王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

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はあ、殴りたい

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題名を少し変えました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 イラッとした。
アンジェロの腕に女の腕が巻き付いた時、それを黙って受け入れたアンジェロを見た時。明らかに嫉妬したのだ……女の方に。
そんな自分に驚いて更に苛立ち、女たちにぞんざいな態度を取り、自分より背の低いアンジェロの歩幅も考えず引っ張り歩いてしまった。

俺は一体どうしたいのだろう、この女神に似た女神ではない男を。
最初は確かに女神に似ているから気になったのだろう。じゃあ、今は?
あれから女神を見る事はない。それがこのような感情に結びついているのか。それともこの男自身に特別な感情を持ってしまったのか。

苛立ち半分、愛しさ半分。そんな感情で思わず抱きしめてしまった。


 団長の執務室へ急いで向かう。
今、俺の心臓はあり得ない程に高鳴っている。それを鎮めるためにも早く団長の元へ向かわなければ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 久しぶりに学園へ。全てを託した生徒会の様子はどうかと確認するためだ。
新しい生徒会長は、前生徒会長とは全く違い、熱心に仕事をするタイプで確認に余念がない。まあ、お手本がいないのだから、慎重になるのも無理はないだろう。
そのお手本にならない全生徒会長は、何故だか今日もいる。

「アンジェリーナ、明日の休みに王城に来い」
「申し訳ありません。先約がございます」
「じゃあ、それを断れ」
「それは出来ません。大事な約束ですので」
「どうせまた子供院絡みだろう。俺の方が大事だろ」
「カッシオ殿下こそ。私よりも大事な方がおりますでしょ」
「なんだ?嫉妬か?」
「いいえ、喜ばしい事ですわ。ですからその方と大事なお休みは過ごされたらいかかですか?」
「お前は婚約者だろ。婚約者を優先させるのは当然の事だ」
「ですから何度も申し上げておりますが、婚約者ではございません」

相も変わらずのやり取りをする。この時間が勿体ない。
早く騎士団に行きたいのに。

ルドルフォ副団長に抱きしめられてから三日、私は騎士団に行けていない。抱きしめられた時の胸の高鳴りを、会えない事に寂しさを感じている今を、彼を思い出し苦しくなる心を、どうしてこんな気持ちになるのかを、ルドルフォ副団長に会って確かめたいと思っているのに。
彼の事ばかり考えてしまうこの気持ちの正体を知りたい、そう思っているのに。

このクソ王子のせいで行けていない。
このなんの身にもならない会話のやり取りが邪魔で仕事が進まない。早く彼女にクソ王子を呼びに来てもらいたい。そう思っていたのに全く来ない。

「嫉妬するなんて可愛いとこあるじゃないか?」
どうして嫉妬などと都合のいい解釈をすることが出来るんだろう?そのめでたい頭を思いっきりぶん殴りたい。

「安心しろ。あの女とはもう別れた。これからはお前一筋になってやる」
「は?別れた?何で?」
思わず言葉遣いが荒くなる。
「母上がな、自分よりも大事な女を作られるのは女にとっては身を裂かれるように辛い事なのだと言っていてな。自分の存在のせいで、王妃にそういう思いをさせていたからって」

はあああ、何を言っているんだろう、この親子は。
そもそも王族であれば側妃がいるのは当たり前だ。しかもこのクソ王子の母親は、国王が自ら見出してきたわけではない。

王妃が一時重い病にかかってしまい、とても王の相手が出来る状態ではない事を気に病んだ王妃自身が提案した事で、数人の候補の中からたまたま選ばれただけなのだ。

現に、王妃の病が完治してからは全く相手にされておらず、離宮から王城へ呼び出されることもない。まあ、国王に相手にされていた頃の横暴さに国王含め皆が、嫌気が差して離宮へ押し込めたのだが。
それを、何を勘違いしているんだか……

私が黙った事で、感激してるとでも思ったのかクソ王子がニヤリとする。
「そんなに嬉しいか?ならばもっと早くにそうしてやれば良かったな」
違うわ、ボケ!
これは一刻も早く、正式な婚約者を作らなければ。このままだと本当に婚約者にさせられてしまう。

私はクソ王子の事を完全に無視して、仕事を再開させるのだった。


「そういう格好してると、ああ、妹いたんだったって再認識するな」
ライ兄様が私のドレス姿を見て、安心したような顔をする。
「確かに。ライ兄様と会ってる時は騎士団の服着てる時ばかりだものね」

「私はどちらも見てるが、どちらでもアンジーの可愛さに変わりはない」
隣に座るジル兄様は、無表情ながら私の頭を優しく撫でている。

「ジル兄の目は節穴に違いないな。どっちの姿も可愛いとかないわ。騎士服で生き生きとした目で剣を振るっているアンジーを見てないから」
「見たぞ。稽古姿を何回か見に行っているが、やっぱり可愛かったぞ」
「やっぱ節穴」
「ふふ、ジル兄様大好き」
などと、ちょっとバカっぽい会話をしているうちに王城へ到着する。

 今日は進捗状況を報告がてら、皆でお茶をすることになっているのだ。
王城にいくつかある中庭のうちの一つに席を設けている。この中庭ならば、国王たちの居住している区域から大きく離れている上に、少し小さめに出来ているのでめったに人が来ない。

私たちが到着してすぐに、ルイージ団長とジャンヌ副団長が来た。
「アンジー、元気だった?しばらく会えなくて寂しかったわよ」
「ジャンヌ副団長、私もです」
そう言って二人で抱き合う。
そこへルイージ団長が来て
「俺も寂しかったぞお」
と言って私とジャンヌ副団長をまとめて抱きしめた。

「ちょっと、苦しいわよ」
「あはは、ですね」
三人で笑い合っていると
「楽しそうだね、私も交ざっていいかな?」
そう言ってフィエロ殿下がディアナ姉様をエスコートしてやって来た。

そして、何故かその後ろにはルドルフォ副団長がいたのだった。
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