駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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1.何処かで聞いた都市国家

11.イリスと魔道具

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 専用の魔道具といっても、直ぐには思いつかない。そこで、まずはイリスに聞いてみた。

 「ねぇ、イリス。イリスも当然専用の魔道具ってあるんだよね?」

 僕の言葉に、イリスはこちらを振り向いたけど、何も言わない。

 「イリス?……」

 無言で僕を見つめてくる。

 「イリスさん……」

 彼女は当然という顔をして頷いた。

 「当たり前でしょ。入学時に用意されるのが普通よ。」

 ここで、イリスは周囲を見渡して声を潜める。

 「エリックさんが貴女のは特殊だって言ったでしょ。どういうものにすれば良いかさえ難しいんだから。私のような治療専門とちがって、魔法も使えるし近接格闘もできるなんていう変な人は貴女くらいよ」

 なんか、微妙にディスられてない? 気を取り直して、改めて尋ねてみる。

 「イリスの魔道具ってどんなものなの? やっぱり杖?」

 「し~、ここでは駄目よ。不要な時は他人に見せる事は禁止なの。戦闘術の講義でも、誰も使ってなかったでしょう?」

 そういえば、安全の為に未使用にしているのかと思ったけど、違うのか。でも、剣士の人とかは、防具は自前のだったような気がする。そこの処をイリスに指摘すると、呆れたように言われる。

 「貴女って実は脳筋ばかなんじゃないの? あそこに居た人達は、魔術師以外はほぼ外部の人達よ。」

 「へっ?」

 思わず間抜けな声を出した僕に、イリスは教えてくれた。大抵の剣士・槍士・弓士の人は魔法学院の外部、国内の冒険者ギルドや治安維持の為の部隊から、推薦を受けた人達なんだそうだ。
 彼らにとっても、パーティー以外の集団での戦闘経験や、魔法使いを相手にした戦闘訓練ができる。魔法学院側も内部では多くない近接戦闘職との戦闘経験が積む事ができる。防具等はサイズの問題もあって私物を使用するけど、武器は木剣や木槍だし、弓も矢がやじりのないものだったりする訳だしね。

 「まあ、貴女の予想の通り、私の魔道具は杖よ。イリスedtion1ね」

 ナニそのedtion1とか、無駄にカッコいいんですけど。僕の顔をみて、イリスは何を考えているか判った様だ。

 「あのね~、魔道具は使用者の成長に合わせて少しずつ改訂していくの。私の身長で、2mの杖とか持てないでしょうが」

 それもそうか。それにしても、考えてる事読まれてる? その点もイリスに確認してみると、あっさりと言われた。

 「考えてる事もなにも、駄々漏れよ? 私でこれなんだから、お母様には何も隠せないんじゃないかしら。貴女やリアンは判りやすい人達よね」

 そういうイリス。そういえば、リリーさんも嘘はわかるって言ってたけど、アレは控えめな表現だったのか。あれ? 今、ワイアットの名前は出なかったけど、彼はわかりにくいのか?

 「ワイアットの事を考えてるなら、正解よ。でも、今はそんな事が知りたい訳じゃないんじゃない?」

 そういえばそうかと、僕も思う。イリスは借り出す本を僕に持たせると言った。

 「じゃ、行くわよ。アレを見せてあげるんだから、本くらい持ちなさいよね。」

 そういい歩き出すイリス。だけど、その表現は誤解を招くんじゃないだろうか? なんか一部の男子が赤面してる気がするけど……
 考えちゃ負けだと、僕は本を持ってイリスの後を追いかけた。

*****

 「これが私の魔道具、『アスクレビオス・イリスedtion1』よ」

 そういって、戻った家でイリスが取り出したのは、長さ1m程の枝に蛇が巻き付いているような杖だ。杖頭には白い魔宝珠を、金と銀色の繊細な細工を施した帯が取り巻き、周囲を白を主体とした、色とりどりの花の細工が囲む。
 蛇の部分が微妙だけど、蛇と杖の取り合わせは、医療・医術のシンボルでもあるらしい。このへんは、非常に元居た世界に似ていると思う。そして正式名なのね、イリスedtion1は。

 「性能はいえないけど、想像はつくでしょ。勿論、治癒や回復効果の強化もあるわね。複数で治療に当たるときは、あまり魔道具は使わないのよね。僅かな差も強調されて、治癒魔法のバランスが揃わないから。
 魔道具は私の成長に合わせて、細工や性能に調整がされていって、15歳の時点で固定されるわね。普段は私は亜空間収納に納めているわ。」

