130 / 185
97「肉球が向かってくる」
しおりを挟む「じゃ、見本みせるからね」
「良いわよセイ」
「精霊の慰撫!」
セイが描いた精霊力陣が縦に伸びて消え、そこからセイよりふた回りも大きな掌が飛び、レインを叩きつけました。
え? 回復の術じゃなかったんですか?
あ、いえ、大きな掌が消え、その中から現れたレインは無傷どころかツヤツヤと先程よりも元気そうです。
なるほど。
対象へ向けて自分の掌を象ったエネルギーを飛ばし回復する術なんですね。
『ではヴァン殿! いくでござるよ!』
「いつでもどうぞ!」
「がーぅ!」
ロボが唱えると共に眼前に現出する慰撫の陣、陣から現れた僕の背丈と同程度のロボの掌を象ったエネルギーが――
に、肉球が向かってくる……
ボフンと僕を押しつぶしたロボの掌。
おぉ、こんな感じなんですね。
衝撃はほとんどなく、やや厚い雲に入った感触に近いでしょうか。
セイとレインが「「ヴァンが肉球に食べられた~♪」」と嬉しそうに歌っています。
絵面が可愛かったんですって。
「これが基本の『慰撫』だよ」
「精霊力の量次第では部位欠損も修復できるわ」
僕らが一般的に使う癒しの魔法よりも優秀ですね。
「あ、ヴァンが『癒しの魔法より優秀』って考えてるわ」
「これは精霊術! せめて魔術と比べてくれなきゃね~」
ごもっともですね。
アンセム様が使うという癒しの魔術を僕も教えて頂いておけば良かったですね。
「魔法みたいに、魔法元素と精霊力を混ぜては使えないんですか?」
元々ロボは、魔法を教えて欲しいと僕に弟子入りしました。
しかし魔力は持っておらず精霊力を持っていたので「霊法」という物があると仮定してトレーニングしていたんですが。
「無理だね」
「精霊力自体が魔法元素に近い存在なのよ」
なるほど。
風に水を混ぜるようなものですか。
「ちなみに精霊力を籠めずに陣を描いてもちょっぴりだけ効果があるわ」
「『守護』と『慰撫』にはね。ほ~んのちょっぴりだけどね」
なるほど。陣の形自体に力があるということですか。でしたら僕も覚えておいて損はありませんね。
「じゃ今度は『細工』をやって見せるわ」
「危ないからこれは的なしだよ」
レインが描いた精霊力陣から先の尖った棒、いえ槍と言った方が正しいでしょうか、が飛び出して岩に突き刺さりました。
『細工』は「精霊力を加工する力」でしたね。
「ちなみに『細工』は奥が深いの」
「イメージ次第で槍でも針でも作れるよ」
「ロボの首輪の石も『細工』で加工がしてるわ」
「そのレベルだと陣も複雑になるけどね」
その後ももう少しロボの練習を続けました。
今日は結婚式から数えて五日目です。
特別な新婚生活という事はありませんが、あれからロボはいつもニコニコと楽しそうです。
「ヴァンさーん! また折れたっす! 俺の杖!」
トレーニングに出ていたタロウ達が帰って来ましたね。
「ロップスさんの魔力棒に叩き折られたんす」
「ふん、ただの杖で受け止めるのが悪いんだ」
「それで怪我はないんですか?」
「それが聞いてくれヴァン殿。そのまま頭を殴ったのに、このバカ、無傷なんだ」
「あんな細っちょい棒で俺の魔力ガードは破れんすよ」
『タロウ、強カッタ』
けっこうハードな組手ですね。
怪我くらいなら良いですけど、致命傷はやめて下さいよ。
「大体な、あの魔力量はずるい。私の十倍くらいあるんじゃないか」
確かにタロウの魔力量はいまだに底が知れません。
「そうだね。十倍以上だね」
「だいたい百倍くらいだわ」
え? 分かるんですか?
「セイ、レイン、分かるんですか?」
「「え? みんな分かんないの?」」
「僕らには分かりません。特殊な魔術を使えないと分からないそうです」
「へー、そうなんだ」
「人族は不便なのね」
「えー、と。分かりやすくトカゲマンを一としたら、ヴァンが十だね」
「タロウが……、タロウはちょっと分かりにくいけど、そうね百だわ」
え? 百? 僕の十倍ですか?
それってこの世界で最大の魔力を誇る父ブラムと同等じゃないですか。
ファネル様と同程度、僕の五倍くらいかと思っていました……。
「……ただの人族の百分の一……」
あ、またしてもロップス殿が四つん這いに。
最近よく見る光景ですね。
「ちなみにプックルは五だわ」
「魔獣にしたら破格の多さね」
「……プックルの五分の一……」
ロップス殿が突っ伏してしまいました。
男泣きですね。
「泣いてるトカゲマンには悪いんだけど」
「最後にロボの精霊力の発表があるのよ」
「「なんとタロウの半分! 五十!」」
「狼にまで大差で負けた!!」
驚きですね。
ロボの精霊力は僕の五倍ですか。さすが精霊女王の直系ですね。
そうこうしていると、ガバン! と三階の窓が乱暴に開かれ、タイタニア様が顔を見せました。
ようやく精霊力に余裕が出来て、趣味の盗み聞きに精を出してたタイタニア様です。
どうかしたんでしょうか。
「みんな! ブラムが目を覚ますわ! ホールに集合!」
ようやく起きましたか。
昏き世界の者どもが暗躍するこの状況、さすがの父も驚きますね、きっと。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる