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可愛い娘
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コンコン。
「あの、奥様。大きな樽がライモンド様から届いたのですが」
困ったような顔でメイドが言ってきた。
「樽?何が入っているか言っていた?」
「それが、とても大事な物なので丁重に扱うようにと言付かってはおりますが、それ以上の事は何も……」
そう言ってライモンドからのカードを見せられる。確かにライモンドの筆跡だった。
そこへちょうどジルベルトが帰宅してきた。
「どうしたんです?」
「それがね、ライモンドから樽が届けられたそうなのだけれど、中身が何かはわからないらしくて」
「ライからなのは間違いないのですか?」
「ええ、直筆のサインがあったわ」
「なるほど、では私が開けますよ」
「そうね。お願いするわね」
「確かに大きな樽ですね。騎士団の厨房にあるのと同じようだ」
「じゃあ、何か食べ物が入っているのかしら?」
「おや?」
樽をよく見ると上に隙間が空いている。ジルベルトがそっと蓋を開けてみる。
「……なんでだ?」
「なあに?何が入っていたの?」
覗き込むと
「まあ、これは可愛すぎて食べられないわね」
その時
「今帰った」
「たっだいまー」
旦那様とライモンドが帰ってきた。
「ライ、なんであんな物で?」
「ん?ああ、届いたか?」
「何が届いたんだ?」
「うふふ、おかえりなさい。ねえ、ちょっと見て」
私は不思議そうな顔をしている旦那様の手を引き、樽を覗くように促した。
「?」
「おまえも来てみろ」
ジルベルトがライモンドを連れてくる。
「これは……」
中を見た旦那様が眉を下げて柔らかい表情になった。
「ハハハ、揺られてるうちに気持ち良くなっちまったんだな」
樽の中にはあどけない顔で眠っているアンジェリーナがいた。
「どれ、出してやるか」
「おい、そっとだぞ。せっかく寝ているんだから目を覚まさないようにしてやれ」
「わかってるって」
「お前のわかってるはイマイチ信用ならんからな」
兄弟でなんやかんやと言いながらも無事に、アンジェリーナをベッドに運ぶ。
四人で食事をとりながら、ライモンドから樽に入った経緯を聞く。
「まあ、大事なくて何よりだ……予想外に可愛らしい姿も見れたしな」
旦那様が嬉しそうに言った。
「父上は怒るかと思ってたよ」
ライモンドが豪快に肉を頬張りながら言う。
「口に入れるか喋るかどちらかにしろ。いや、アンジェリーナの寝顔を見る機会なんてもうないと思っていたからな。いいものを見た」
「ふふ、そうよねえ。やっぱりまだまだ手放したくないわあ」
「アンジーは誰か見つけたのか?」
ジルベルトがライモンドに聞くと、ライモンドは難しい顔をした。
「まだ、確定ではないんだが。ルドルフォ副団長に興味を持ったみたいだ」
「何!?」
旦那様とジルベルトの声が重なる。
「でな、ここからがちと厄介なんだが……ルドルフォ副団長もアンジーを気にしている節があるんだよ」
「あの無自覚女たらしが?」
「どっちもイケる口か?」
「あらあら」
「女だと気付かれたとかではないのか?」
「それは大丈夫だと思う。だけど、華奢だからもっと食べさせろって。アンジーが倒れた時も副団長自ら抱いて医務室に連れて行ったり、そのまま医務室に居座ろうとしたり。兎に角今までの副団長ではしなかったような行動を取るんだよ」
「あの、人に興味がなさそうな男がか?」
「そう、しかもだ。これは帰る前に団長から聞いたんだが、フィエロ殿下の執務室で打ち合わせした時、団長を副団長が迎えに来ただろ。その時にアンジーを凄く気にしていたらしいんだ」
「これは厄介なことになりそうな……」
「そうかしら?なんだか素敵なことになりそうだけれど?」
「母上は、女たらしで有名なあの男が相手でもいいと?」
「あら、彼は別にたらし込んでいるわけではないわよ。周りがほっとかないだけで。うちにだってそんなのが二人もいるじゃない」
