異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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132「これで終わりだ」

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『……プックル、思イ、出シタ……』
『……………………思イ、出シタク……無カッタ……』

「プックルー!」
「嘘だと言ってくれぇ!」

 パンチョ兄ちゃんとロップス殿が幾度も結界を斬りつけながら叫びます。

 僕も混ざりたいくらいですが、この結界の魔術陣を探るのが先です。

『トカゲマンの魔力を借りられないのか?』
「可能ですが、ロップス殿の戦い方には満タンの魔力が必要です。結界が解けても、今イギーさんに太刀打ちできる可能性があるのはロップス殿だけですから」


「ギーの世代の同胞よ。なんて名前なんだぞ?」
『……プックル、名前ナンテ、無カッタ』
「そうか。お前たちのときは体があったのはギーだけだったからな。それも仕方ないんだぞ」

 やはりプックルの中には神の影が居たんですか。信じたくありませんが、どうやら確定のようですね。

「ではプックルと呼ぶんだぞ」
『……ソレデ、良イ』

「プックル、早速頼みたいんだぞ」

 タロウの髪を掴んだ右手を掲げ、再びバチバチと右手を放電させたイギーさん。

「ぐ……、ぐ、ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「生意気にも魔力で防ごうとしたのか。でも甘いんだぞ」

「ヴァン殿! タロウ殿が……、タロウ殿が!」

 ロボが泣きながら僕の服を掴みますが、まだ巧妙に隠された魔術陣を見つけられません。 

 もっと深く集中しましょう。
 僕に読み解ける魔術陣だと良いんですが……。


「さぁ、こいつだ。同化しろ」

 グッタリしたタロウを掲げ上げたイギーさんがそう言います。

『……完全ニ、カ?』
「完全にだ。こいつさえ乗っ取れば勝ちだ。同化を解く必要もないんだぞ」

 以前パンチョ兄ちゃんが乗っ取られた時、あの時は完全な同化ではなかったという事ですか。完全な同化の場合は、先程の大掛かりな魔術なしでは分離できない、と。



『…………プックル、シナイ。シタク、ナイ』

「よう言った! 神の影かなんか知らんが、我のプックルは、やはりプックルなのだ!」
「だーはははは! イギーめ思惑が外れよったわ! バーカバーカ!」


「…………黙れ」

 騒ぎ立てていた二人が思わず口をつぐむほど、ゾッとするほどの真剣な声音。

「お前の希望なんか知らないんだぞ。やれ」

『………………プックル、ヤラナイ』

 震えるような声のプックル。それでも拒み続けています。

「……そうか、分かったんだぞ」

 おもむろに神の影に向けて再び左掌を開くイギーさん。

「もう頼まない。力づくでさせるんだぞ」

 イギーさんが左掌を閉じます。


『メェ……、ギ、ギギャ…………』

 左掌が閉じられると共に、神の影が苦悶の声を上げる中、ジジジッと音を立てて結界が一瞬揺らぎました。

「……な!? ……ヴァンか! クソっ!」


 一瞬、本当に一瞬でしたが、結界の魔術陣に干渉できました。
 しかし……

 ……くっ、やはりイギーさんの対応が早いです。
 僕の干渉を避けるため、魔術陣の構成を僅かに弄り始めたようです。

 しかし、とにかく魔術陣を確認しました。
 内容はなんとか僕にも読み解けるものです。タイタニア様から頂いた精霊術のメモを勉強していたお陰ですね。
 以前の僕なら魔術陣への理解不足からきっと読み解けなかったでしょう。

 ここからはイギーさんとの追いかけっこ、イギーさんは結界を維持できるように魔術陣の改変、僕は結界の破壊を目指して魔術陣の改変、くっ、魔力の余剰さえあればここからは僕に有利な追いかけっこだったんですが!

「抵抗するな! 追い付かれるんだぞ!」
『……ギギャァ、ァ、アァ……メェェ……タ、ロ、ウ……』

 ガンガンと結界を叩きつけるパンチョ兄ちゃんとロップス殿が声を荒げてプックルを応援しています。
「プックル踏ん張れ! すぐに助けてやる!」
「ヴァン殿! まだか! まだ解けんのか!?」

 ロボも僕を応援してくれていますが、少し分が悪いです。このままでは追いつけません。更に集中しなければ。

 もっと深く魔力の操作に集中です。
 少ない魔力は集中力でカバーです。



 不意に、神の影の苦悶の声が途切れました。

「……手こずらされたが、掌握したんだぞ」

 大人しく黙る神の影に向けて、イギーさんが右手に掴んだタロウを掲げ上げました。

「さぁ、同化しろ」

 その声に反応した神の影がタロウへとゆっくり近付いていき、イギーさんがこちらに顔を向け、ニヤリと微笑みました。

 く、あと少しなんですが…………

「そこで黙って見てるが良いんだぞ」

 フンと鼻で笑い、「これで終わりだ」そう言ったイギーさんが視線を元に戻すと共に、急激に速度を上げた神の影がヌルッと口の中にその身を捻じ込みました。

 イギーさんの・・・・・・口の中へと。


「…………ぉごぉぉお――」

 ドサリとタロウを落とし、両手で神の影を掴み出そうと悶えるイギーさん。

 『もしかしたら』の期待は、ほんの僅かですが、確かにしていました。
 強制的に操られたとしても、神の影だったとしても、元はあのプックルですから。

 ゴクン、と神の影を飲み下したイギーさんが喚き散らして言います。

「バカが! ボクじゃない! こいつを乗っ取れって言ったんだぞ!」

 地に伏したタロウを指差して怒鳴ります。

「ふざけてないで早く出るんだぞ! やりなお――――!?」
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