駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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4.アレキサンドライトの輝き

2.後始末 1日目 カルセドニー村

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 ミロシュさんとカタリナさんにユーリアちゃんの外出許可をいただきに、4人で出向いたのですが、既にアレクシアさんから話が通っていたようで、楽にお話が終わりました。
 ユーリアちゃんに試練を与えてしまった件について、3人で謝りますが、そちらよりも娘が精霊樹様に認めてもらえたという事の方が嬉しいらしく、お2人はお祭り騒ぎです。ユーリアちゃんが手を振りますので、僕たちも早々に引き上げましたが、問題が無くてよかったですよ。
 自宅に戻る際に、イリスさん達のスマホ型カメラを預かります。音声通話は、まだ技術的に早い気もして敢えてのせません。というか、通話機能ついたら毎日アレクシアさんから電話がきそうですしね。
 メール機能を載せようとしましたが、どうせなら1:1ではなく複数会話できるほうがいいですよね。
 LI○Eとかカ○オとかみたいな、SNS的な機能をつけましょう。そうすれば毎回写真を送らなくても済みますし、1人だけに送る場合には個人指定すれば良いだけですしね。
 改良を加えた3台のスマホ型カメラの名前をタブレットに変更します。そして、アレクシアさんと僕の分も作りますが、機能的にはたいしたことはありません。
 いじったついでに、放出魔力の吸収による自動充電(電気ではありませんので、充魔?)機能を追加します。もちろんリミッターをつけて、残存魔力が20%をきったら起動し、95%まで補充するようにします。過充電は危険ですからね。

 翌日の出発は昼食後としましたので、午前中に食材をいろいろ調達して収納に入れます。そう言えば、久しぶりにエリックさんが呼んでいるんでしたっけ。DM2などの格納スペースに着てくれということなので、食材調達のついでに立ち寄ります。
 なんでしょう? 球形の何か大きいものが見えますね。見た目は直径5mの球体が、転がらないように4本足の基部に乗っている感じです。

「お久しぶりです、エリックさん。用件も気になりますが、そもそもこの球体はなんなんですか?」

「ふふふ、よくぞ聞いてくれたね。これはね……」

 エリックさんの用意の良さに改めて僕は感心しますね。このへんの先読みをする能力というのは本当に凄いと思います。リアンに装備されなかったようなのが残念ですがね。

*****

 お昼はそれぞれの家族と、とってから集合することになっています。お休み中の集団行動は目立つとはいえ、ファロス島は住人が決まっていますから、さほどでもありません。そのまま屋上庭園にでて、DM2に搭乗します。

「操縦は今回はジェシーが最初でいいかな。その後は2時間くらいで交代していこうね」

「「了解しました、クロエ」」

 うんうん、久しぶりにエマとジェシーも一緒です。たまには、2人もゆっくりさせてあげないとですね。それに、みんな2度目の飛行になりますので、大騒ぎする事はありませんね。ちゃんと重猫アレキも乗ってますよ?

「じゃあ、折角だから上層街からカルセドニーの村の方向に飛んで、その後ウエストタウンから戦場方面で方向転換。海沿いに進んで、東部属領の港町アルケミシュに向うけど……」

 僕が言葉を言いよどんでいると、イリスさんが早速突っ込んできますね。

「東部の属領で海沿いの町ってことは、『黒死病』の蔓延している可能性があるって事でしょ? いいのよ、休暇ではあっても遊びじゃないんだから。あくまでも私達がShe lives only in her world.彼女は自分の世界だけで生きているとならない為なんだから」

 えっ、てっきり昨日の話では遊びだけだと思ってましたよ。僕が唖然とした顔をしていたのか、イリスさん達が僕をみていいます。

「あのね、クロエ。貴女は私達の事を過小評価していますわ? 貴女の側について回っているんだから、大抵の事には耐えられますわ」

「あの~、前回の様な気持ち悪いのは、私とユーリアちゃんには刺激が……」

あ~、まあアップでみなければ大丈夫なのかな。

「まあ、前回のは僕も暫く死んでたからね。危なく墜落する所だったんだよ」

「そうじゃな、全く旅立って直ぐ死ぬのかと思ったわい」

 煩いですよアレキ。まあ、あれを見て平気なのはイリスさんとリリーさん位でしょうし。僕がそう思っていると、ユイが僕をみてうんうん頷いています。? 考えを読まれてのでしょうか? イリスさんも胡乱な目をユイに向けていますよ。

