成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ

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初夜は流石に無理がある

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 お披露目の次は結婚式、そして祝賀パーティーとなっている。
 結婚することにまだ納得はいっていないが、それらの準備は既に整っているという。城の中の者たちが忙しなく動いていたのを見てしまったヴォルフは、彼らの準備を全て無駄にするような行動はできるはずがなかった。
 結婚式用の服に着替えさせられて、そのまま流されるように式場へと移動する。そしてヴォルフはラステアードの結婚相手として、結婚式にも祝賀パーティーにも参加してしまったのだ。
 式やパーティーの打ち合わせに当然まったく参加していないヴォルフだったが、周囲がそれはもう手厚くサポートをしてくれて、問題なかった。どちらも滞りなく行われたのだ。結婚式では誓いの口付けまでして、現在、パーティーで国王陛下をはじめラステアードの家族である王族に紹介をされている。

「お兄様の恋が実って良かったです!」
「これからよろしくお願いしますね、ヴォルフ義兄さん」
「ラステアードと結婚してくれて本当によかった」
「しっかりヴォルフさんを幸せにするのよ」

 ラステアードの両親、つまりは国王陛下や王妃陛下、妹と弟の王女殿下と王子殿下にめちゃくちゃ受け入れられて、祝われてしまった。息子、特にこの国の王太子が年の離れた男と結婚しようとするなんていいのか、と思うが。彼らの立場的に異論があれば既に口に出しているだろう。何も言ってこないところをみると、本当に祝ってくれているのだと感じる。
 さらにはその後祝賀パーティーで話をした誰もが、ラステアードとヴォルフの結婚について祝福の言葉をかけてくれた。こちらは心内はわからないが、何か悪感情を抱いていればラステアードはそういうことに聡いので気づくはずだ。ラステアードが普通に受け答えをしていたので、おそらく祝ってくれているのだろうと予想する。
 揉めるのも遠慮したいので、それは安堵したところだが、同時になぜ祝ってくれるのかとヴォルフは理解ができない。
 しかしながら、そんな祝福ムードの中で、まさかヴォルフだけが結婚するなんて知らなかった、まだ結婚を受け入れていないなどとは言うことはできなかった。

 そうしてヴォルフがその場から離れることができないまま、全ての事が終わる。
 疲れただろうからと、城でゆっくりしていくことをラステアードから提案された。もうすべて終わってしまったので、今更帰ってもと思うし、確かに疲労はある。ゆえにヴォルフはラステアードの言葉に甘えることにした。
 ラステアードは、ヴォルフをとある部屋へと連れていく。そこは、何度か来たことがある、ラステアードの私室の隣だ。部屋には机やソファ、棚などが置かれている。

「ここがヴォルフの部屋だよ。寝室はこっちで、僕の部屋と繋がってるから」

 部屋の中に入り、その奥にある扉を開けながらラステアードはそう言ってきたのだ。
 寝室、というところにはヴォルフが普段使っている家のベッドの倍……幅に関しては3倍ぐらいありそうな大きなベッドがある。ラステアードの部屋と繋がっていると言っているから、彼と兼用の寝室なのだろう。
 ラステアードはそのベッドへと近づき、ヴォルフに座るよう促す。彼の動きはあまりに自然だったので、ヴォルフは何の気もなく、ベッドに座ってしまう。

「俺の部屋って……」
「いい機会だから、城にヴォルフが来てくれたときに使う部屋を用意したんだ」
「……ここに住めって言われると思った」
「城なんて窮屈なとこに住んでくれなんて言わないよ」

 てっきりヴォルフの部屋と言われた時点で、住むように請われるかと予想したが、それは違ったらしい。確かに城に住むなんて、ヴォルフには無理な話だ。
 そこは気遣いをしてくれるのに、なぜヴォルフに何も話を通さず結婚という選択をするんだ、と頭の隅で思う。
 同時に、それならばラステアードは城に住んでいるのだから、別々に住むことになるのか、とも考えた。けれど、ここまで強引に事を進めてきたラステアードが、別居とするとは思えない。
 何かありそうだと怪訝な表情でラステアードを見れば、彼はさらりと言う。

「僕がヴォルフの家に住むしね」
「いや何言ってんだ」

 思わず突っ込んでしまう。

「え?でも結婚したら一緒に暮らすのは自然な流れだし、城に住まないなら僕がヴォルフの家に行くことになるよね?」
「王子を俺の家に住まわせるなんてできるわけないだろ」
「ヴォルフが良いって言ってくれたら他は全部話がついてるから大丈夫だよ」