 はぁ~、思わずため息がでてしまう。イリスは普段でも充分な美少女ではあるが、アスクレビオスを持ったイリスは、ちょっとヤバイ。人ではなく、天使かなにかに見えそうだ。

 触ってもいいか聞いてみると、あっさりと許可がでる。個人認証されていて、他人には使えない様に調整されているらしい。
 手に取って詳しく観察をしてみるけど、杖頭の花の細工は色とりどりで、花の中でも赤いバラの花が、存在をやたら主張している。
 ちょっとイリスのイメージに合わないかな。薄い青とかなら、白い花の中でも変に浮かないで、イリスのイメージに合いそうだけど。僕はそう思いながら、イリスにお礼を言って杖を返す。

 「ありがとう、イリスさん。とても綺麗な魔道具だったよ。」

 「どういたしまして。貴女にも早く魔道具が出来ると良いわね」

 イリスはそう言い杖を収納した。

 ……

 ある日、イリスは『アスクレビオス・イリスedtion1』を使った医療行為中に、違和感を覚える。それが何か判らないまま、数度の医療行為を行い、杖頭の赤いバラの花が、薄い青に変わっている事に気がつくのは、もうしばらく後の事である。

*****

 僕の現状の戦闘スタイルの課題は、接近戦以外には攻撃手段が無い事だよね。まあ、魔法が解禁されれば魔法攻撃が使えるけど、今の様子では何時になるかわからない。それなら、僕からアイデアを出せば、エリックさんもそれを元に考える事ができるかもしれない。

 小柄な僕が前線で戦うのは不利だから、遠隔攻撃手段となる魔道具が良いよね。折角だから、魔法が解禁された後にも使える様に考えないと……
 一般的な魔法使いのイメージでの弱点だと、接近戦に対しての対処になるんだよね。様々なファンタジーにしても、ラノベにしても魔法使いは例外を除いて接近戦は向いていないと思う。僕は接近戦ができても、戦闘中は対個人に対して魔法を行使するのがせいぜいだろう。
 それは、小隊として考えた場合、火力の低下となる。前回の集団戦でも、後方の魔法使いや弓士が背後からの槍士や剣士に殆ど対応ができず殲滅されてしまった。移動しながらの攻撃は、恐らく魔法としては不得手と思ったほうが良いだろう。
 後は、連射性能かな。比較の対象としてよいか悪いかはあるけど、マシンガンと魔法を比較した場合を考えてみる。火力は魔法が圧倒的に高いけど、連射速度はマシンガンが勝る。
 銃器同士でも一般論では火力が大きくなるに従って、連射速度は落ちると考えてよいだろう。ただ、魔法と銃器(大砲や戦車砲・艦砲も含めて)の大きな違いは、銃器は火力が大きくなれば、装甲が厚くなり防御も増えるのが一般的だろう。
 だけど、魔法は違う。アレクシアさんを例に出すと、彼女の火力は都市を灰燼かいじんに帰す原子爆弾並みではあるけど、装甲面で言えば紙に等しいと思う(まあ、アレクシアさんなら、攻撃しながら防御も出来てしまいそうだけど……)。一般の魔法使いは、22口径の拳銃弾1発で沈黙させる事が可能だろう。
 まあ、剣と魔法の世界で魔法使いが強固な装甲をもてば、魔法使い無双になってしまうので、判らないでもないし、鎧を着るために身体を鍛える魔法使いなんて聞いた事もないもんね。

 実際、僕にしても鎧を着てしまえば防御力は上がるけど、機動力はほぼゼロとなってしまうし、マッチョな魔法使いなんて目指す気も無い。どうにも、子供の頃ガタイの良い同級生とかにいじめられた経験からか、僕はマッチョ系は好きになれないのだ。

 今までの事から考えると、連射性の高い魔法以外の遠隔攻撃手段となると、『銃』となるかな。弓は当てるには技術が必要で、一朝一夕でどうにかなるものでもないし。でも、火薬や弾丸を携帯しなければならないことは、マイナス要因だ。
 あっ、なら魔法が撃てる銃ならいいんじゃないかな。銃に魔石を組み込んで、魔石にチャージした魔力で銃を撃てば、弾丸や火薬の問題も無くなるし、いっそ常時チャージして刃を形成できれば、某ゲームにでてきたガンブレードモドキが出来るかもしれない。ある意味ロマン武器だしね。
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