「それでは、発進しますが宜しいでしょうか?」

 おっと、いけませんね。暗くなってくると、何があるか判りませんからね。早速行きましょう。

「OKだよ、ジェシー、進めちゃって」

「ローター回転安定。機体浮上します。機体認識阻害装置作動」

「海風、風速2m。機体が多少流される可能性がありますので、みなさん注意して下さい」

 いや、流されても何も僕たちではできないから、ジェシー。ふわりと機体が浮き上がり、滝側にすこし流されますがジェシーの操縦で直ぐに安定します。ドローンモドキ2号DM2は、軽快に空を駆けます。

「やはりこうして見ると、アレキサンドリアは綺麗な街ですよね」

 ユイの言葉に皆肯きながら、大河を遡上するように川沿いに僕達はカルセドニーの村を目指して飛び立ったのでした。

「エマ、悪いけど周辺警戒してね。一応飛行物体もないとは思うけど、注意してて。ぶつかると怖いし。あと、速度は余り上げなくていいよ、ジェシー」

「「了解しました、クロエ」」

 空の上からのんびりアレキサンドリアを見て回れるのも、戦いに勝ったからですしね。戦闘中は風景をみる余裕なんてありませんでしたし。
 川沿いの広場的になっている場所は、町や村の近くでは所々で子供達や冒険者がサッカーをしているのが見受けられます。エリクシアとの戦火は、台地の上には影響を与えませんでした。そういう意味では、アレキサンドリアの一般国民は、戦争の悲惨さを知らないともいえます。
 ですが、今回の戦役は人々の心に影響を与えたと、リリーさんは言ってました。台地の上からとはいえ、自国の軍が他国の軍と命がけで戦っていることを、直接みたのです。
 小さい子供達は幸いというか、僕が花火モドキをあげた所為もあって、花火だと思った子も多いらしく、深刻な精神的な被害を受けた人は居なかったとの事でした。
 しかし、下層街では被害が無かったとはいえ、砲弾が直接障壁に当たって砕けるのと目撃したりということもあり、大人でも精神的に参った人がいるようで、そのへんの治療は難しいのだといいます。
 アレキサンドリアの国民であれば、上層の村に居を移すことも可能ですが、わずかに残った他国からの旅行者はそういうわけにも行きませんしね(あ、商人の方は全く平気だったそうです。逆に商機商機とうるさかったとか)。

 カルセドニーの村に着いたのが午後の2時くらいです。夏の間はラベンダー畑になる畑の近くでDM2を駐機させて、村へと入ります。
 折角きたのですから、お肉や卵を調達したい所ですね。
 初めて来た村ということで、ユイやユーリアちゃんもあちこちをきょろきょろ見て回っていますが、冬は暗くなるのが早いですしね。僕とイリスさんは顔を見合わせます。

「どうします? 2時間くらいで暗くなりますから、無理をしないでここで一泊するのもありだと思いますよ。暗いと周辺の状況調査も甘くなりますし」

「そうですわね。少なくても、アルケミシュにはルキウス教の教会はないのでしょう? 
 となると、『黒死病』の蔓延状況が見られませんから、意味がなくなりますわね」

 僕とイリスさんで相談して、宿の空きがあれば1泊する事に決めます。宿の部屋は4人部屋が空いているということでしたが、僕達はエマとジェシーを含めて6人です。僕達がどうしようか悩んでいると、厨房から出てきたお姉さんが声をかけてきました。
 よくみると、前に来たときに僕をお風呂に連行したお姉さんじゃないですか。久しぶりにお話をしたら、4人部屋といっても家族用なので大きめのベッドが2つと、普通のベッドが2つということで、僕達なら十分宿泊可能ということです。それに、空いてるんだからと、4人料金でよいという事ですから、泊まらない理由はありませんよね。
 夕飯も宿で頂きましたが、ポークジンジャーがあったのでついつい頼んでしまいます。運ばれてきたお料理は、厚めの豚肉を赤ワインや蜂蜜などに漬け込んで、ソテーされたものがでてきました。
 僕はてっきり豚肉の細切れを、玉葱としょうが汁をメインとしたもので焼いたものと思っていましたよ。どちらもショウガ焼きなんでしたね。この旅行中に一度作ってみようかな。

