駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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4.アレキサンドライトの輝き

5.番外編(クロエの大晦日)

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 番外の短編です。

*****

 カチャ、カチャ

 物音を立てながら、30cm程の半球状の物体に、マジックハンドの様な物で、先につかまれた小さな星と呼ばれる球体を、玉皮と呼ばれる外皮にそって規則的に積み重ねていきます。その内側に同様に15cmほどの半球状の薄い膜ごしに、別な色の星と呼ばれる小さな球体を同様に、等間隔を保つようにゲル状魔法薬を詰めながらの作業を続けます。

 本来であれば外と内側の星の間には、破裂を促す炸薬が詰めるのですが、火薬の取扱いは危険なので、ゲル状の魔法薬で固めながらの作業をします。このゲル状の魔法薬も配合が難しいんですよ~、火の回りが早くても遅くても星が均等に散らばらないんですよね。

「う~、細かいなぁ。あ、駄目だよアレキ。今は繊細な作業してるんだから」

 僕は右手にじゃれてくるアレキに一瞬気を取られ、右手で操作していたマニピュレーターの操作を誤って星を取り落としてしまいます。

「あちゃ」

『カコン、ボシュッ』

 うぅ、星が2つ砕けてしまいましたよ。というか、モドキでよかったよ~。
 マニピュレーターまで持ち出して、僕が作っているのは花火モドキです。
 毎回単色の色を変えるだけでは飽きられるかとおもって、今回は内側と外側で色の違う『割物花火』と小さな花が沢山開く『小割物』に挑戦しようとしていますが、細かすぎて美味く作成できず、マニピュレーターを先に作るという二段作業になっています。
 そして、今日は前世であれば大晦日。花火は新年を迎えると同時に打ち上げますので、余り時間が無いんですよ。気を取り直して、割れた星を交換後なんとか作業を継続します。

 はぁ、漸く完成しましたよ。今年の花火作成は、アレキの所為で随分時間がかかりましたよ。
 はっ、これが世に聞く猫デバフというやつですね。
 後は完成した半球状の球体を2つ重ねて球体を作れば完成です。何とか『小割物』は完成しましたが、『割物花火』は上下をあわせる作業が残っています。

 そぉっとそぉっと、ここまで着て失敗しないようにと……

「……まったく、いつまでこんな暇そうな事をしてるんじゃ。さっさと餌を寄こすのじゃ」

 僕の心を知らずして、左右のマニピュレーターの間にアレキが登場します。

「もう少しで終るから、ちょっと待ってよね。あとこれを合わせればお仕舞いなんだから……」

 二つを組み合わせてっと…… あれ? 妙に隙間が空いてしまいます。むう、ご飯をせかされているから、急がないと。僕は左右のマニピュレータに少し力を加えます。

『ギニャ~』

『ポーン、ポポーン、ボシュ、ボシュシュ』

「ぎゃ~、ここまでの成果が……」

 アレキが暴れて、割玉が左右に転がった拍子に、幾つかの星が連鎖で破裂してしまったようです。
 うぅ、どうやら二つの割玉の間に、アレキの尻尾が挟まっていたようですね。アレキが暴れて中の星が幾つか破裂しましたが、安全対策で保護魔法かけてあった所為で大爆発にはなりませんでした。ですが『割物花火』は半壊してしまっています。

「うぅ、泣けます~」

「わ、我輩の自慢のモフモフ尻尾が、尻尾が焦げた~、一体どうしてくれるんじゃ」

 アレキが騒ぎ始めます。あぁ、最初に餌をあげていれば、今頃は完成していたはずなのに……

 お猫様の要求は早めに解決しておかないと、やっぱり駄目なようですね~
 割れた大玉と、騒ぐアレキを見ながら、僕は今年1年の締まらない締め括りとなったことにがっくりと力尽きます。
 それにしても、尻尾が挟まっている事に、僕が気付かなかったのは仕方ないとしても、アレキ自身が気付かないとは思えません。絶対わざとやっていましたね。

「尻尾。わざと挟んでたよね?……」

 僕の声が響き、当然アレキにも聞こえているはずですが、後姿のまま反応を示しませんね。ただ、毛先が縮れた尻尾が左右に揺れるだけです。
 むう、今回はアレキにも責任取ってもらいましょう。今日は餌の等級を落としますからね!!
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