 ヴォルフはそこそこの広さの屋敷に住んでいる。一人暮らしにしては部屋数は多いが、冒険者としての稼ぎはあるし、集合住宅だと体格の良いヴォルフにとって窮屈なのだ。だから1人2人一緒に住むことは可能である。
 しかし、普通の家でしかなくて、王子が住むようなところではないーーー、とは思うが、ラステアードも何度か訪れたことはあった。そのとき普通に居心地よさそうに寛いでいたのを思い出し、その姿にラステアード自身は問題ないか、となってしまう。
 ただ、王太子としての公務はいいのかとか、安全面はいいのか……これはラステアードもヴォルフもいるので心配はないが一応……とかなんとか思うが。それらすべて解決済だというのだ。

「……いつから準備してたんだよ」

 あまりの用意周到さに、ヴォルフは思わず、そう聞いてしまう。

「2年前ぐらいからかな?」
「そんなに前から……」

 2年も前からそんなことをしていたなんてヴォルフは全く気づかなかった。
 勘の鋭さには自信はあり、実際己の勘でダンジョン等で危機を潜り抜けたことがヴォルフにはたくさんある。それなのに、近くにいた男が自分と結婚しようとあれこれ動いていたことは少しも知らないでいた。
 それほどラステアードがうまくやった、と言うことなのだけれど。
 ただ、おそらくこの結婚に関して、今日まで知らなかったのはヴォルフだけなのだ。
 祝いに駆けつけてくれた友人や、仕事仲間、ラステアードの家族など、皆ヴォルフがラステアードと結婚することに何の驚きもしていなかった。つまりそれは、どこかのタイミングで2人が結婚することを知っていたという事だ。ダレンなど、ラステアードへの結婚祝いを買う話もしていたのに、いつもと何ら変わりなかった。
 自分のあまりの鈍さに、ヴォルフは気落ちしてしまう。
 けれど、その気持ちは長く続かなかった。なぜなら。

「ラス、……何してんだ」

 気づけばラステアードはヴォルフと距離を詰めて迫っていて、それどころではなくなったからだ。

「何って……、結婚した夜にすることっていったら決まってるでしょ?」
「はぁ?!俺はまだ結婚を了解してないからそれは流石にナシだろ」
「え~」
「え~、じゃない!」

 結婚式に祝賀パーティーと流されるままに参加したヴォルフであったが、それは準備されているものを直前で台無しにすることができなっただけだ。
 ラステアードがしたがっているらしいことは、普通に結婚した2人なら一般的にするものだろう。しかし、ラステアードとヴォルフは違う。当然ヴォルフにとって結婚式等と同じように流れでする者ではなかった。
 そんなヴォルフをラステアードはじっと見つめて、尋ねてくる。
 
「ヴォルフは僕のこと嫌い?」
「……嫌いなわけはない」
「じゃあ、好き?」
「そりゃ……まぁ……」

 素直にそう応えてしまう。どうにもラステアードに真っ直ぐ見つめられると、言葉を濁す事ができない。
 ヴォルフの返答に、ラステアードは嬉しそうに笑った。

「だったら結婚もしたし、良いよね?」
「良くない。話が別だ」

 きっぱりと言えば、ラステアードはむうっと子供っぽく不満そうな顔をする。

「……僕のことが好きで、結婚式もパーティーも参加してくれたのに」

 確かに、本当に嫌なのであれば、準備をしてくれたからなんてことは気にせず逃走すればよかったのだ。実力のある冒険者のヴォルフは、それができた。

「誓いのキスもしたし……僕のファーストキスだったのになぁ、あれ」
「は?!マジか?!」
「だってずっとヴォルフのことが好きなんだから、それ以外とキスなんてするわけないでしょ」

 至極当然とでもいうように言われて、ヴォルフはなんと言っていいか詰まる。浮いた話を聞いたことはなかったが、顔も良く、性格も良いラステアードは誰からも好かれていた。年頃でもあるから、もうそういうことは一通り済ませていると思っていたのだ。それがヴォルフを一途に想っているから、未体験だという。そうまで想われていることに、戸惑いもあるが、正直ちょっと喜びも抱いてしまったのだ。
 そのヴォルフの心の中を見透かしたかのように、ラステアードは好機と感じたらしい。

「ヴォルフ、ダメ?試しに一回だけでも……途中でどうしても嫌なら突き飛ばしてもらって良いから」

 畳み掛けるようにしてラステアードは言い募ってくる。その彼をヴォルフが強く、突っぱねることはできなかったのだ。
 不思議なことに別に、ラステアードとそういうことをするのが嫌ではないのもいけなかった。ただ怒涛の、ヴォルフが当事者であるのに彼の意思が確認されないまま事が進んだことが納得いかない気持ちがあるだけで。それも自分があまりに気づかないので、ラステアードがそうするしかなかったのだというのが分かって、だいぶ薄れつつある。

「……わかった!わかったよ!」

 そんなヴォルフが断り切れる筈もなく、最終的に叫ぶようにしてラステアードがしたがっていること、『初夜』を了承してしまったのだ。

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