駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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4.アレキサンドライトの輝き

34.帰還

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 窓の外の海は、濃い藍色から澄んだ青色に近くなり、初夏の装いを見せ始めています。そう、ここはアレキサンドリアの自室なのです。

 迷宮の3層で傷を負い気を失った僕達は、迷宮B1Fへの入り口に転移させられ、辛うじて動けたアーネストさんの知らせで即治療を受けました。勿論、誰も傷跡を残すことなく回復しましたし、その時点で既にエリーゼさんとの依頼も完了していたので、迷宮の2層の話などをフローラさんに報告し、無事アレキサンドリアに帰国しました。

 エリーゼさんとフローラさんからは、週1で手紙が届いていて、復興の状況を教えてくれています。僕らが去った後も、幾つか問題が発生しましたが、無事解決しているようですね。

 まず、『バスティアン・ツー・バル』という男性を覚えているでしょうか? フローラさんの元婚約者候補だった彼ですが、あの後仲間から見放されて単独でフォレスト・フォートからの輸送部隊の馬車に密航し、領内に侵入したあと、街道を徒歩でヴァリアント・ゲレーロの拠点都市『ボスクエ・プロフンド』に到着。
 街の入り口で止められて、「今日からこの街の領主は俺だ」とぶち上げたそうです。その時に足の各所を蚤に噛まれていたようだったので隔離され、幸い『黒死病』にはならなかったようですが、身分詐称や領主発言もあり、結局彼は初の迷宮2層の独房行きが決定したそうです。恐らく、フローラさんとも僕達とも二度と会うことはないでしょうとの事です。

 2つ目は、迷宮2層のオークへ差し出された被害女性達の問題ですが、人倫的にはどうであれ、彼女達は奴隷の身分でしたので、帝国の責任を問う事は難しいですし、彼女達もそれを望んでいないようでした。
 結局、奴隷だったとしても森に置き去りにされた段階で、奴隷としての身分は開放されたと判断され、近々王都や付近の村に開拓者として入植する事が決まったそうです。かの地に彼女達の過去を知る人は居ませんし、帝国側もそれを話すことはないでしょうから、平和に暮らせるといいですね。

 3つ目は、王宮の件です。王都の実行支配は、帝国のクラウディウス家が握っていますが、王宮はヴァリアント・ゲレーロ側に返還されたそうです。彼らの王家血筋しか入れない迷宮もありますし、地下2階のゴブリンたちとの盟約や秘密の書籍などもあり、のちのちヴァリアント・ゲレーロ側ともめるのも目に見えていますしね。

 そうそう、シャルさんとアーネストさんですが、アレクシアさんからの言い付けどおり、転移魔法で一度アレキサンドリアへ強制帰国して頂きました。アーネストさんには了解を取ってありましたが、シャルさんは寝てる所を強制転移したので、裏切り者とかさんざんなじられましたが、これは仕方ないですよね。
 二人はアレキサンドリアを拠点に、今後も冒険者を続ける事になりましたが、クラウディウス家からの依頼もある為、北都『トラキヤ』に行っています。
 移動に関しては、アレキサンドリアが開発した小型の『飛行船』が使用されています。そう、ヘリウムガスでふわふわ浮かぶあれですね。国家とは関係なく、帝国内のクラウディウス家とアレキサンドリアの下層街との間で運行されていて、青家のワイアットが管理しています。下層街とはいえ、時折エリーゼさん達も現われますので、その際はパーティーになりますけどね。

 色々問題はありましたが、暫くは『アレキサンドライト』の活動もお休みです。その理由は……

「さぁ、クロエ。今日も健康診断に行きますわよ」

 勢いよく僕の自室のドアが開き、イリスさんがにこにこ顔でやってきたのをみて、僕はウンザリしながら声をあげます。

「ねぇ、もう1週間も検査して、なにもわからないんだから、止めようよ」

 そうなんですよ。イリスさんとリリーさんが、執拗に僕の身体を調べたがるのです。そして、これにアレクシアさんもOKを出しているために、僕には拒否権がありません。
 実際、身長・体重などの基礎的な項目から、魔力の出力波形、最大出力値などのデータを採られていますし、僕のクローンでも作るんじゃないかっていう位執拗です。

「だめよ、だって貴女あの時の男に『封印』するって言われてのでしょう? なら、どの能力が封印されたのかを確認しておかなければ危ないと思うわ」

 確かにそういわれた気もしますし、恐らく事実なんだとは思っていますが、多分検査してもわからないと思うんですよね。実は僕には推測がついているのです。
 それは、新しい技能や魔法の制限だと思うんですよね。天羽々斬を使っている僕は、べつに前世で剣技を極めたわけではありません。天羽々斬を召喚したことで、身体が剣技を使える様になったのです。
 そして、それは魔法にも同じことが言えます。あの時点で使えていた分野の魔法は、今も使えますが、思いついても使っていなかった魔法、例えば『レイズ』などの蘇生魔法や、過去への時渡りに関する時間魔法などは、当時なら思いついて直ぐ使えたのに、今は使える様にならないのです。僕の推測が正しければ、能力の多様化の『封印』だと思うのですよね。

 そして、イリスさんやリリーさんは、納得してくれないんですよね。もともと使わなかった=使えなかった、となるので能力の成長を『封印』されたといっても、わかってくれないでしょうね~
 でもあの『男』に聴きたいことが一つあるんですよね。それは……

 『封印』したのは、あくまで能力であって、身体の成長は含まれて居ないってことです。本当にお願いしますよ~

「さぁ、クロエ。今日は耐性能力の確認だからね。しっかり確認させてもらうわよ?」

 僕はイリスさんに恐る恐る尋ねます。

「あの、それってどんな……」

「たいした事無いわよ。睡眠耐性に麻痺耐性とか、毒耐性もあるわね。他にもお母様とアレクシア様が色々考えているみたいですわよ?」

「ちょっと、まって。毒耐性とか、そもそも前回値もないんだかrわからないじゃないですかぁ~」

「あら、知ってるでしょ? 貴女に拒否権は無いのよ?」

 ぎゃ~、助けて下さい~……。そして僕の悲鳴は虚しくファロス島に響き渡ったのでした。
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