悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

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王子の秘密

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 父上が謁見の間を出るのを見送ってから側妃を見れば、もう一目瞭然、これ以上俺が何かを言う事も必要ないように見えた。

「側妃殿、あなたは間違えたんだ。父上の不器用ではあったが、確かに存在していた愛情を見逃した。自分がのし上がる事に重きを置いてしまった。愛し続けていれば届いたかもしれないのに」
涙を流しながらこちらに顔だけ向ける側妃。

「しかも、その罪を暴く証拠となったのが、父上からの愛情の欠片だったとはな。悲しい人だな」
その言葉が決定打になった側妃は、突っ伏した状態になり、とうとう号泣した。

「王妃殺害、及び第一王子殺害教唆未遂で貴方を貴族専用の牢に入れる事にする。後にしっかりと裁かれることになるまでは、そちらで過ごしていただく。バイアルドの事は心配しなくていい。最近はあの聖女もどきとも縁を切り、私の右腕になるのだと勉学に励んでいるよ。このまま私が鍛え上げてみせる」

自分の息子の行く末を案じていたのだろう。俺の言葉を聞いて、薄く笑みを浮かべた側妃は大人しく、騎士に連れられて行った。

「はあ、終わったな」
自分の執務室に戻り、用意された茶を飲む。
「なんともやるせない幕引きでしたね」
チェーザレも一緒にソファに座る。

「そうだな。もっと喚き散らすのかと思っていたよ。あの人はのし上がる事を優先させなければ幸せになれたのかもしれないな」
「そうですね。まあ、喚き散らされるのはこれからですよ、きっと」
「はは、そうだな」


1年生もあと3日で終了となった。

「あと3日だな」
「そうですね」
庭に吹く風が少し暑い。

「ドレス、ありがとうございました」
「気に入ったか?」
「はい、とても。でもちょっと豪華すぎませんか?あくまでも学園の1年の締めの舞踏会に着るには勿体ないような気がします」
「あれでもほどほどにしたつもりなんだがな」
不敵に笑うラフィ殿下。あれでほどほど……まあ、アクセサリーは大人しめだったかな。

「気持ちは落ち着いているのか?」
「はい、とても。あの捕物が良かった気がします。スッキリしましたもの」
「ははは。トラウマ克服ってやつだな。さすが俺のリーザだ」
豪快に笑う姿が、繊細な姿とミスマッチで本当に不思議。でも、そこがまた好き。
ルーチェとオスクリタは、暑いらしく木陰でお腹を出して寝ている。

「リーザ。俺の秘密を聞いてくれるか?」
「秘密、ですか?」
「ああ、誰にも言っていない。本当はこのまま墓場までと思っていた。だが、リーザにだけは言っておきたい、そう思ったんだ」
愛されているのは知っていた。同時に心から信頼してくれているのだとわかって泣きたくなるほど嬉しくなった。

「はい、私で良ければ」

私の返事に優しく笑ったラフィ殿下は、遠くを見ながら話し出した。
「俺が、前の記憶をリーザと同様持っている事は知っているよな」
「はい」
私が記憶を持っているという事がわかった時、お兄様から殿下も記憶があると聞いていた。

「実は、俺の記憶はそれだけじゃないんだ」
「え?」
「転生者といえばわかるか?」
「転生者……」
この世界とは全く違う世界にいた人が、生まれ変わってこの世界に来る人の事だ。

「ただ、最初から自分が転生者だと知っていたわけではない。リーザが亡くなったと聞いた瞬間に、津波のようにその記憶が押し寄せてきたんだ」

私の頬を指先で触れるラフィ殿下。
「俺は日本という国で生きていた。その世界には映写機よりも、更に凄い道具が当たり前のようにあった。そんな道具の一つに、ゲームというものがあって、妹がよくやっていた。そのゲームの中にな、この世界が舞台になっているものがあった」

「この世界、ですか?この世界がもう一つあったという事ですか?」
もう一つの世界、パラレルワールドのようなものだろうか?
「はは、わからないよな。まあ、今は聞き流せ。いつかゆっくり聞かせてやる。それこそ一生をかけてな」
私の手を優しく握るラフィ殿下。

「まあ、その中にも皆がいたんだ。リーザもチェーザレも勿論俺も。チカチカ聖女もな。その世界では聖女の視点で、聖女があくまでも主人公。きっとゲームをしている大半は聖女を応援しながら、もしくは自分に置き換えていたんだろう。でも俺はゲームで見ている時から、リーザが好きだった」
握った手を自分の方に持って行き、私の指先にキスを落とす。

「一途で健気でバイアルドを心から想っていた。本当なら罰せられるのは婚約者がいながら他に目を移したバイアルドと、婚約者がいると知って尚、ちょっかいをかけてきた聖女だと思ったよ」

ああ、そう思ってくれる人がいた。それが心の底から嬉しい。
「一途、というのは少し間違ってますわ。私はバイアルド殿下を愛してはおりませんでしたもの。婚約者でしたから心を砕いてはおりましたが、恋情というものはありませんでした。だからこそ、聖女に嫌がらせなどするはずがなかったのです」

「え?愛してはいなかったのか?」
「はい」
私の返事に殿下は目を大きく見開き、次には見開かれた目を細くした。
「は、ははは。そうだったのか。なんだ。俺はてっきり……そうか。はは。だったら前の時、遠くから見るだけなんて我慢、しなければ良かった」

「え?」
「一度だけ、城でリーザを見たんだ。淡く光る金の髪をなびかせて、真珠のように艶やかでしなやかな腕は、バイアルドの腕に絡まっていた。深く煌く紫の瞳は、こちらを見ることなく、やはりバイアルドに向けられていた。それでも陽の光に全てが輝いて見えた君を美しいと思っていた」
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