最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈～レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈～

第１章 進化の始まり

００２ ステータス

　自称神の演説の後、パニックに陥るかと思ったけど、意外とみんな冷静だった。

　死者が出るまでは……

　ＳＮＳで上がっていた通り、日本各地……いや、世界各地でダンジョンが発生していた。
　国家、政府や警察はむやみに中に入るなって声明を出したけど、従わないやつはどこにでもいるものだ。
　自分のSNSフォロワーの数にしか興味がない輩からすれば、これほどおいしいコンテンツは存在しない。



　話し合いの結果、企画していたキャンプどころではなくなったので、僕たちは一旦自宅へ帰ることにした。
　子供たちも揺れが怖かったようで、佐奈から離れようとはしなかった。
　
　自宅に着いてゆっくりはしていられない。この件について家族で話し合う必要がある。
　父さんと茂君も酔いがすっかり醒めてしまったようで、話し合いに参加できそうだった。
　それと、テレビではずっとこの話題で持ちきりだった。
　当然と言えば当然の話だけどね。

———次のニュースです。本日「神」と名のる人物より複数の端末が一斉にハッキングを受けた模様です。政府は全世界規模で発生したハッキング事件として、対策本部を設置。緊急対策会議を開き対策を検討しているとの発表がありました。この後何らかの声明が発表される見通しです。———

　各種SNSでこの話題で持ち切りだったが、家族との話し合いの結果は、とりあえず静観。
　わざわざ自分たちが無理をすることは無いと考えたからだ。
　警察や自衛隊が何とかしてくれると楽観視していた。
　
　佐奈達は明日、急いで自宅に戻るそうだ。
　向こうには茂君のご両親もいるので心配なんだろう。
　一応電話で無事は確認取れており、一安心はしていた。



　数日すると、ニュースでは警察・自衛隊によるダンジョンの封鎖。および調査が始まったとの報道があった。

　家族で夕食をとっていると1つのニュースが飛び込んできた。

———たった今、速報が届きました。どうやら、ダンジョンで民間人の死者が出たと関係者からの情報です。繰り返いします、ダンジョンで民間人の死者が出たと関係者からの情報です。詳しい内容につきましてはわかり次第お伝えいたします。———

　恐れていた事態が発生した。
　ついにダンジョンで民間人の死者が出てしまった。
　その後、追加情報で詳細が分かってきた。
　封鎖しきれていなかった未確認のダンジョンに、勝手に入った若者が数名死亡。数名重傷を負ったらしい。

　これについても報道で賛否が分かれていた。
　政府・警察・自衛隊の対応の遅さが原因だと騒ぎ立てる者たちもいた。
　言葉が悪いですがと断ってから、自業自得ではないかと言った意見も出ていた。

　僕としては対岸の火事くらいにしか思っていない。
　正直、政府はむやみに近づくなと声明を発表していたのにもかかわらず、自らそこへ足を踏み入れたのだ。
　自業自得と思われても仕方がないと思う。



　食事も終わり、ふとスマホを見ると、例の文字が画面上に浮かんでいる。

個人情報▼
インベントリ▼

　気になってはいたが、なんだか怖くて触っていなかった。
　触れた時点で僕の世界が変わってしまいそうだったから。

　夕方、美鈴は触ったらしく、ステータスにいろいろ書かれていたとのことだった。
　驚かないでね？って念押しされたが、どういうことなんだろうか…

　夕食後、自室で意を決して触ってみた。

ーーーーーーーーーー

基本情報

　氏名　　：中村なかむら　剣斗けんと
　年齢　　：３５歳
　職業　　：無職
　称号　　：無職

ステータス

　レベル　：１
　ＨＰ　　：１００／１００
　ＳＰ　　：　１０／　１０
　体力　　：３０
　力　　　：２０
　知力　　：１５
　精神力　：１０
　魅力　　：　５
　幸運　　：２０

スキル　
　スキル名：世界共通言語　レベル無し
　　　　　　インベントリ　レベル１
　　　　　　スキルクリエイター　レベル１

装備
　頭　　　：なし
　胴体　　：トレーナー
　腕　　　：なし
　腰　　　：トレーナー
　下半身　：なし
　足　　　：なし
　装飾品　：なし

ーーーーーーーーーー

「うわっ？！」

　いきなりスマホから目の前に現れた透明な板状のディスプレイに、僕はビックリしすぎて声を出してしまった。

ドタドダドタ!!

