推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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隣人だもの。……気になるでしょ。(4)

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 これらの呟きに、私は思わず頭を抱えた。由紀さんの言っていたのは、きっとこの事だ。だけど、どうしてこんな話題が出ているのか。確かに、Scorpioスコルピオはメンバー間に人気や認知の点で格差があることから、世間では「仲が悪そう」などと言われることもある。でもそれは、彼らを知らない人たちが勝手な憶測で言っていることであり、スコッコの間では、メンバー間の絆が強いことは周知の事実だ。そんな彼らが解散を考えるなんて、まずありえない。スコッコたちはこれまで、そう断言していた。

 それが、どうして?

 不安を消し去りたくて、私はいろいろな人の呟きを遡っていく。しかし、探せども探せども良い情報は得られない。

 きっと何かの間違いだよね?

 そう自分に言い聞かせて、私はもう一度公式サイトにアクセスする。やっぱり何の発表もない。配信の時間ぎりぎりまで情報収集を続けたけれど、結局モヤモヤを晴らすような情報は得られなかった。

 せっかくのライブなのに万全の準備も出来ず、気持ちも落ちたまま。自宅鑑賞の私ですら、こんな気持ちなのだ。参戦するスコッコたちは、一体どんな気持ちでライブに臨んでいるのだろう。

 不安を抱えながら、配信開始前のパソコンの画面を見つめる。数分としないうちに、画面上にライブ会場が映し出された。いよいよ始まる。私は、祈るように両手を組む。

 会場の大画面にはScorpioのロゴマークを模した蠍が登場し、画面を縦横無尽に駆け回り始めた。ライブ開始の合図だ。私は思わず息を呑む。不安を取り除く間もなく始まった今日の公演は、一体どうなるのだろうか。

 スコッコたちのざわざわとした声が止み、大画面内を動き回っていた蠍が画面中央に収まった。次第に吸収されるように小さくなりその姿を消す。舞台上が一瞬暗転した。そしてすぐに明るくなると、蠍が姿を消したステージに四人のシルエットが登場。同時に、割れんばかりの黄色い歓声がスピーカーから流れ出た。

 会場にいるスコッコたちが思い思いに推しの名前を呼ぶ。私も一人自室で、蓮の名前を呼んだ。しかし、どこか空しい。ライブでこれほど心が浮き立たないことは初めてだった。なかなかテンションの上がらない私に構わず、ライブの幕が上がる。

 黄色のライトに照らされた左端のシルエットが、音楽に合わせて一人踊り出す。そして、その姿を隠していた幕を取り払い西原優磨が姿を現した。その瞬間、会場には悲鳴にも似た歓声が響き渡る。
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