最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第2章 リベンジ!!

031 結果ヒモになりました。

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 昨日一日パーティーで探索してみたけど、レベルに関してはいまいちだったと思う。
 確かに安全マージンは稼げたし、ゆとりをもって探索ができた。
 でも、レベルアップを考えたら効率的ではなかったと思う。

 今僕のできる選択は

①レベルを10まで上げてランクアップを目指す。
②レベル上げを一旦諦めて、スキルの取得・レベル上げ。それと、ステータスのボーナスポイント振り分け。

 おそらくこの二つになると思う。
 さらにどちらも二つに分かれる。

1)安全マージンを取りつつ、第4層で探索を続ける。
2)安全マージンを無視して、第5層に降りる。

 ①は本筋というか、探索者をするなら当たり前のルート。
 ②は僕のスキルを全力で使っていくルート。ただし、金欠になる可能性が大だったりする。

 1)2)はリスクを許容できるかどうかってところだろうか……


 時間も時間だから、朝食を摂りにリビングへと降りてきた。
 すでに美鈴は食事を始めていた。
 美鈴は昨日予定していた通り、市役所でランクアップの手続きを行うそうだ。
 「ついにFランクだ~」と昨日からずっと呟いている。
 正直ちょっとだけいらっとしてしまった。
 父さんと母さんは、いつも通り過ごすようだった。

 思い切って僕は、今考えていることを打ち明けてみた。
 美鈴と母さんはリスクは許容できないと言い、無理はしないようにと念を押されてしまった。
 美鈴は②を選んでほしいらしい。
 ずっと先輩面できるからとニヤニヤしていた。
 父さんは……少し考えを巡らせているようだった。

 父さんとしては②の1)を選んでほしいようだ。
 ただ、1)を選ぶということは、金策ができないということに他ならなかった。
 僕が決断を渋っていると、父さんは貯金通帳を取り出してきた。
 中を見ろと投げ渡されてしまった。
 僕はそっと中身を見て驚愕してしまった……

 父さんの給料が倍以上に上がっていた……

 驚きを隠せないでいると、母さんがそういえば言ってなかったとすっかり蚊帳の外に置かれていたようだった。
 父さんはスキルレベルが上がり、大工として一流の仲間入りを果たしてしまったらしいのだ。

 しかしだ……しかし、本当にいいんだろうか……
 だって、僕35歳なんだよ?
 さすがにまずいでしょ?
 還暦過ぎた父親のすねっかじりは……

 通帳を持って固まっている僕に、悪乗りしてきた美鈴が耳元でささやいてきた。

「大丈夫だよお兄ちゃん。私も稼ぐから、ヒモ生活を満喫すれはいいよ。」

 本当に情けない……
 本当に悔しい……
 


 結果②の1)を選択することにした。
 正直、レベル上げは今の階層だと頭打ちになってしまう。
 取得経験値がかなり少ないからだ。
 レベル8まで上げてみたけど、これ以上上げるとなるとモンスター討伐のペースを上げるしかなくなる。
 そうすると、どうしてもパーティーでの行動の方が安全マージンを稼ぐことができるだろう。
 しかし、経験値も等分されてしまうのでレベル上げに時間を要してしまうのもまたジレンマとなっていた。
 それならばいっその事、レベルアップの際に取得できるボーナスポイントを振り分けたほうが効率がいいと思うのは当然だと思う。
 これは僕しかできない裏技といっても過言ではない行為だ。
 と、いろいろ格好つけた言い訳を並べてみたけど……

 これからヒモ生活の開始となりました……
 早く下層に潜りたいです……


 
 僕は朝食を終えると、さっそく行動に移すことにした。
 まずはカイリ達について一ノ瀬さんに相談しようと思う。

 丁度、僕が訓練施設へと足を踏み入れた時、訓練場から一ノ瀬さんの部隊が返ってくるところだった。
 どうやら運が良いらしい。
 すぐに一ノ瀬さんに会うことができた。

「おはようございます。今お時間よろしいですか?相談したいことがあります。」
「おはようございます。中村さん。そうですね……、今から1時間後くらいでも大丈夫でしょうか?ブリーフィングルームを借りておきますので。一時間後に受付の自衛官に聞いていただければわかるようにしておきます。」
「お忙しいところありがとうございます。」

 短い会話だったけど、なんとかこの後のスケジュールを押さえることができた。
 僕は時間までの間、自分のスキルについて考えることにした。

 一ノ瀬さんとの約束の時間までまだある。
 近くのベンチに腰を下ろし、スキルを確認してみた。

ーーーーーーーーーー

スキル
 
 スキル名:世界共通言語 レベル無し
      インベントリ レベル1
      スキルクリエイター レベル1
      スキルアップグレード レベル1

      剣 レベル1
      剣術 レベル1
      盾 レベル1

      身体強化 レベル1
      切断 レベル3
      命中率補正 レベル1
      回避速度補正 レベル1

ーーーーーーーーーー

 切断以外レベル1しかない。
 当然といえば当然で、周りとは違い使い込んでもレベルが上がらないらしい。
 ここで考えないといけないのは、新しいスキルを取るかスキルレベルを上げるかってところだね。
 どちらも一長一短あるだろうけど……
 
