132 / 151
好きだからこそ……(14)
しおりを挟む
言いづらそうに問い返してくる成瀬さんに、私はコクンと頷く。
「もちろん! いつ? どこが? どれくらい? 女の子は、そういうことが言ってほしいんだよ」
私の勢いに気圧されたのか、成瀬さんの瞳が泳いだ。
「……そういうものなの?」
「そういうものなの!」
なんて力一杯頷いてみたけど、本当は他の子たちがどうかなんて知らない。ただ私は知りたいと思った。いつから、成瀬さんが私を見てくれていたのかを。
成瀬さんは困ったような顔をしていたけれど、意を決したように口を開いた。
「多分、出会った時から」
「え?」
思わず問い返すと、成瀬さんは少し恥ずかしそうに視線を逸らした。必要最小限しか語らない彼の耳は真っ赤だ。それだけで十分に伝わった。
私を喜ばせるための方便なんかじゃない。きっと本当のことなんだ。
思わず口元が緩む。ニマニマとしながら成瀬さんを見つめていると、成瀬さんは髪をかきあげるふりをして、居心地悪そうに顔を隠してしまった。それでも私は追求の手を緩めない。
「出会ったときって、あの日ですよね? 鞄を直してくれた、あの当落発表の日。もしかして、一目惚れしたから声をかけてくれたんですか?」
まるで他人の恋路を詮索するみたいに、ウキウキと成瀬さんに問いかける。そんな私の声に、彼は前髪をかきあげたまま困ったような笑みを向けてきた。それがやけに色っぽい。
思わず、クラっとしてしまう。成瀬さんの色気にあてられた私は、慌てて彼から視線を逸らした。頰が熱い。
「や、やっぱり答えなくていいです。今のはなしで!」
自ら追求したくせに、敢えなく撃沈した私を成瀬さんはクスクスと笑う。
「そうだね。きっと一目惚れだったんだと思う。きみの魅力に惹かれた。だから、思い切って声をかけた」
あっさり肯定されてしまい、私は顔から火が出るんじゃないかと思うほど熱くなるのを感じた。まさかの不意打ち全肯定。
そんなセリフを素で言ってくるなんて、反則すぎるでしょ!
恥ずかしくて、成瀬さんの顔を見ることができない。形勢逆転。私は俯き、そんな私を成瀬さんは余裕の笑みで見つめてくる。
「あとは、なんだっけ? 女の子には何を伝えなきゃいけないんだっけ?」
「……もう十分。もういいですから」
「そお? でも俺、きみに意識してもらうところから始めなきゃいけないからさ。恥ずかしいけど、必要なら言うよ?」
いつもより少しだけ意地悪に聞こえる成瀬さんの声。
「成瀬さんって、案外意地悪なんですね」
「もちろん! いつ? どこが? どれくらい? 女の子は、そういうことが言ってほしいんだよ」
私の勢いに気圧されたのか、成瀬さんの瞳が泳いだ。
「……そういうものなの?」
「そういうものなの!」
なんて力一杯頷いてみたけど、本当は他の子たちがどうかなんて知らない。ただ私は知りたいと思った。いつから、成瀬さんが私を見てくれていたのかを。
成瀬さんは困ったような顔をしていたけれど、意を決したように口を開いた。
「多分、出会った時から」
「え?」
思わず問い返すと、成瀬さんは少し恥ずかしそうに視線を逸らした。必要最小限しか語らない彼の耳は真っ赤だ。それだけで十分に伝わった。
私を喜ばせるための方便なんかじゃない。きっと本当のことなんだ。
思わず口元が緩む。ニマニマとしながら成瀬さんを見つめていると、成瀬さんは髪をかきあげるふりをして、居心地悪そうに顔を隠してしまった。それでも私は追求の手を緩めない。
「出会ったときって、あの日ですよね? 鞄を直してくれた、あの当落発表の日。もしかして、一目惚れしたから声をかけてくれたんですか?」
まるで他人の恋路を詮索するみたいに、ウキウキと成瀬さんに問いかける。そんな私の声に、彼は前髪をかきあげたまま困ったような笑みを向けてきた。それがやけに色っぽい。
思わず、クラっとしてしまう。成瀬さんの色気にあてられた私は、慌てて彼から視線を逸らした。頰が熱い。
「や、やっぱり答えなくていいです。今のはなしで!」
自ら追求したくせに、敢えなく撃沈した私を成瀬さんはクスクスと笑う。
「そうだね。きっと一目惚れだったんだと思う。きみの魅力に惹かれた。だから、思い切って声をかけた」
あっさり肯定されてしまい、私は顔から火が出るんじゃないかと思うほど熱くなるのを感じた。まさかの不意打ち全肯定。
そんなセリフを素で言ってくるなんて、反則すぎるでしょ!
恥ずかしくて、成瀬さんの顔を見ることができない。形勢逆転。私は俯き、そんな私を成瀬さんは余裕の笑みで見つめてくる。
「あとは、なんだっけ? 女の子には何を伝えなきゃいけないんだっけ?」
「……もう十分。もういいですから」
「そお? でも俺、きみに意識してもらうところから始めなきゃいけないからさ。恥ずかしいけど、必要なら言うよ?」
いつもより少しだけ意地悪に聞こえる成瀬さんの声。
「成瀬さんって、案外意地悪なんですね」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】夕凪のピボット
那月 結音
恋愛
季節は三度目の梅雨。
大学入学を機に日本で暮らし始めた佐伯瑛茉(さえきえま)は、住んでいたマンションの改築工事のため、三ヶ月間の仮住まいを余儀なくされる。
退去先が決まらず、苦慮していた折。
バイト先の店長から、彼の親友である九条光学副社長、九条崇弥(くじょうたかや)の自宅を退去先として提案される。
戸惑いつつも、瑛茉は提案を受け入れることに。
期間限定同居から始まる、女子大生と御曹司の、とある夏のおはなし。
✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎
【登場人物】
・佐伯 瑛茉(さえき えま)
文学部3年生。日本史専攻。日米ハーフ。
22歳。160cm。
・九条 崇弥(くじょう たかや)
株式会社九条光学副社長。
32歳。182cm。
・月尾 悠(つきお はるか)
和モダンカフェ『月見茶房』店主。崇弥の親友。
32歳。180cm。
✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎
※2024年初出
【完結】指先が触れる距離
山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。
必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。
「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。
手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。
近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
俺様御曹司に飼われました
馬村 はくあ
恋愛
新入社員の心海が、与えられた社宅に行くと先住民が!?
「俺に飼われてみる?」
自分の家だと言い張る先住民に出された条件は、カノジョになること。
しぶしぶ受け入れてみるけど、俺様だけど優しいそんな彼にいつしか惹かれていって……
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる