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029 最強の護衛?
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「どうなさったんですか、アッシュ様」
自分でも分かるほど眉間にシワを寄せながら、公爵に尋ねる。
すると彼はなぜか私に手を差し伸べた。
私は背中に張り付くルカを左手で押さえつつ、右手で公爵の手を取り、立ち上がる。
「護衛だ」
「は? 護衛って」
今この人、何て言ったのかしら。
護衛? 護衛って、あの護衛よね。
えっと、私たちに誰か護衛を付けるんじゃなくて自分が護衛だってこと?
確かに公爵は剣の腕に優れており、魔物などの討伐に参加することもあるのは知っているけど。
でも貴族なんだし、普通は自分に護衛を付けるべきじゃないの?
「えっと……それは一緒に出かけるということですか?」
「護衛だからな」
意味不明だ。
そもそもこの人と、マトモに会話って成立するのかしら。
頭痛くなりそうだわ。
ビオラはこんな人のどこが良かったのかしら。
何か言いたげな秘書が必死に顔で訴えていたが、もう全部気にしないことにした。
私は未だに顔を見せないルカの手を引く。
「アッシュ様……、お父様が一緒に護衛として街へ行って下さるみたいよ、ルカ」
「はいでしゅ」
「大丈夫。怖い人はお父様がいれば絶対に近づかないわ。それに顔は怖くとも、お父様は怖い人ではないのよ」
「ビオラ、それはどういう意味だ」
うん、黙ってて。
私はそんなことを思いつつ公爵を睨むと、通じたのか彼は少し残念そうな顔をしながら口を閉じる。
今はルカを説得する方が大変なのよ。
急について行くって決めたのはそっちなんだから、おとなしくしていてちょうだい。
「ビオラ……守れりゅ?」
「ええ。そうね。あなたのお父様はすごく強い方なのよ」
どこか決意したように、私の横に立つ。
そして伏し目がちにも、その青い瞳は公爵を見つめていた。
「いっしょに行くでしゅ」
「ああ。では馬車に乗ろうか」
私たちは公爵のエスコートで馬車へと乗り込んだ。
初めは初めての父親との接触にびくびくしていたルカも、馬車が走り始め周りの景色が変わりだすともう気にもならなくなったようだった。
そういうところはやっぱり子どもよね。
お行儀よく座りながらも、窓から見える外が見たいのか体を一生懸命揺らしながら伸ばしている。
「ルカ、外が見えないのなら私の膝の上に座る?」
「ふぇ、や、えっと」
隣に座るルカにそう声をかけると、そわそわしながらもその顔は満更でもなさそうだ。
しかしルカに手を伸ばそうとしたその瞬間、真正面に座る公爵が手を伸ばしてルカを抱き上げた。
私もルカもいきなりの彼の行動に意味が分からず、固まってしまう。
それでも気にすることない公爵は、自分の膝の上にちょこんとルカを座らせた。
「えっと、アッシュ様?」
「君の膝の上だと不便だろう」
「いえ、不便ではないですが」
むしろルカが顔引きつらせて固まってるじゃない。
状況分かってないの?
もう、なんなの今日は。この人天然か何かだっけ。
そんな無表情のままルカを奪っていかないでよ。
「だがビオラ、君の足は細すぎてルカが乗ったら折れてしまいそうだ」
「えええ」
「それダメでしゅ!」
「だろう?」
「折れませんてば」
「ダメでしゅ」
「もぅ」
いや、うん、この足が細いって自覚はあるけどさぁ。
別にルカが乗ったくらいでは折れないと思うわよ。
だってルカも軽いし。
私に気遣っているのか、ルカをとられるのが嫌なのか、はたまた対抗心なのか。
全然よく分からぬまま、馬車は進み街へとたどり着いた。
自分でも分かるほど眉間にシワを寄せながら、公爵に尋ねる。
すると彼はなぜか私に手を差し伸べた。
私は背中に張り付くルカを左手で押さえつつ、右手で公爵の手を取り、立ち上がる。
「護衛だ」
「は? 護衛って」
今この人、何て言ったのかしら。
護衛? 護衛って、あの護衛よね。
えっと、私たちに誰か護衛を付けるんじゃなくて自分が護衛だってこと?
確かに公爵は剣の腕に優れており、魔物などの討伐に参加することもあるのは知っているけど。
でも貴族なんだし、普通は自分に護衛を付けるべきじゃないの?
「えっと……それは一緒に出かけるということですか?」
「護衛だからな」
意味不明だ。
そもそもこの人と、マトモに会話って成立するのかしら。
頭痛くなりそうだわ。
ビオラはこんな人のどこが良かったのかしら。
何か言いたげな秘書が必死に顔で訴えていたが、もう全部気にしないことにした。
私は未だに顔を見せないルカの手を引く。
「アッシュ様……、お父様が一緒に護衛として街へ行って下さるみたいよ、ルカ」
「はいでしゅ」
「大丈夫。怖い人はお父様がいれば絶対に近づかないわ。それに顔は怖くとも、お父様は怖い人ではないのよ」
「ビオラ、それはどういう意味だ」
うん、黙ってて。
私はそんなことを思いつつ公爵を睨むと、通じたのか彼は少し残念そうな顔をしながら口を閉じる。
今はルカを説得する方が大変なのよ。
急について行くって決めたのはそっちなんだから、おとなしくしていてちょうだい。
「ビオラ……守れりゅ?」
「ええ。そうね。あなたのお父様はすごく強い方なのよ」
どこか決意したように、私の横に立つ。
そして伏し目がちにも、その青い瞳は公爵を見つめていた。
「いっしょに行くでしゅ」
「ああ。では馬車に乗ろうか」
私たちは公爵のエスコートで馬車へと乗り込んだ。
初めは初めての父親との接触にびくびくしていたルカも、馬車が走り始め周りの景色が変わりだすともう気にもならなくなったようだった。
そういうところはやっぱり子どもよね。
お行儀よく座りながらも、窓から見える外が見たいのか体を一生懸命揺らしながら伸ばしている。
「ルカ、外が見えないのなら私の膝の上に座る?」
「ふぇ、や、えっと」
隣に座るルカにそう声をかけると、そわそわしながらもその顔は満更でもなさそうだ。
しかしルカに手を伸ばそうとしたその瞬間、真正面に座る公爵が手を伸ばしてルカを抱き上げた。
私もルカもいきなりの彼の行動に意味が分からず、固まってしまう。
それでも気にすることない公爵は、自分の膝の上にちょこんとルカを座らせた。
「えっと、アッシュ様?」
「君の膝の上だと不便だろう」
「いえ、不便ではないですが」
むしろルカが顔引きつらせて固まってるじゃない。
状況分かってないの?
もう、なんなの今日は。この人天然か何かだっけ。
そんな無表情のままルカを奪っていかないでよ。
「だがビオラ、君の足は細すぎてルカが乗ったら折れてしまいそうだ」
「えええ」
「それダメでしゅ!」
「だろう?」
「折れませんてば」
「ダメでしゅ」
「もぅ」
いや、うん、この足が細いって自覚はあるけどさぁ。
別にルカが乗ったくらいでは折れないと思うわよ。
だってルカも軽いし。
私に気遣っているのか、ルカをとられるのが嫌なのか、はたまた対抗心なのか。
全然よく分からぬまま、馬車は進み街へとたどり着いた。
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