最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
17 / 131
第2章 リベンジ!!

017 強くなるために

しおりを挟む
 團姉弟たちと別れた僕は、一人ダンジョン受付へ向かっていた。

「ランクアップか……」

 つい口から出た言葉に、自分自身で驚いてしまった。
 朝にランクアップよりも、攻略を優先しようと決めたはずだった。
 でも、團姉弟たちのランクアップの話を聞くと悔しいと思う自分がいた。
 僕だって……と、そう思ってしまったのだ。
 しかし、今の自分に上のランクのダンジョンを攻略できるのだろうか……
 まず間違いなく命を落とすのが目に見えている。

 うん、焦らず行こう。
 僕は僕の道を歩けばいいんだから。

 僕は確かな足取りで受付を目指した。
 その一歩を踏み出したとき、また不思議な感覚を感じた。
 なんだか、嫌な……。
 そう、自称神が現れた時のような。
 周りを見ても誰も気にした様子は見られなかった。
 きっと気のせいだったのだろうか?

 気を取り直して歩き始めた。


 
 「中村さん、おはようございます。その後の調子はどうです?」

 僕が受付を済ませると、待っていたかのように一ノ瀬さんが話しかけてきた。
 一ノ瀬さんには僕のスキルについてあらかた相談をしていた。
 特殊すぎるスキルの為、今後の指針について迷いがあったからだ。
 一ノ瀬さんは親身になって考えてくれた。
 ただ、最後の決断は僕自身でしなくてはならないとも告げられていた。

「はい、あと10日前後でこのダンジョン最下層を目指そうかと考えています。ただ、探索者ランクをアップさせると考えるとレベル不足が懸念されますね。」
「今レベルはいくつですか?」
「2まで戻ってます。今日中に7~8に上げたいですね。とりあえず、基礎ステータスの底上げはポイントで何とかなってるので、無理をしない限りは問題ないと思います。」
「わかりました。Fランクへ上がるには最低レベル10が必要ですので、その辺りも考えて行動してください。では私は仕事がありますのでこれで。」

 一ノ瀬さんと別れた僕は、トランスゲートを潜りダンジョンへと足を踏み入れた。


 
 第一層では大して苦労するはずもなく、いつもの作業のようにスライムを倒していった。
 2匹目を倒したところで、ここでもいつものようにレベルが上がった。
 どうやっても作業感は否めなかった。
 そして手に入れたポイントは死なないようにするために、体力に振ることにした。
 少しは生存率が上がるといいんだけど。
 周囲を探すと、スライムのドロップアイテムは魔石(極小)が1個だけだった。
 ほかは特に落ちていなかったので、改めて探索を開始した。

 第二層へ向かって移動していると、前方の少し離れた場所にゴブリンの姿が見えた。
 向こうはまだこっちの姿に気が付いていないようだった。
 ものは試しと、僕は全力を出して飛び掛かってみた。
 以前試した時よりも速度が出てしまい、そのままゴブリンを通り過ぎてしまった。
 うん、ポイントを振った後は必ず慣らし運転をしないとだめだね。
 とうのゴブリンは何があったかわからない顔で、辺りをきょろきょろと見回していた。
 どうやら完全に僕の姿を見失っているようだった。
 そんなゴブリンに、僕は背後から接近し……
 その首を刎ねた。
 ころころと転がるゴブリンの頭。
 身体はゆっくりと傾き、最後には地面へと倒れ込んだ。
 そして地面に残されたのは、こん棒と腰布だった。

 それから第二層の階段を見つけるまでに、モンスターと会うことは無かった。
 さすがに狩られすぎて、なかなか出会わないのも考え物だね。

 第二層に降りても、現状あまり変わらなかった。
 諦めて第三層を目指していると、前方にフヨフヨと動く物体を発見。
 スライム、数は4。
 うん、訓練には丁度良いので一気に倒しにかかった。
 スライムたちはあっけなく切り裂かれ、ダンジョンへと消えていった。
 そして恒例のレベルアップ。
 これでレベル4になった。目標の半分だ。
 残ったのは魔石(極小)が2個とスライムゼリー(青)が1個。
 少しでもお金になるので地味にうれしいな。

 第二層はあまり芳しくなかった。
 ここも訓練場所に指定されているので、自衛隊による間引きが行われているのだろうか。
 
 それからしばらくすると、第三層の階段を発見した。
 第三層から足早に上がってくる探索者と挨拶をかわし、第三層へと足を踏み入れた。

 くそ!!油断した!!