 ……そして、忘れていましたよ。この展開では6人でお風呂になるということを。さすがにこの人数にお姉さんを加えられることは在りませんでしたが、僕とユイのさりげない抵抗は、エマとジェシーの腕力であえなく粉砕されます。
 廊下を運搬される僕とユイをみて、他のお客さんや宿のお姉さんが、生暖かい目でみていたのは忘れられない思い出(黒歴史追加?!)になったのでした。
 その後どの組み合わせでベッドで寝るかを決めるのにも、キャットファイトが勃発しましたが。エマとジェシーはルール違反というか、身体能力のスペックが違いすぎるので、二人は最初から普通のベッド組です。壮絶なバトルでしたが、結局体格に勝るユイが勝利を収め、なぜか僕が抱き枕と化す罰ゲームとなりました……

 深夜、僕はこっそりと目を覚ますと、そっと魔法を詠唱します。

「《ダグザの金の竪琴よ、安らかな音色を奏で、彼の者に安らかな眠りを与えたまえSleep》」

 みんなの寝息が変わらない事を確認して、僕はそっとユイの腕を外します。はぁ、なかなか寝付けずに苦労しましたが、そっとベッドを抜け出すと、エマとジェシーがムクリとおきだします。まあ、2人には人間で言う意味の睡眠は必要ありませんからね。
 服に着替えようとすると、反対のベッドで身を起こしている黒影が! 思わずびくっと身を竦ませた僕に、エマが「イリスさんです」と小声で伝えます。まさか、起きてるとか?

「全く、貴女は夜中に何処に行く気なんですの?」

 うわっ、マジで起きてますよ。

「嘘……睡眠魔法が効かないなんて……」

 呟いた僕を見て、イリスさんは天使の笑顔を浮かべ、毛布の中から長大な杖、『アスクレビオス・エリスedtion24』を取り出します。いつの間に、しかもedtion24ってかなり上がってますよ。

「edtion20を超えたら、状態異常効果無効が付いたのよね。貴女の魔法でも無効化できるなら、大抵の敵は問題なさそうね」

 ちょっと、なんですそのとんでも能力は! ありえませんよ。僕はイリスさんを指差して、口をパクパクさせるしかありません。

「な、なんで」

「なんでわかったというなら、そもそも午後に出発する事が異例でしょ? どう見ても移動に時間がかかるというか、わざわざカルセドニー経由にして戦場を暗くなってから通過するようにしてたわね?」

 う、しっかり読まれている事に、思わず絶句してしまいます。

「さぁ、さっさと片付けますわよ。朝までに帰ってこないと、2人とも煩いですわよ」

 はぁ、仕方ありませんね。イリスさんは既に着替え済みの様ですし。窓をそっとあけて寒さに身をさらしますが、すぐに移動を開始します。イリスさんは、エマが背負っていますよ。
 DM2に4人+アレキで搭乗して、機体が温まるのを待つのも惜しんで離陸します。

「でもいいの? イリスさん」

「昼間もいったでしょ、遊びじゃないのよ」

 まあ、いいですけどね。そこまで言うなら。

「エマ、目的地はルキウス教賊陣地跡。速度は通常速で出発。ジェシー、念の為『黒死病』感知センサーONで警戒してね。あ、夜間なので高度は少し高めにとって」

「「了解しました。クロエ」」

 機体は軽い浮遊感のあと、真っ直ぐに目的地に向って飛行を開始したのでした。

「それで、何をしに陣地の跡地に行くんですの? 跡地にはなにもないでしょう?」

 イリスさんの質問に、僕は少し考えてから答えます。

「うん、多分何も無いと思うんだけどね。逆に、何かが居たりあったりしていない事の確認かな」

「歯切れが悪いですわね。一体何が居ると言うんですの?」

 はぁ、仕方ないですね。僕は厳かに答えます。

「死霊とかアンデット系の魔物が居そうでしょ……『黒死病』で生きながら焼殺された人も多いんですから」

 僕の言葉に、イリスさんの顔がひきつります。あ、顔色が凄まじく悪くなりましたね。

「……クロエ? やっぱり私帰っても「もう、遅いですよ~」、嫌~!!」

 イリスさんが絶叫を上げますが、既に遅いですよね。さぁ、さっさと片付けましょう。
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