギリになりそうなのと、貴方はアンセムの子だもの。昔の仲間の子供とはやっぱりデキないわよ」
そう、僕も昔同じ事を言われました。ブラムと同じ顔だから無理! って。
ちなみにロップス殿の様にこちらから頼んだ訳ではありませんよ。
「……そうであるか。りょ、りょりょ、了解、いたした……」
ロップス殿なりに軽い感じで言えるタイミングを計ってたんでしょうね。
今度たまには二人でお酒でも飲みましょうか。
「婚約祝いって精霊力を使って作って頂けるんですか?」
「ええ、そうよ。結界の維持もあるし、念のため一日に一つずつ作るから四日ちょうだいね。その間は趣味の盗み聞きもお休みだわ」
『楽しみでござるな、ヴァン殿!』
「本当ですね。どんなのができるんでしょうね」
食事も終了後、ロボの背に座ったタイタニア様に続いてタロウも三階へ上がろうとしました。
「今夜はロボも一緒すか?」
「タロウ、貴方はヴァンたちと寝なさい」
「ええ!? あんなに愛し合ったじゃないすか!」
「……貴方のターンは終わったのよ!」
がーん、と口でちゃんと言ったタロウが固まりました。
ロップス殿と二人で一階ホールの寝床へ運び状況を説明しました。
「そうすか……。今度はロボの精霊力の為っすか……。でも、なんてーんすか、ねぇ」
しょうがありませんね。思ったよりも早い出番ですが。
荷物から紙を分厚く巻いたビンを出しました。
「これだけしかありませんが、少し呑みませんか?」
父の城の厨房からこっそり盗んできたブドウ酒です。
呑み始めて最初のうちは「「女がなんだー!」」と二人で言ってましたが、コップに一杯で全員足りた様です。
僕を含めて三人とも、朝までぐっすりでした。
翌朝、ロボの婚約首輪に新しい石が一つ増えていました。
ブラムの石は僕の魔力色である白、新しい石はどうやらロボの精霊力色のようで薄い桃色をしています。
「ロボの精霊力にしか反応しないようにしてるからね、ロボの精霊力色と同じになったわ」
『ヴァン殿、どうでござるか?』
「ええ、よくお似合いです。素敵ですよ」
尻尾をぶんぶんと振るロボ、狼なんで分かりにくいですが顔が赤いですね。
「その石は『守護』の陣が刻んであるわ。首輪に精霊力を流す感じで精霊力を循環してみて、うん、それで「守護」と唱えるだけよ」
『分かったでござる! 守護!』
……なんにも起こりませんね。
「あ、ごめんなさい。精神感応ではダメよ。ロボの言葉で唱えてちょうだい」
『分かったでござる』
「がうがう!」
ロボの眼前に一瞬、陣が浮かび上がりすぐに消え、そして僕の体を薄い結界が覆いました。
これは物凄く便利な代物ですね。
『凄いでござる! 勝手に陣が浮かび上がったでござるよ!』
「基本の三つだけは石に刻んで上げるからね。期待しててちょうだいね」
タイタニア様はその言葉通り、翌日は『慰撫』、さらにその翌日には『細工』の陣を刻んだ石をロボにプレゼントしてくれました。
しかし、さらにその翌日にくれた石の効果だけは「先々、いえ、割りと近いうちに役に立つ時が来るから」としか教えて頂けませんでした。
「この四つの石がワタシからの婚約祝いよ」
『ありがとうでござるご先祖さま!』
「ありがとうこざいます、タイタニア様」
ウンウンと目を細めて頷くタイタニア様。
「この四日、ワタシがロボと寝床を共にしたから、ロボの体と精霊力の親和性はさらに高まったと思うわ」
体と精霊力の親和性ですか。あまり気にした事がありませんが、そんな事まで気にして頂いてたんですね。有り難い事です。
「だからね。貴方たちもう結婚しなさいよ」
『「え? 結婚?」でござるか?』
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる