最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第3章 リスタート

046 『探索者型イレギュラー』

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「ケントさん、質問いいですかぁ~?」

 アスカが、何やら気になることがあったらしい。
 おそらくはモンスターのレベルについてだと思うが……

「どうしたんだ?何か気になることがあったの?」
「えっとですね。ここに来る前に、資料室で調べたじゃないですか?その時そんな話見付けられなかったなぁ~って。」

 ⁈

 確かに、アスカの言う通りだ。
 生物鑑定を覚えた人間は、まだそんなに多くないのかもしれない。
 だけどそれを習得した人物なら、誰しもがたどり着ける結論だ。
 そんな情報、自衛隊や警察、ましてや国が把握していないはずがない。
 なのに、どうして資料室にその情報が上がってないんだ?
 むしろ、積極的に開示して危険を減らすべきことじゃないのか?

「確かにおかしいですね。政府は隠そうとしている……ということでしょうか?」

 虹花さんも俺と同じ結論に行き着いた。
 これは確実に情報を隠匿していると考えるのが筋だ。

「でも、どうして隠すんでしょうねぇ~?」

 アスカの質問が一番的を得ていた。
 隠す理由がわからない。
 隠す意味も分からない。
 隠すということは誰かにメリットがあるはず……もしくは誰かにデメリットがある……誰に?

「先輩。難しい話は分からないっすけど、俺たちが考えても答えは出ないんじゃないっすか?」
「確かに谷浦の言う通りだな。よし、これの件については俺の方で調べてみるよ。とりあえず、政府も発表していないようだし、この件はオフレコで行こう。」

 谷浦は谷浦か。
 だけどそのおかげで、思考の海に沈みこまなくて済んだのは助かった。
 考えれば考えるほど、深みにはまってしまいそうだ。
 
 この件についてはこれで話を終わらせることにした。
 いくら考えようとも答えなど出るはずもなかったからだ。
 一番手っ取り早いのは地上に戻ったら、一ノ瀬さんを捕まえて確認すれば済む話だ。
 誤魔化されたら何かあるし、何もなければ素直に答えてくれるはずだ。
 この辺りは、一ノ瀬さんを信じるほかないかな。

「それじゃあ、時間も時間だから戻るとしよう。今日一日で分かったことは、俺たちが予想よりも強くなりすぎたってことだな。」
「そうですね。ケントさんは頑張りましたから!!」

 冗談交じりで話をすると、何やら全力で持ち上げてくるカイリ。
 フンスと鼻を鳴らし、拳を力強く握っていた。
 よくわからないが、本人がそれでいいならいいか?
 俺としては、みんなに迷惑をかけている気しかないんだけどな。
 

 
 それから出口に向かう道のりは、一方的すぎて、ただの惨殺みたいに思えた。
 全員で出力コントロールの訓練だと言って、出会ったモンスターを片っ端から殲滅して帰ってきた。
 おかげで今後の訓練施設の運営に支障をきたすのではないかと、ちょっと心配になってしまった。
 ただこれもダンジョンの不思議で、必要数よりも大きくモンスターの数が減ると、一気にリポップが始まるようだった。
 俺たちは遭遇したことはないけれど、床や壁といったところから〝湧き出る〟のだそうだ。
 仲間を呼ぶ時と良いい、数の調整の時と言い、ダンジョンにも意思が宿っているのではないかと思わざるを得ない気がしてきた。
 むしろそう思って行動していた方が安全かもしれないな。



 俺たちが順調に第一層に戻ってくると、【トランスゲート】付近に人だかりができていた。
 距離が近くなるにしたがって何やら物々しい雰囲気で包まれているのが手に取るように分かった。
 そこには長い行列ができており、上級探索者や初心者探索者関係なく皆行儀よく順番待ちをしていた。
 こういう時は横暴にふるまって我先にという探索者が出てくるのがテンプレだけど、さすがは日本人といったところだろうか。