　廊下から誰かの走る足音が聞こえてきた。

「お兄ちゃんどうしたの?!」

　美鈴も何事かと部屋に飛び込んできたが、僕のスマホを見て自分もそうなったと笑っていた。

「あ～笑った。通称ステータスボードっていうやつらしいよ。そこには自分の情報が全部載るってことらしいけど、まだわからないことだらけだって。」
「そっか、ありがとう。それより美鈴、ステータスの値ってどのくらいが平均値なんだ？」
「それ気になって調べたんだけど、ＳＮＳ上には上がってきてなかったね。きっと皆隠してるんじゃない？」

　冷静にステータスを見てみたが、これが高いのか低いのか良くわからなかった。
　とりあえず、中身を確認していこう。

　スキルの【世界共通言語】と【インベントリ】は、自称神が強制的に寄こしたモノだと思う。
　世界共通言語は言葉がすべて共通に聞こえるってところか？
　途中で英語とかが普通に理解できたから、これが原因だと思う。
　じゃあ、インベントリはどうなんだ？
　ん？触れる？
　
　恐る恐るステータスボードを触れてみると、ゲームのような枠がたくさん並んでいる。
　横に１０マスと縦には……って、あれ？ずっと下にスクロール出来るな。
　もしかしたらいくらでも入るって感じか？入れられる限界値は見極めないとあとで困ることになりそうだしね。
　ここいらについては後で検証してみよう。

　「なあ、美鈴。このインベントリってどうやって使うんだ？」
　「入れたいものを触って『収納』って念じれば入るよ。出したい時は出したい物をイメージして、『解放』。簡単でしょ？」

　なるほどね。とりあえずその辺にあった雑誌で試してみよう。
　マガジンラックにしまってあった雑誌をテーブルの上に置き、右手を雑誌にかざしてみた。

　『収納』

　お、ちゃんとインベントリの枠の中に雑誌が入っている。
　あとは、取り出すときはその物をイメージして……

　『解放』

　するとテーブルの上にさっき入れた雑誌が発行現象の後に現れた。
　小さな声で「おわっ!!」って言ってしまったらしく、横で見ていた美鈴が声を殺して笑っていた。
　あとで絶対仕返ししてやる……

　美鈴はすでにいろいろ試していたらしく、ある程度の物は入れることができたらしい。
　さすがにベッドは収納できなかったみたいだ。

　これである程度、インベントリの性能は確認できた。
　最大数量については、あとで調べるしかないね。

　じゃあ、【スキルクリエイター】っていうのは何だろうか？
　スキルボードにあるスキルを触ってみると詳細が分かった。

スキルクリエイター：自身のレベルを生贄に新たなスキルを創造できる。ただし、創造するにはその分の代価が必要。自身のレベルが０になる場合は創造できない。

　え？
　ということはレベルを上げないと使えないの？
　しかも使うとレベルが下がるって……
　どうやって使えばいいんだ？
　ハズレなんじゃないだろうか……

「美鈴、自分が上げたレベルを消費して新しいスキル貰えるのってどう思う？」
「え？意味わかんないんだけど？」

　美鈴はきょとんとした目で僕を見つめる。
　それはそうか、僕も同じ立場だったらそうなると思うし。
　
「いやさ、スキルの説明にそう書いてあるんだ。」
「じゃあ、お兄ちゃん〝スキルはいっぱいあるのに強くないキャラ〟になりたい？」
「それは嫌だな…」
　
　確かに美鈴の言うとおりかな。もし仮にスキルをたくさんもらえたとしても、それを使いこなせなかったら、正真正銘の〝器用貧乏〟ってやつになってしまう。
　このスキルについても、まだまだ確認しなくてはいけないことがたくさんあるみたいだ。
　場合によってはほぼ封印状態で使わないようにしないといけない気がしてきた。
　困ったな……

　でもその前に気になることがある……
　ステータスの職業欄……

　無職なんですけど⁉
　
　え？だって、仕事明日から再開のはずでは？

　プルルル　プルルル
『おかけになった電話は、お客様の都合によりお繋ぎできません。おかけになった電話は、お客様の都合によりお繋ぎできません。』

　慌てて、会社に電話すると繋がラなかった……
　いやいや、まさか……
　もう１回。

　プルルル　プルルル
『おかけになった電話は、お客様の都合によりお繋ぎできません。おかけになった電話は、お客様の都合によりお繋ぎできません。』

　だめだ繋がらない。もしかしたらあいつなら……

　そして同僚にかけた電話で、その理由がはっきりした。

『もしもし、田島？今、少し時間良いか？』
『良いけどどうした？もしかして会社の件か？』

　田島もどうやらこの件が気になっていたのか、聞く前にその話題になった。
　
『何か知ってるのか。教えてくれないか？電話しても繋がんないんだよ。』
『俺もたまたま社長の番号知ってて電話して確認したんだけど……会社の建物……ダンジョンになったって。』
『え？まじでか？』
『あぁ、間違いない。俺もさっき会社に行って来たら、自衛隊に止められたから。』

　会社の建物が昨日ダンジョンになったそうだ……
　敷地一切含めて国の管理下に置かれたので、倒産するしかないそうだ……



　それから後日会社から正式な書類が届き、僕は晴れて無職になった……