駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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5.南海の秘宝

13.閑話 秋の実りを味わいます♪

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 短めですが……

*****

 季節はすすんで、いつの間にか夏の残り香は消えうせて、『チッタ・アペルタ』街壁の外、アルベニア領内では黄金色に染まった一面の水田が、爽やかに駆け抜ける秋風の中、黄金色の海を思わせるように揺らめいています。

「少し懐かしい気がする風景ですね」

 ユイがそう呟きますが、気持ちは判らなくも無いですね。ユイにとっては遼寧の、僕にとっては日本の田舎の原風景に似て、何処と無く郷愁を誘います。

「それは良かった。お二人をお誘いした絵画あったというものです」

 僕とユイの背後には、数名の護衛を引き連れた『ロンタノ辺境伯』が悠然と立っています。

「この水田は、アルバニアより更に東方に行った国々だ栽培されている、粒の小さな種類の米ですが、こちらの種籾を纏めて引き取って下さるのですから、こちらとしてはありがたいの一言ですよ」

 ロンタノ辺境伯が試験導入したものの、他の水田よりも収穫量が劣り、彼らのリゾット風の料理にも今一つ合わない為、調理法などの相談をユイに持ちかけたのが今回の切っ掛けです。

「こちらの米は、いわゆる東方種で寒さに強い傾向があります。アルベニアでも北方の高地などで栽培するのに向く種類なんですよ」

 ユイの説明に頷きながらも、国内での栽培は難しいと判断したのでしょう、結局彼は満足いく価格で、今年の生産された全量をアレキサンドリアに販売する事で満足したのでした。
 それは、僕とユイにイェンさんは懐かしいソウルフードでもある米の料理が食べられる事を意味しています。
 栽培場所などは、アレクシアさん達と相談する必要がありますが、恐らく西岸地域に新たな村を作る計画があったので、其方での栽培も検討されるでしょうしね。でも、まずは引き取ったお米を使ったお料理ですよ♪

*****

 いざ米料理とはいっても、さすがにユイは元皇女様なので、調理法方までは知りません。イェンさんも意外なのかそのままなのか、余り料理は得意ではないとのこと。野外料理のスキルはそれなりに高いようですが、米料理を自分で作った事はないようですね。
 アレキサンドリア内では炊飯道具などは手に入りませんので、自作した小振りの羽釜(かまどで使ってた昔の日本の炊飯器ですね)を使用しています。
 ご飯が炊き上がるときの独特の臭いに、ユイの目が輝いている気もしますし、いつもクールに見えるイェンさんも、すこしそわそわしているように見えますね。
 炊き上がったご飯を十分蒸らした後、お茶碗(これも自作です)によそい、お味噌汁をつけて3人に提供します。3人目は、僕ではありませんよ? 評価にやってきたイリスさんですが、また太っても知りませんからね?

 ユイとイェンさんはお箸を使って一口食べた後、目を輝かせて勢い良く橋を動かしていますが、イリスさんの表情は今一つですね。

「……味がない……」

 むぅ、このほのかな甘さとかが判りにくいのでしょうか? 僕は自宅から持ち出してきた卵を割り、お椀で溶いてご飯にかけます。あとは醤油を少々たらしてっと。そう、タマゴかけご飯ですね。ん~、久しぶりのタマゴかけご飯はとても美味しいですね。
 僕の表情をみた3人は、それぞれタマゴかけご飯に挑戦しています。ユイやイェンさんは判りますが、イリスさんも何気にチャレンジャーですね。まあ、何もかけないよりはよほど美味しいですけど。

 引き続いて軽くおにぎりを握ります。塩味のおにぎりだけじゃなく、お肉をサッといためたものにお味噌を絡めた物や、焼いた魚の身(骨は勿論取り除き済みです)なんかもいれた3種類のおにぎり。
 これは直ぐに食べなくて良いんですよという前に、イェンさんは食べ始めています。仕事柄もあるのでしょうけど、見た目と違って随分大食いですね。ユイも塩をふったおにぎりをかじって感動しています。うんうん、喜んでもらえてよかったですよ。

「ねぇ、お米の料理って他にもあるのよね?」

 ん? イリスさんとしては多少不満が残る感じなのでしょうか? ドンブリ物など色々ありますが、ご飯単体だけではなく、お惣菜との組み合わせも天下一品ですからね。其方が良いかな。

「お料理自体は色々あるよ。今日はユイとイェンさんにお米の味を堪能して貰いたかったからシンプルなお料理にしたけど、おにぎりは携帯食としてもとてもいいよ」

「そうなのね。確かにパンに比べると、おかずが美味しく感じるかもしれないわね。次はそういうものを期待しているわ」

 というイリスさん。

「クロエ君、どうせ君の家ではそんなに羽釜など使わないだろう。邪魔になるだろうから、うちで預かってやろう。あぁ、みなまで言うな。感謝など要らん」

 イェンさん、僕に何も言わさずに羽釜を確保しましたね?

「クロエさん、美味しいご飯の炊き方を是非教えてください!!」

 うんうん、ユイさんは素直でいいですね。では、夕飯は生姜焼き定食でも作りましょうか。それならイリスさんにも喜んでもらえそうですし、イェンさんも満足してくれるでしょう。
 そして、夕飯の準備をしながらご飯の炊き方をユイに教えて、炊飯はユイに任せます。あとは生姜焼きに必要なお肉やショウガを確保して、彩りにキャベツなども必要ですよね。砂糖、しょうゆ、みりん、東方のお酒、しょうがでたれを作って出来上がりです。
 お味噌汁もユイにお任せしましたので、夕飯はこちらの世界ではかなり豪華なものになってしまいましたが、みんな満足ですよ。
 まぁ、いつもの如く最後にはアレクシアさんやリリーさんまで乱入して、大人の女性達はそのまま酒盛りに移行するのはお約束です。
 うんうん、やはり久しぶりの和食もやっぱり良いものですね♪

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