愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
65 / 78

064 今日この頃

しおりを挟む
「え?」
「あー、いや、ほら……」

 ちょっと何言っているの。今一番言っちゃいけない言葉じゃない。
 変に思われちゃうし。

「ビオラ様は……」
「違うの。好きじゃないとか、そういうんじゃないの。好きだったのよ、ちゃんと好きだったの。だから私から結婚をお願いしたの。だけどほら、好きと愛は違うのかなって」

 あああ、もう。何言ってるの、私。自分で言っていて、全然意味分からないし。
 どこまで墓穴掘れば気が済むのよ。

「好きと愛の違いですかぁ。難しいですね」

 フィリアも私の言葉に腕組みをして考え込む。
 本当にやめて。深い意味なんてないのよぉぉぉぉぉぉぉぉ。

「好きは一方的に一人で出来ますけど、愛は双方が思い合わないとダメみたいな感じですかねぇ」
「双方……たしかに」

 そういえば、聞いたことはなかったけどアッシュはどう思っているんだろう。
 
 子どもの頃の約束なんてきっと覚えてもいないだろうし。
 まぁ、だいたいあんなものは無効よね。

 だけど今はどうなんだろう。
 家族でいたいって思ってくれるってことは、少なからず好意はあるわけよね。

 嫌いだったらあの人すぐ顔に出しそうだし。でもそれは、好きと言えるのかな。人としてとかじゃなくて、恋愛として……みたいな。
 
「ビオラ様は公爵様のことをどう思っていらっしゃるんですか? もちろん家族として好きという以外に」
「えええ。どうなのかしら。確かに、あの方に何かあったら心配だし。まぁ、たまに可愛いなって思うことはあるけども。でも、いないと死んじゃうとか、この人じゃなきゃダメとか。絶対離したくないとか……誰にも渡したくないとかどうなんだろう」

 少なくとも、私がビオラになってからは、でしかないけど。
 他の男性がいいなとか、カッコいいなとか惹かれたことはないのよね。

 なんとなくもう結婚しちゃっている身だし。
 初対面の印象はもう最悪だったけど、今はそんなことはない。

 笑ってくれたら、なんとなく嬉しいし。傍にいるのだって、落ち着く。あの大嫌いな元妻になんて絶対に返却もしたくはないけれど……。

 でもさ。そういうのって家族でもそんな感じじゃないのかな。それが普通っていうか。
 あー、でもそういうわけでもないのか。
 考えたら、ビオラになる前は全然そうじゃなかったっけ。
 
 両親はいつも喧嘩ばかりだったし、なんなら当たり散らされたこともあったわね。

 弟は溺愛されていたけど、私はそうじゃなかった。
 家族だから一緒にいても居心地がいいとか、幸せだとか、無条件であるわけではないんだった。

 だからこそ、今は私も公爵も協力して、ルカのために居心地のいい環境を作るために努力している。
 そう考えると、もし相手があの人じゃなかったら、私はそこまで頑張れたのかな。

「ビオラ様、わたし考えたんですが、可愛いは重要かと思います!」
「え、そこ⁉」
「はい。何となく見ていてこの人可愛いなって思っていると、そのうちハマってしまうものなんですよ」
「そんなものなの?」
「はい。そんなものなのです。ほんの少し可愛いと思って見ているうちにだんだんそれが加速していって、最後は沼にハマるというのが一連の流れかと」
「沼……」

 どこかの推し活のような話ね。恋愛ってそういうものなのかしら。

 半ば力説するフィリアにおされ、なんとなく一ミリぐらいは私は彼のことが好きなのかもしれないと気づいた今日この頃でした。
 
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
幼い頃から天の声が聞こえるシラク公爵の娘であるミレーヌ。 この天の声にはいろいろと助けられていた。父親の命を救ってくれたのもこの天の声。 そして、進学に向けて騎士科か魔導科を選択しなければならなくなったとき、助言をしてくれたのも天の声。 ミレーヌはこの天の声に従い、騎士科を選ぶことにした。 なぜなら、魔導科を選ぶと、皇子の婚約者という立派な役割がもれなくついてきてしまうからだ。 ※完結しました。新年早々、クスっとしていただけたら幸いです。軽くお読みください。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

公爵子息の母親になりました(仮)

綾崎オトイ
恋愛
幼い頃に両親を亡くした伯爵令嬢のエルシーは、伯爵位と領地を国に返して修道院に行こうと思っていた しかしそのタイミングで子持ちの公爵ディアンから、結婚の話を持ちかけられる 一人息子アスルの母親になってくれる女性を探していて、公爵夫人としての振る舞いは必要ない、自分への接触も必要最低限でいい そんなディアンの言葉通りに結婚を受けいれたエルシーは自分の役割を果たし息子のアスルに全力の愛を注いでいく 「私の可愛い子。たった一人の私の家族、大好きよ」 「エルシー! 僕も大好きだよ!」 「彼女、私を避けすぎじゃないか?」 「公爵様が言ったことを忠実に守っているだけじゃないですか」

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ
恋愛
片想いしていた彼と結婚をして幸せになれると思っていたけど、旦那様は女性嫌いで私とも話そうとしない。 会うのはパーティーに参加する時くらい。 そんな日々が3年続き、この生活に耐えられなくなって離婚を切り出す。そうすれば、考える素振りすらせず離婚届にサインをされる。 悲しくて泣きそうになったその日の夜、旦那に珍しく部屋に呼ばれる。 お茶をしようと言われ、無言の時間を過ごしていると、旦那様が急に倒れられる。 目を覚ませば私の事を愛していると言ってきてーーー。 旦那様は一体どうなってしまったの?

処理中です...