最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
52 / 131
第3章 リスタート

052 解放と消滅

しおりを挟む
『シンを……、悪夢から解放してください……。』

 それは、カイリの悲しみに満ちた決断だった。
 幼馴染を……友人を殺す……
 それをカイリに決断させてしまった。
 これはカイリたちに憎まれようとも、恨まれようとも、俺がすべき決断だったはずだ……
 なにやってんだよ、まったく。
 情けないにもほどがあるな。

『カイリ……。カレン、アスカ……、すまない。シンを救えなかったことを許してほしい。』

 俺は3人への贖罪の言葉のを口にした。
 3人は、涙を浮かべるも必死で耐えていた。
 ここで泣いてはいけないと……

 スキル【レベルドレイン】!!
 
 俺は、シンの身体を乗っ取った強欲に向けてスキルを発動させた。
 効果はすぐに現れた。
 シンの身体からは、黒い靄の様なものが抜け出ていく。
 アスカがステータスを確認すると徐々にシンのレベル……生命力が減っていっていた。

[ん?!何ですかこれは⁉生命力が低下している?!どういうことです⁉プロメテウス!!これはどういうことです?!]

 突然の出来事に取り乱した強欲は、俺を睨んでいる。

[あなたですか!!今すぐやめなさい!!くそっ!!くそっ!!]

 必死になって体を動かそうとするも、まだ身体に馴染んでいなかったのか、全く反応していない様子だった。

「みんな、ごめん。カイリ……あり……が……」
「シン!!」

 シンが最後の抵抗を試みていたようだった。
 必死になって動こうともがくものの、シンの身体は言うことを聞かず、強欲へのスキルの効果が顕著に現れていいた。

[くそ!!その顔覚えました!!プロメテウス!!覚悟なさい!!]

 最後の強欲の言葉と共に、シンの身体は俺たちの前から霧散した。
 本当に消滅したのだ。
 後に残された物は、シンの装備一式だけだった。



 それにしても、レベルドレインは本当に鬼畜だった。
 シンが貯め続けたレベルを根こそぎ奪い取ったのだから……
 俺のレベルは今ので9レベル一気に上がったのだ。

 そしてさらに嫌なものを見てしまった。

ーーーーーーーーーー

基本情報

 氏名  :中村なかむら 剣斗けんと
 年齢  :35歳
 職業  :探索者F
 称号  :生命の管理者

ーーーーーーーーーー

生命の管理者:生命の殺生与奪・存在の権限を得た者に与えられる。

ーーーーーーーーーー

 何とも物騒な称号が付いたものだ。
 ただ、これは俺が背負うもので間違いないと思う。
 俺はシンを消滅させたのだから。

「じゃあ、シン達の装備を回収して帰ろう。自衛隊にも事の顛末を話さないといけないしね。」
「シン?誰ですか?」

?!?!?!?!?!?!?

 俺はその場で吐き出してしまった。
 カレンの言葉で理解してしまった。
 確かに消滅してしまったのだ。
 存在そのものが……

「ケントさん?!アスカ、回復魔法をお願い!!」
「先輩!!しっかりしてください!!」
「ケントさん!!ケントさ……」

 薄れゆく意識の中でカイリの声が聞こえた気がした。





ピチョン
ピチョン
ピチョン
ピチョン



 目を覚ますと、白い天井が目に入ってきた。
 ここは知らない場所だ。

「ケントさん!!」
「カイリ……。ここは?」

 辺りを見回すと、どうやら俺はベッドに横たわっていたようだ。
 そんな俺の横に、カイリが座っていた。
 その目には涙を溜めて、俺の手を握っていてくれた。
 どうやら心配かけてしまったようだ。

「ここは訓練施設の医療施設です。ケントさんがいきなり倒れてしまって。そしたら、私たちが第6層に向かったことを知った、自衛隊の方々がちょうど到着して、ここまで運んでくれました。」
「そっか……、ごめん。迷惑かけたね。」
「そんなことありません。あ、お医者さん呼んできますね。あと、みんなも。」

 そう言うと、ハンカチで目元を拭ってカイリは病室を出ていった。

ガラガラ

「あ、目を覚まされましたね。それにしても女性を泣かせるとは、中村さんも罪作りですね。」
「一ノ瀬さん……、冗談きついですよ。」

 カイリと入れ替わりで病室に入ってきたのは、自衛官の一ノ瀬さんだった。

「中村さんもなかなか無理をされる。『探索者型イレギュラー』の討伐は出来れば自衛隊に任せてほしかったですね。でも、ご無事で何よりです。」
「あの、ここまで運んでくれたのって……。」
「はい、私たちの部隊です。」
「そうでしたか、ありがとうございます。」
「これも我々の任務ですから、お気になさらず。ところで、いったい何があったんですか?突然倒れたと聞いていますが……。」

 俺は一ノ瀬さんに一連の出来事を説明した。
 もちろんスキルについても。

「それはまた……。中村さん、この件は私の処で一度留めます。おそらく国は中村さんを拘束する可能性が高いです。それほどまでに危険なスキルですから。その、シンと呼ばれた青年についても確認します。記憶だけなのか……、または記録もなのか。そこを調べないといけません。」
「一ノ瀬さん、今の会話でわかりました。おそらく、記憶からは抹消されています。訓練施設入り口での一件で、一ノ瀬さんはシンと会っていますから。それをわからなかった時点で、抹消は確定だと思います。」

 こいつは参ったな。
 たぶん俺は、今後ずっとマークされることになる。
 このスキルがどういうものなのか、どこまで通じるのか、それもわからないのだから。

「なるほど……わかりました。シンという青年に、私も会っているんですね。ですが、私にその記憶がない……つまりは記憶の抹消。存在の抹消だという結論。確かにその通りですね。まず、記録についてはこちらで調べます。どうか、周りには話さないでください。」