 まあ、深く考えても仕方がないかもしれない。
 どちらにせよ、レベルを戻してもすぐに下がるんだから……
 だったら全部やってしまった方がいいのかもしれないな。
 
 どうしたものかと頭をひねっていると、またも遠くから聞き覚えのある声がしてきた。

「あれ?先輩どうしたんですかこんなところで。ランクアップ進んでますか?そうそう聞いてくださいよ。なんかEランクに上がるのめっちゃ大変らしいんですよ。レベル20以上にしないといけないし。しかも、このダンジョンの第10層まで行かないといけないとか、どんなマゾゲーなんですか?僕らやっと6層で活動で来てる状態なんですよ?ひどくないですか?あ、先輩は今何層ですか?」

 うん、いつも思うけど絶対に口から生まれてきたよね?
 どうやったらそんなに言葉がスラスラ出てくるんだろうか……

「あ、いた~~~~~!!ちょっと栄次郎!!目を離すとす~~~~~ぐいなくなるんだから。もう。本当にすいません。うちの栄次郎が迷惑をおかけしてしまって。」

 すんごいびっくりしましたとも。
 いきなり大声を出さないでほしかったです、はい。
 それはそうと、この女性は誰なんだろうか。
 話しぶりからすると、おそらく谷浦のパーティーメンバーだとは思うけど。
 あ、そんなに耳を引っ張らないで上げて。
 千切れるからね?

「大丈夫ですよ。えぇっと、そうですね、彼とは会社の同僚でしたから迷惑ではありませんよ?」
「さすが先輩。懐でっかいですね!!」

 耳を引っ張られながらサムズアップしている谷浦は、ある意味大物なのかもしれない。

「すぐまた軽く話す!!いっつも注意してるでしょ?!」
「ところで……谷浦。この方を紹介してくれないか?」

 谷浦を助ける気はなかったけど、一応女性は誰かと尋ねてみた。
 女性は突然焦ったように谷浦の耳から手を放し、一礼をしていた。

「すみませんでした!!つい、栄次郎を夢中で探していたもので。私は栄次郎の姉の谷浦たにうら 虹花ななかって言います。」
「これはご丁寧にどうも。谷浦の元同寮で先輩だった中村 剣斗といいます。」

 虹花さんに習い、僕も深くお辞儀をしてみた。

「いったかった~。なな姉ちゃんももう少しおしとやかになれば貰い手だって増えるだろうに……グベラホッ!!」

 おお~、きれいな右手の裏拳がはいったな~。
 うん、怒らせてはいけない人であることは確定したね。

「すみません、うちの愚弟がご迷惑をおかけしてしまったようで。あの子なりにいいところはある……はずなんですけどね……。これからも仲良くしてやってください。」

 右手をハンカチで拭きながら言われても……
 はいとして答えられないよね?

「ところで、谷浦を探しに来たのではなかったんですか?」
「そうでした!!ほら、栄次郎!!みんなまってるわよ。急いで!!」
「……。なぁ、なな姉ちゃん。行かなきゃダメかな?友達だったんだけどなぁ……。第5層辺りからなんだかいずらくて……」

 いつもは元気印が取り柄の谷浦に、何か影が落ちていた。
 何かあったのかはわからないけど、あまり乗り気ではないようだった。
 虹花さんもそれはわかっていたようだけど、待たせている以上連れていかないわけにもいかない状況だった。

「なぁ、谷浦。何があったかはわからないし、僕が口を挟むこともおかしいとは思う。でもな、話すときにきちんと話さないでずるずるすると絶対に後悔する。後悔してからじゃあ、遅い。だから、自分の思いをきちんと伝えるんだ。頼りない先輩だったかもしれないが、僕からのアドバイスだ。」

 僕の言葉が届いたかどうかわからないが、谷浦の表情が少しだけ凛としていた。
 何やら覚悟を決めたみたいだった。

「中村先輩、ありがとうございます。仲間と少し話してきます。また今度相談に乗ってください。」

 谷浦はそう言うと頭を一度下げて仲間たちの元へとかけていく。
 それを見た虹花さんは驚いていた。
 弟の変化に戸惑いを隠せないでいたみたいだ。

「中村さん、ありがとうございます。あの子ずっと何か抱えていたみたいで……。でも打ち明けてくれなくて、みんなも困ってたんです。あれなら悪いことにはならないと思います。本当にありがとうございました。」

 虹花さんも谷浦を追うようにその場を後にした。

「人に何か言える立場じゃないんだけどね……」
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