「それ、ディア姉も言ってた。三人の貴公子ってやつだろ。その時初めて知ったけど」
「あら、ディアナもわかっているのね」
ジルベルトがキョトンとしている。
「なんだ?三人の貴公子って」
「だよなあ、知らないのは本人たちだけってやつだな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アンジェロを送って行ってやろうと医務室へ行ったがもう誰も居なかった。
「ジャン。アンジェロは帰ったのか?」
「ええ、そうよ。もう意識もしっかりしていたし、明日からまた普通に学園後に来るって言ってたわ」
「明日くらいは休ませた方がいいんじゃないのか?」
「ただの貧血でそんな大事にしないの。本人が来ると言うんだから好きにさせてあげなさいよ」
「しかし……」
「ねえ、ドルフ。この際だから聞くけど、あなたはアンジェロに対してどういう感情を持っているのかしら?」
「どういうって……」
「自分でわからない?明らかにあの子に対して過保護になっているわ。何か特別な感情があるの?」
「……わからない。ただ、彼を見ると何故か心がざわつく。彼と会う少し前に、見かけたある人に重なって見えてしまう。結果、過保護になっているのかもしれない」
「ある人って?」
「……ライモンドの妹さんだ」
「え?ライの妹さんってアンジェリーナ嬢?会ったことがあるの?」
「会ったというか、一方的に見たというくらいだ。ジャンが遠征中だった時、団長をフィエロ殿下の執務室まで迎えに行ったら、たまたま見かけたんだ。向こうは気付いていない」
「一目惚れ?」
「そう、なんだろうか。わからない、初めての感覚で。心臓を鷲掴みされたような衝撃を受けた。王子と王女に本を読んであげているその姿が目に入った途端、女神がいると思った。アンジェロを見た時も似たような衝撃を受けた。どことなく似ているんだ」
「ドルフ……」
「それ以来、彼の事が気になって仕方ない。なあ、俺はどうしたらいい?」
ああ、これはなかなか複雑な問題だわ。アタシはどう答えたらいいものか悩んだのだった。
「あの、奥様。大きな樽がライモンド様から届いたのですが」
困ったような顔でメイドが言ってきた。
「樽?何が入っているか言っていた?」
「それが、とても大事な物なので丁重に扱うようにと言付かってはおりますが、それ以上の事は何も……」
そう言ってライモンドからのカードを見せられる。確かにライモンドの筆跡だった。
そこへちょうどジルベルトが帰宅してきた。
「どうしたんです?」
「それがね、ライモンドから樽が届けられたそうなのだけれど、中身が何かはわからないらしくて」
「ライからなのは間違いないのですか?」
「ええ、直筆のサインがあったわ」
「なるほど、では私が開けますよ」
「そうね。お願いするわね」
「確かに大きな樽ですね。騎士団の厨房にあるのと同じようだ」
「じゃあ、何か食べ物が入っているのかしら?」
「おや?」
樽をよく見ると上に隙間が空いている。ジルベルトがそっと蓋を開けてみる。
「……なんでだ?」
「なあに?何が入っていたの?」
覗き込むと
「まあ、これは可愛すぎて食べられないわね」
その時
「今帰った」
「たっだいまー」
旦那様とライモンドが帰ってきた。
「ライ、なんであんな物で?」
「ん?ああ、届いたか?」
「何が届いたんだ?」
「うふふ、おかえりなさい。ねえ、ちょっと見て」
私は不思議そうな顔をしている旦那様の手を引き、樽を覗くように促した。
「?」
「おまえも来てみろ」
ジルベルトがライモンドを連れてくる。
「これは……」
中を見た旦那様が眉を下げて柔らかい表情になった。
「ハハハ、揺られてるうちに気持ち良くなっちまったんだな」
樽の中にはあどけない顔で眠っているアンジェリーナがいた。
「どれ、出してやるか」
「おい、そっとだぞ。せっかく寝ているんだから目を覚まさないようにしてやれ」
「わかってるって」
「お前のわかってるはイマイチ信用ならんからな」
兄弟でなんやかんやと言いながらも無事に、アンジェリーナをベッドに運ぶ。
