元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

学園でも我慢をやめた私

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 学園に復帰して数日が経ったある日、その人物はやって来た。…というか絡んできた。

「だからぁー、親同士が勝手に決めた婚約にこだわって、愛もない結婚を押し付けるなんて、酷いとおもうんですぅ。彼の幸せを願うなら、解放してあげて欲しいのぉ。」

 フワフワどピンクの髪に、これまたピンクの大きな瞳の愛らしい男爵令嬢が何故か、私に文句を垂れている。
 周りではクスクスと笑う、上級生らしいお姉様方。確か、彼の取り巻きの令嬢達ね。

 今まで婚約者の同じ学年の令嬢には、彼の友人の可能性もあるから何を言われても、言い返さなかったのよね。婚約者に嫌われたくなかったし。言い返したいけど、あの方の迷惑になったら嫌だと思って、我慢してた。
 レベッカ達も、返り討ちにしそうな、恐ろしい笑顔を見せてたけど、私が何も言わない気持ちを汲んで、何も言わずにいてくれた。
 だけど、彼はそんなことがあっても、助けてくれる事はなかった。
 結果的にそれでナメられた。

 ふふっ。このコ、乙女ゲームのおバカなヒロインみたいね。

 いいわ!我慢をやめたアラサー杏奈が、ヒロイン気取りの小娘を成敗してあげる。

 私はレベッカ達に顔を向けて、大きな声で
「ねぇ、こちらはどちらの国からいらしている姫君かご存知かしら。私、お恥ずかしいことに、他の学年の留学生はまだ把握しておりませんの。」

 この学園で私達よりも身分が高い令嬢は、二つ上の先輩の公爵令嬢だけであるのを私は知っている。しかも、従兄弟の王太子殿下の婚約者で、私が唯一、姉のように慕う幼馴染である。
 その公爵令嬢以外で私より身分が高い人がいるとしたら、それは他国の王族くらいであるが、今は王族の留学生はいない。

 友人でもないのに、爵位が低い者から爵位が高い者に馴れ馴れしく話し掛けるなんて、いくら先輩とは言え、非常識極まりないということを、遠回しな嫌味で言ってみた。

「私も他の学年のことはあまり詳しくなくて。もしよろしければ名前と家名を教えていただきたく思いますわ。申し遅れましたが、私はレベッカ・ホワイトと申します。」
 
 ドス黒い笑みを浮かべて、王族にするような見事なカーテシーをするレベッカ。
 レベッカに続いて、名前と家名を名乗り、カーテシーをするローズとリーゼと私。

 これ、スゴイよね!国内有数の大貴族である私達が、男爵令嬢に嫌味とは言え、王族にするような挨拶をしちゃってるんだから。

 周りにいた上級生らしきお姉様方は絶句している。
そこで、空気を読まないローズが更に煽る。

「姫君、護衛はどちらにいらっしゃいますの?学園内とは言え、あなた様のような、可憐で美しい姫が一人で歩くのは危険ですわ。」

 自分より高位の貴族令嬢が、自分を姫君と呼ぶなんて、嫌味以外の何でもない。ここまで言われたら、実は男爵令嬢でしたなんて、普通なら言えないよね。しかも美人なローズに可憐で美しいと言われても、またまた嫌味にしか聞こえませんよね。

「エイミー・ケールよ。」
 顔を赤くして答えるヒロイン気取り。

「ケールと言う名前の王家っておありになりましたかしら?新しく建国した国かしら。あっ、申し訳ありません。知識不足をお許しくださいませ。」

 まだ攻めるか、リーゼよ。

「男爵家よ!馬鹿にしているの?」

 ハイしてました。男爵という身分ではなく、無知で非常識なあなたをね。でも男爵って答えてくれるのを、私は待っていたのよ!

「ケール様は男爵令嬢という身分で、侯爵家の縁談にまで口を出されるのかしら?」

「学園内は身分は関係ないでしょ。」

 あれっ。ヒロイン気取りの口調が変わってきたぞ。

「ええ。身分は関係ないので、学園内では王族から男爵家まで同じ建物や教室で平等に勉強していますよね。ですが、婚約や結婚は学園外の私生活の事ですわよね。しかも、私の婚約に関しては私個人の意思ではなく、婚約者の父である公爵閣下と、私の父である侯爵が決めたもの。全く学園内のことではありません。それでも、私の婚約に関して、ケール様は口を挟むつもりですか?」

「私は親同士の決めた愛のない結婚はかわいそうだし、彼も嫌がっているようだから、解放してあげてと言っているだけよ。」

 それを口を挟んでいるって言ってんだよ!

「わかりました。親である公爵閣下と侯爵の二人が、決めた結婚はかわいそうだし、彼も嫌がっているから解放した方がよいと、男爵令嬢のあなたの意見として父に伝えておきますわね。」

 私は念を押して聞く。
「よろしいですね。」

「わかってくれて嬉しいわぁ。」
 口調が戻るヒロイン気取り。その意味をわかってないのはお前だろ!

 私はトドメを刺す事にした。

「今の私達の会話を後々、証明してくれる方いらっしゃいますか?」

 こういう奴は自分が不利になると、そんな発言していないと逃げるに決まっているから、誰か信用出来そうな人に会話の内容を覚えて貰おう。

「面白そうだ。私がやろうか?」

 いつの間にか出来ていた人だかりの中から出てきたのは、なかなかの大物人物であった。

 

 
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