コンコンコン

「ケントさん、入りますね。」

「では、私はこれで。」

 そう言うと一ノ瀬さんは病室を後にした。

「ケントさん、今のって一ノ瀬さんですか?」

 カイリがみんなを連れて来たと同時に、一ノ瀬さんは病室を後にした。

「あぁ、カイリも会ったことあったんだっけ?」
「はい、前に一度。確か、探索者のストーカーがいて助けてもらいました。」
「そっか……」

 あの一件も、みんなの中ではすでに改ざんされているのか。
 つまり、シンを知るのは俺だけだってことか……
 何とも言えない後味の悪さがあるな。

「先輩大丈夫ですか?突然だったんでびっくりしましたよ。」
「そうね。ケントさんあまり無茶はしないでくださいね。あなたはこのパーティーのリーダーなんですから。」

 谷浦に心配されることになろうとはな……
 虹花さんには苦労かけてしまったかもしれないな。

 すると、谷浦が小声で俺に耳打ちしてきた。

「先輩……。あの時消滅させたのって……『シン』って子ですよね?」
「谷浦⁉」
「はい、その通りです。なぜか、俺は覚えています。おそらく、スキルの関係かもしれません。」

 『クリエイター』系のスキルか?!
 そうかこれは自称神の権能の一部を与えられたものだ。
 だから、このスキルホルダーはある意味摂理から独立しているのかもしれないな。

「谷浦、絶対にこの件について口を開くな。お前まで拘束される可能性がある。」
「マジっすか!?まぁ、この一件で考えればそうかもしれないっすね。」
「巻き込んで悪かった。」
「何2人で話し込んでるんですか~?」

 俺たちが小声で話していると、アスカが不思議そうな顔で覗き込んできた。

「いや、特にな。そうだ、あのあとってどうなったんだ。『探索者型イレギュラー』の装備品とか散らばってただろ?」
「はい、あれは回収して今自衛隊に確認作業してもらってます。持ち主……おそらくは死亡されているでそうが、わかれば返却する予定だそうです。」
「そうか、見つかるといいな。」
「そうですね。」

 病室にしんみりした空気が漂っていた。

 俺はきっとこの先も、この子たちに迷惑をかけるんだろうな。
 今回の件も含めて、俺と谷浦は普通の探索者としてやっていけるのか疑問になる。

 『クリエイター』系のスキル。
 『七つの大罪』系のスキル。
 『七つの美徳』系のスキル。

 分かっているだけでも物騒すぎる。
 これは可能性にしかすぎないが、おそらく『神話』系のスキルまたは称号が存在していそうだった。
 強欲が口にした【プロメテウス】という名前は、ギリシャ神話の【人に火を与えた神】だ。
 プロメテウスは、人間に〝火〟を与えることで、〝文明の進化〟を促した。
 なら、今回俺たちに与えられた〝スキル〟がこの〝火〟にあたるとしたら……それこそが〝生命の進化〟を促すトリガーとなったとしたら……
 考えるだけでも嫌になるな。
 あと、出て来た名前は【セフィロト】……と言えば生命の樹か。
 ユダヤ教のカバラでは『宇宙万物を解析する為の象徴図表』とされている。
 まさか、これも……

 いや、やめよう。
 これ以上考えても仕方がない。
 俺は一般人で、学者じゃない。
 いくら考えても憶測の域を出ることはないだろうから。

「おや、もう大丈夫そうですね。」

 カラカラカラとカートを押している看護師とともに、医官と思われる男性がやってきた。

「はい、ご迷惑おかけしました。」
「礼には及びません。それに、ここに運ばれる人の中では軽傷ってより、無傷ですからね。」

 医官の男性は、そう言いながら苦笑いをしていた。
 看護師から体温計を渡され、体温測定を行った。
 逆の腕では血圧を測っている。

「うん、大丈夫そうですね。自宅へ帰っていただいて結構ですよ。」
「ありがとうございます。」
「いえ、ではお大事に。」

 医官の男性は次の病室へと向かっていった。

「じゃあ、帰りますか先輩。」
「だな。」

 谷浦の言葉を受けて、俺たちは医療施設を後にした。

「ケントさん、おなかすきました!!」

 アスカが、いきなり大きな声でおなかすいたアピールを始めた。
 その声につられて、カイリとカレンも声を上げて、3人でおなかすいたの合唱を始めたのだ。
 思わす、俺は笑い出してしまった。
 きっと、俺の表情が暗いのを気にしていたんだと思う。
 だからあえてそうしたのだろう。

「そうだ、虹花さん。今回の探索の結果はどうなりました。」
「はい、第6層だけで一人頭15,000円強でした。第五層までの分を合わせても約2万円ですね。」

 あれ?意外と多いの?少ないの?微妙な金額だな。
 でも、日給2万って考えたら多いのか?

「ケントさん、これにはまだ『イレギュラー』討伐の報奨金が含まれていません。こちらについては後日になるそうです。金額も現在未定です。」
「虹花さん、毎回管理ありがとうございます。」

 うん、2万稼いだなら少しはいいかな。

「じゃあ、街に戻ったら何か食べに行こう。」
「「「ごちになります!!」」」

 え?まじで?!

「先輩……ごちです!!」
「ケントさん……ドンマイです。」

 5人ともにこやかに歩き出していく。
 まぁ、心配かけたしな。

 シンの事。
 スキルの事。
 これからの事。
 いろいろ考えないといけないけど、今は生き残ったことを素直に喜ぼう。



 そして俺たちは、これから起こるであろう悲劇をまだ知らなかった……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...