四人で食事をとりながら、ライモンドから樽に入った経緯を聞く。
「まあ、大事なくて何よりだ……予想外に可愛らしい姿も見れたしな」
旦那様が嬉しそうに言った。
「父上は怒るかと思ってたよ」
ライモンドが豪快に肉を頬張りながら言う。
「口に入れるか喋るかどちらかにしろ。いや、アンジェリーナの寝顔を見る機会なんてもうないと思っていたからな。いいものを見た」
「ふふ、そうよねえ。やっぱりまだまだ手放したくないわあ」
「アンジーは誰か見つけたのか?」
ジルベルトがライモンドに聞くと、ライモンドは難しい顔をした。
「まだ、確定ではないんだが。ルドルフォ副団長に興味を持ったみたいだ」
「何!?」
旦那様とジルベルトの声が重なる。
「でな、ここからがちと厄介なんだが……ルドルフォ副団長もアンジーを気にしている節があるんだよ」
「あの無自覚女たらしが?」
「どっちもイケる口か?」
「あらあら」
「女だと気付かれたとかではないのか?」
「それは大丈夫だと思う。だけど、華奢だからもっと食べさせろって。アンジーが倒れた時も副団長自ら抱いて医務室に連れて行ったり、そのまま医務室に居座ろうとしたり。兎に角今までの副団長ではしなかったような行動を取るんだよ」
「あの、人に興味がなさそうな男がか?」
「そう、しかもだ。これは帰る前に団長から聞いたんだが、フィエロ殿下の執務室で打ち合わせした時、団長を副団長が迎えに来ただろ。その時にアンジーを凄く気にしていたらしいんだ」
「これは厄介なことになりそうな……」
「そうかしら?なんだか素敵なことになりそうだけれど?」
「母上は、女たらしで有名なあの男が相手でもいいと?」
「あら、彼は別にたらし込んでいるわけではないわよ。周りがほっとかないだけで。うちにだってそんなのが二人もいるじゃない」
「それ、ディア姉も言ってた。三人の貴公子ってやつだろ。その時初めて知ったけど」
「あら、ディアナもわかっているのね」
ジルベルトがキョトンとしている。
「なんだ?三人の貴公子って」
「だよなあ、知らないのは本人たちだけってやつだな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アンジェロを送って行ってやろうと医務室へ行ったがもう誰も居なかった。
「ジャン。アンジェロは帰ったのか?」
「ええ、そうよ。もう意識もしっかりしていたし、明日からまた普通に学園後に来るって言ってたわ」
「明日くらいは休ませた方がいいんじゃないのか?」
「ただの貧血でそんな大事にしないの。本人が来ると言うんだから好きにさせてあげなさいよ」
「しかし……」
「ねえ、ドルフ。この際だから聞くけど、あなたはアンジェロに対してどういう感情を持っているのかしら?」
「どういうって……」
「自分でわからない?明らかにあの子に対して過保護になっているわ。何か特別な感情があるの?」
「……わからない。ただ、彼を見ると何故か心がざわつく。彼と会う少し前に、見かけたある人に重なって見えてしまう。結果、過保護になっているのかもしれない」
「ある人って?」
「……ライモンドの妹さんだ」
「え?ライの妹さんってアンジェリーナ嬢?会ったことがあるの?」
「会ったというか、一方的に見たというくらいだ。ジャンが遠征中だった時、団長をフィエロ殿下の執務室まで迎えに行ったら、たまたま見かけたんだ。向こうは気付いていない」
「一目惚れ?」
「そう、なんだろうか。わからない、初めての感覚で。心臓を鷲掴みされたような衝撃を受けた。王子と王女に本を読んであげているその姿が目に入った途端、女神がいると思った。アンジェロを見た時も似たような衝撃を受けた。どことなく似ているんだ」
「ドルフ……」
「それ以来、彼の事が気になって仕方ない。なあ、俺はどうしたらいい?」
ああ、これはなかなか複雑な問題だわ。アタシはどう答えたらいいものか悩んだのだった。
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