異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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116「イロファスの住民たち」

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 ミウ村を出て今日で七日、あれ以来有翼人たちの襲撃もないまま、明日の夕方にはイロファスの町に着く所で野営です。

「そろそろ炭水化物が食べたいっすね」

 たんすいかぶつ?
 ああ、小麦粉の事ですか。

「切らしてしまったんですからしょうがないじゃないですか」
「ホントは米が良いんすけどね。次の町で小麦粉買えると良いっすねぇ」

 どうでしょうね。
 ホント買えれば良いんですけどね。小麦粉を捏ねるのは僕の数少ない楽しみの一つですから。


 肉と野草だけはたっぷりと入れたスープの夕食後、ロップス殿の新奥義トレーニングにタロウが、ロボの「細工」のトレーニングにプックルが付き合っています。

 僕はウギーさんから色々とお話を伺っています。自分の左手に話し掛けるのにもすっかり慣れて来ましたね。



「だーかーら! 技の名前はマスターしてからで良いっすよ!」
「バカモン! 完成した時に、『出来た……遂に新奥義◯◯◯の完成だ……』と呟けんではないか!」

「……うーん、一理あるっすね。もうすぐマスターできそうだし、今夜は名前考えましょか」
「良い案を頼む」
「やっぱ強くて速いと言えば――」
「ほほぅなるほど。ではこれは――」


 訂正します。
 ロップス殿はトレーニングしてませんでした。

 どうでもいいんですけど、一理あるんでしょうか。






 やはり思った通りの案の定でした。
 イロファスの町に到着しましたが、やはりまともな住民はいない様です。

「ここもか」
「でもなんかちょっと違くないっすか?」
『タロウ殿の言う通りでござる。一応みんなこっちに反応があるでござるよ』

 ミウ村では僕らと目が合うことさえありませんでしたが、イロファスの住民は僕らを認識している様ですね。

 だからと言って何も変わりません。遠巻きにこちらを眺めているだけですから。
 小麦粉を買えないか伺ってみましたが返事もありませんでしたし。

「一緒になって僕らも見つめ返していても埒が明きませんね。日暮れが近いですが、ミウ村同様に通過しましょうか」

 北の出入り口を目指して町を歩きます。


「ねぇヴァンさん」
「どうしました?」
「気付いてないんすか?」
「気付いてますよ」
「そりゃそっすよね。あんなんすもんね」

 タロウが何について言っているかと言うと、前方、村の出入り口付近に佇む十数人のイロファス住民、そして後方の数十人のイロファス住民たちの事です。

「……見送り、じゃぁ、ない……だろうな」
「ない、でしょうね。手に手に物騒な物をお持ちですし」

 剣をお持ちの方もいらっしゃいますが、多くはノコギリやなた、小振りな斧、女性は包丁や果物ナイフが主でしょうか。

 やや荒い息遣いでじりじりと後ろから近付いてくる数十人の住民たち。

「魔力ガードしてたらあんな包丁、なんともなくないっすか?」
「僕もそれを考えたんですが、あの人の群れの中に『神の影』に取り憑かれた者がいないとも限りません」
「うぉっ、それ盲点っすね!」
「混戦乱戦は避けたい所ですね」

 僕ならそうします。
 しかし僕がすぐに思い付く程度ですので、さらに一手先を考えているかも知れません。

「北、出入り口の方を蹴散らして逃げましょう」

 コクリと頷くタロウたち。

「走ります! 殺さない様に加減して下さいね!」
「おぅ!」

 殿しんがりは僕、そして先頭を駆けるロップス殿にわらわらと集まる十数人、思っていたより動きが速いです。

「ふん! これでしばらく眠っていろ!」

 容赦なく住民の一人を殴って吹き飛ばしました。
 さらに数人を立て続けに殴る蹴る、手加減しているとは思いますが、実際全くの容赦なしですね……。

「囲みが切れた! 駆け抜けるぞ!」

 ロップス殿に続いてタロウ達が駆け抜け、僕も続いて駆け抜けましたが、先程ロップス殿が吹き飛ばした住民が早くも立ち上がっていました。

「そのまま走って! 立ち止まるのはマズそうです!」
「何!? もう目覚めたのか!?」

「先に行って下さい! 土の大壁!」

 村の出入り口を塞ぐ様に、幅広で背の高い大壁を作りました。日暮れが近いため魔力量が不安ですが、この程度なら平気です。

 これである程度の時間が稼げるでしょう。

「ヴァンさん! 上! 上!」

 上?

 …………うわぁぁぁ!

 土の大壁を早くも乗り越えた数人の男たちが僕へ向かって飛び降りて来ていました。

 手刀に魔力を籠め、落下しながら振り下ろされた剣を弾き、別の住民が横薙ぎに打ち払った斧を肘で受けてから距離を取ります。

 六人の男性が土壁のこちら側で僕と対峙しています。
 そしてその後ろ、土の大壁をドカンドカンと向こう側から殴りつける音。

 僕の背三つ分程度の高さにさらに厚みを持たせた大壁です。普通の人間が簡単によじ登れる高さでもありませんが、簡単に破壊される強度でもありません。

 その筈だったんですけどね。

 ガラガラと崩れ去る土の大壁。
 僕の自信も崩れ去りました、なんて言ってる場合じゃありませんね。

 動きも力も尋常ではありません。
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