 降りた瞬間に、ハンティングウルフの群れと遭遇してしまった。
 さっきの探索者パーティーが、若干焦った表情をしていたのはこれが原因か!!
 全く戦闘準備をしていなかったので、すべてが出遅れてしまった。
 すでに囲まれており、数は6匹……
 今までで一番多い群れだ。
 さすがにこれはきついかな……

 僕の背中には嫌な汗が流れていった。

 準備が遅れた僕とは違い、ハンティングウルフの行動は、とても統率が取れていた。
 隙あらばリーダーを倒そうと狙っているけど、その隙が見当たらない。
 むしろ、群れを活かしてこちらの行動を制限してくる。

 波状攻撃ともとれる連携で、こちらは防戦一方にならざる得なかった。
 うまく捌いて攻撃に移ろうとすると、サッと後退しこちらの間合いから遠ざかるのだ。
 魔法が使えたらと何度考えたことか。
 ソロであることが悔やまれる。

 徐々にハンティングウルフの攻撃速度が上昇していく。
 僕の体力もかなりぎりぎりになってきた。

 どうする!!くそ!!
 なんかないか!!

 周囲を見回すと、第二層への階段が見えた。
 丁度、いい具合にルートが確保できている。

 どうする……
 額に汗が流れる……
 仕方ない、戦略的撤退!!

 僕は全力で後退した。
 ハンティングウルフも突然のことに反応が遅れたみたいで、こちらを追いきれなかった。
 何とか階段に飛び込んだ僕は、大きなため息とともに安堵した。
 噂通りモンスターは階層を跨ぐことはできなかった。
 
 悔しい……
 逃げるしかできなかった自分が恥ずかしい……

 何が「皆さん死なないでくださいね。」だ……

 畜生……。
 あまりの悔しさに涙があふれ出る。
 とめどなく流れる涙は拭いても拭いても収まらなかった。

「中村さんじゃないですか。どうしました?」

 ふとかけられた声の方を見ると、一ノ瀬さんが部下を引き連れて降りてきた。
 僕は涙を拭いて事情を説明した。
 すると、中村さんは頭を下げてきた。

「申し訳ありません。おそらく、現在第三層入り口に陣取っているのは『イレギュラー』と呼ばれる特殊個体です。我々が哨戒と討伐を行っておりましたが、どうやら漏れてしまったらしく、ほかの探索者にも被害が出てしまったようです。これより討伐いたしますので、今しばらくここでお待ちください。」

 イレギュラー……徘徊型ボスモンスターだ……。
 まさか第三層に出るとは思ってもいなかった。
 本当に油断しすぎていた。
 そして思い出す。
 あの自称神の言葉を……

『この世界はこの瞬間からデスゲームへと変わります。』

 そう、これはデスゲーム……
 生きるか死ぬかの戦いだった……
 スキルという名の未知なる力のおかげで、僕は勘違いしていたんだ。
 ここはゲームの世界ではない……現実なんだ。

パン!パン!パン!
ダダダダダッ!!
 
 銃火器による戦闘音が、ここまで聞こえてくる。
 自衛隊としての戦闘を見たことが無いので、気になってしまった。

 しばらくすると、一ノ瀬さんたちが第三層から戻ってきた。
 どうやら無事討伐は完了したようだ。
 一ノ瀬さんから、「命があってよかったですね」と声をかけられたが、本当にその通りだと思う。
 あの時撤退できていなかったら……
 僕はすでに殺されていたのだから。

HP: 53/103

 自然回復したおかげで半分までは回復できた。
 改めて第三層へ降りた僕は、周囲を警戒しつつ探索を続けた。

 しばらくすると、前方にハンティングウルフが4匹徘徊していた。
 僕の手は汗で湿っていた。
 ゆっくりとハンティングウルフに近づいていく。
 ばれないように慎重に……
 僕は拾った石をハンティングウルフの奥側へと投げた。

カコーン

 ダンジョン内に響く音。
 ハンティングウルフたちは釣られたようにそちらを一斉に見た。

 今だ!!

 僕は全速で駆けだした。
 初めて潜った時とは全く違っていた。
 1匹が僕の足音に気が付いたらしく、こちらを振り返った。

「遅い!!」

 下から救い上げるように剣を振りぬく。
 面白いように吸い込まれていく剣は、ハンティングウルフを二つに切り裂いた。
 そして流れるように、今だ動きが無いもう一匹に振り下ろした。

「ウゥ~~~~!!」

 唸り声をあげて威嚇する2匹。
 仲間がやられたんだから、当然のように警戒心を露わにしていた。
 
「ガウワ!!」

 痺れを切らした2匹は連携を取るように攻撃を仕掛けてきた。
 だがその動きもきちんと見える。
 スキルやステータスのおかげかな?

 ふう……

 結果として戦闘は、何とか苦労せずに終わった。
 楽勝だったと言えればいいんだけど、どっからどう見ても辛勝だ。
 
 そしてここでまたレベルアップした。
 これでレベル5。
 ポイントは……また体力に振り分けだね。

 よし。これで体力はかなり上がったはず。

体力:93(+5)

 トータル98か……あと1レベルで3桁。
 これなら何とかなるはずだ。
 少し休んだら、またハンティングウルフを倒そう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...