元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
120 / 161
ヒロインがやって来た

攻略対象者が怖い

しおりを挟む
 ヤンデレって言ったら、監禁や身体拘束したり、逃げられないように四六時中、監視されたり、暴力を受けたりするやつだよね。あの人達、そんな危険な人達なの?あんなにイケメンなのに!怖いんだけど。

「あの、ヤンデレっていうのは?」

「好きすぎて、病んでしまうようですよ。私は深く愛されているのが羨ましくて、嫌いじゃないですけど。実は、前世でこの本を全部読む前に、私は死んでしまったので、攻略対象者達がどんな風にヤンデレに変わるのかまでは知らなくて。クリアしたヤンデレ好き友人の話だと、そこまで酷いヤンデレではないとは言っていたのですけど。ただ、愛を通り越して、ひどい執着だって言ってたような気がします。フィリップ様もマリーベル様にベタベタって言ってましたよね?」

「…はい。かなり嫉妬深いですし。」

 フィル兄様の独占欲や嫉妬深さ、それによく『誰にも渡さない』とか『逃げないでね』とか言っているのは、ヤンデレの前兆だったりして。ひぃぃー。恐怖だわ。

「すごい!本当に愛されてるのですね!」

 へこむ私とは反対に、なぜが嬉しそうなアンジュ様。この子も、ヤンデレが好きだからこのゲームをしていたのね。

「あのー、例えばの話ですが。もし、恋人になってしまったとしたら、無事に別れることは出来るのかしら?」

「うーん?色々なヤンデレのゲーム…じゃなくて、本を読みましたけど、なかなか難しいかと思いますよ。監禁はまだマシで、下手すると『お前は永遠に私のモノだ』とか言って殺されるかもしれないし、『貴女を殺して私も死ぬ』とか言うかもしれないし。もしかしたら当て付けのように、目の前で自殺するかも。…あれっ?マリーベル様、大丈夫ですか?今言ったのは、ヤンデレの例え話であって、この本の攻略対象者達は、分かりませんよ。初めに話したように、見た目と名前は本と同じですが、性格とかは、全く違っているので。でも、あのフィリップ様にそこまで愛されているなんて、本当にすごいですよ!尊敬します。フィリップ様を不安にさせないように、上手く付き合えば大丈夫じゃないですかね?」

 いや!ヤンデレもヤバいが、悪役令嬢もヤバいのに上手く付き合える程、私は器用でも、強い人間でもないぞ。アンジュ様は、前向きな性格なのね。ここに来て、ヒロインの凄さを感じてしまったわ。

「アンジュ様はとても前向きで、私は元気をもらえますわ。今後のことは、色々考えてみようと思います。本当にありがとう。貴女がいてくれて良かった。」

「そんな…。そこまで私に言ってくれるなんて。私もマリーベル様のお役に立てるように頑張ります!」

 何も知らない私に、貴重な情報をくれたからね。アンジュ様には感謝しかないわ。
 それより、これからの事を考えないとね。やはり、逃亡の用意をしておこうか。フィル兄様のヤンデレも、どうなるか分からなくて怖いから無理だし。悪役令嬢もヤバいし。

 とりあえず、学園の卒業試験は受けておくか。いつ学園に来れなくなるのか分からないからね。前に先生方から言われたのよね。卒業後の予定が決まってないなら、試験に合格した後も、在籍していることも可能だから、しばらくは学園にいて欲しいとね。何でも、私達腹黒が問題行動の多い令嬢達のストッパーになってくれているから、いると助かるんだってさ。その時は、何だ?って思ったけど、せっかくだから、そうさせてもらおう。ミッシェルは、学年末に合わせて卒業試験を受けるようなので、一足お先に受けさせてもらうことにした。

 ということで、卒業試験をお願いして、あっさり合格した私。だって、転生チートか何だか知らないけど、頭に入っているんだもん。
 卒業試験の合否を職員室に聞きに行って、合格を知らされた時、ルーベンス先生は、かなり喜んでくれていた。だって子供の頃から、先生にお世話になっているんだもんね。
 ルーベンス先生ともいつまで会えるのか、お別れがいつ来るのかも分からない。本当にお世話になった先生だから、寂しいわね。最後に少しでもルーベンス先生の株が上がるよう、学園長や他の先生方がいる前で、私はルーベンスに感謝を伝える事にした。

「ルーベンス先生。私が卒業試験に合格出来たのは、先生のおかげですわ。先生は私の人生での、初めての先生でした。幼少の頃、まだ幼くて何も知らない私に、先生は勉強の楽しさを沢山教えてくれましたわね。あの頃は両親と離れて暮らしていて、寂しいはずの毎日も、先生がいたからこそ、乗り越える事が出来たのです。先生がいなかったら、今の私はいなかったと思います。先生に出会えたことに、深く感謝しておりますわ。本当にありがとうございました。ルーベンス先生は、私が1番尊敬する、大好きな先生ですわ。」

 私のルーベンス先生への感謝の言葉を聞いて、職員室にいた先生方から、拍手が沸き起こる。よし!ルーベンス先生は優秀なだけでなく、生徒に慕われる、素敵な先生だって、他の先生も分かってくれたに違いない。

 感謝を伝えておいて、何となく寂しく感じる。涙が出てしまいそうなのを我慢して、微笑む。そんな私の心情を察したのか、ルーベンス先生も複雑そうに、優しく微笑んでくれた。この先生は、こうやっていつも優しく微笑んでくれたよね。気付くと、我慢していたはずの涙が溢れて来たので、さっさと職員室を去る私であった。ちょっとトイレに行って、涙が落ち着くのを待とうか。

 しかし、涙を拭きながら廊下を歩いていると

「マリーベル嬢?どうしたんだ?」

 げっ!泣いている時には、知り合いに会いたくないのに。

「あっ!副会長。ご機嫌よう。」

「ああ。何で泣いているんだ?大丈夫か?」

「みっともない姿をお見せして、申し訳ありません。大したことではないので、気になさらず。それでは、失礼し…」

「ちょっと、こっちに来てくれ。」

 副会長は、私の手を強引に引き、職員室近くの空き教室へ連れて行く。えー!ヤンデレなる攻略対象者とは、あまり深く関わりたくないのだけど。

「君が泣くなんて、何があったんだ?私には話せない事か?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

処理中です...