 列の先頭を覗き見るとそこには見知った顔が居た。
 一ノ瀬さんだ。
 状況を聞くためにみんなには列に並んでもらって、俺だけ一ノ瀬さんに会いに行った。

「一ノ瀬さんお疲れ様です。どうしたんですか?なんかかなり物々しい雰囲気ですが。トラブル発生……っていうところでしょうか。」
「中村さんお疲れ様です。本日『探索者型イレギュラー』の出現報告があったんです。眉唾物ですが警戒するに越したことはありません。ですので念の為出口でその『探索者型イレギュラー』が外に出ないように検問をしているところです。モンスターなら探索者証を持っていないでしょうから。水際対策というやつです。」

 どうやら懸念事項が本格化してきており、自衛隊もその対応に動いたようだった。
 報告があったのがこのダンジョンだけだったようで、ほかのダンジョンは今まで通りの対応にとどめているみたいだった。
 一ノ瀬さんの表情がいつもに増して緊迫した様子だった。
 緊急度合いがうかがい知れた。
 
「わかりました。俺たちも後ろの並んでますね。」
「ご協力感謝します。」

 これ以上一ノ瀬さんと話していてもあまり意味が無いので俺は元の位置に戻ることにした。
 うん、一ノ瀬さんのびしっとした敬礼が本当にかっこいい。
 
 俺たちは列の最後尾に並び、順番待ちをすることにした。

「ケントさん……怖いですね。」
「確かにね。巻き込まれないように用心するに越したことはないかな。みんなもそのつもりで。」

 カイリは酷く怯えた様子だった。
 確かに恐ろしいと思う。
 なんせ見た目が探索者なのだから、いつ後ろから襲われるか分かった物じゃない。
 ダンジョン内で偶然出会って、意気投合したら後ろからバッサリだって考えられる。
 警戒してもおかしくない事態だ。
 しかし、どういった経緯でその『探索者型イレギュラー』に進化したのだろうか。
 人型で考えるとゴブリンだけど……
 ゴブリンから進化したときってホブゴブリンとかジェネラルとかって話だし。
 もしかすると、特殊進化なんてこともあるのかもしれないな……。
 あと考えられるのは下層から上がってきた可能性もあることだ。
 下手をすると、上層まで上がってきて、新人狩りなんてことが発生する可能性だって捨てきれはしない。

 俺たちは待ち時間中にいろいろ話をしていたが、結論までは至らなかった。
 これについても、俺たちではどうにもできないことだからだ。



 しばらく待っていると、後方がやけに騒がしくなってきた。
 何か殺気を放つとかそういうのではなくて、どちらかと言うと黄色い声援に近いのかもしれない。

 ザワザワとした騒がしさがガチャガチャという鎧のこすれる音と共にどんどん近づいてきた。

「中村さんお久しぶりです。」

 不意に後ろから声をかけてきたのは、数日前に記者会見に出ていた「難攻不落の城壁」のリーダー、由貴乃さんだった。
 そりゃざわつくよな。
 今や飛ぶ鳥を落とす勢いの新進気鋭の探索者パーティーだからね。

「お久ぶりです。この前の記者会見見ましたよ。すごいですね。一時とは言えパーティーを組めたことが誇らしいですよ。」
「そんなことは……。っと、それよりもこの列は何なんでしょうか?」

 由貴乃さんは、この列について何も知らなかったようだった。
 列に俺の姿が見えたので、確認の為に近づいてきたらしい。
 あまり声を上げるのはよろしくないと考えて、俺は小声になって説明を始めた。

「ダンジョン内に『探索者型イレギュラー』が出現したようです。おそらく前に教えてくれた『イレギュラー』だと思います。その後何か変わったことはありましたか?」
「えぇ、そのことについても一度話がしたいと思っていました。すみません、少し時間を貰えますか?」
「急ぎでしょうか?」
「そうですね。できればお仲間さんも一緒に……」

 そう言われると断ることもできなかったため、みんなに事情を説明し、列を離れた。
 【難攻不落の城壁】のメンバーと移動したことで、なぜか俺たちに注目が集まってしまった。
 あまり目立ちたくはなかったんだけどな。
 
 列から離れた場所で、【難攻不落の城壁】のメンバーと話し合いを始めた。
 ただし、約一名が不満そうな空気を垂れ流していた。

 ここに来てもやっぱり〝梁井 明日香唯我独尊〟は〝梁井 明日香唯我独尊〟だった。
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