最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
55 / 131
第0章 ???

000-2 前日譚 もたらされた火

しおりを挟む
『えぇ、それではこれで安全保障理事会を終了とします。』

 イヤホンからは通訳の声が聞こえてきた。
 キシワダは、今回もほとんどの議題で蚊帳の外に置かれていることに歯噛みしていた。
 日本の立場をいくら伝えたところで、常任理事国のアメリカ・中国・ロシア・イギリス・フランスの5か国のどこかしらの反対を受け、話が前に進まないのだ。

「またしても先延ばし……。いつまでこの敗戦国のレッテルが付いて回るのやら。」

 キシワダは、執務室の机の前に設置された多数のモニターに目をやる。
 いくら安保理に参加できているとは言え、非常任理事国ではほとんど意見が通らないのだ。

「くそ、あと一歩のところを……」

ガン!!

 キシワダは拳を強く握りしめて机を叩いた。
 激しく拳を打ち付けられた机は壊れることはなく、その重量もありびくともしなかった。
 それはそうだろう、高齢男性の打撃力などたかが知れているのだから。
 しかし机の上の書類は無事とは言えなかった。
 その衝撃で床に散乱し、それを見ていた秘書が慌てて書類を拾い集めていた。

「すまん。感情的になってしまったな。国のトップがこれでは先が思いやられるな。」

 疲れた表情で無理に笑顔を作るキシワダを見て、秘書の男性は心が痛くなっていた。

「先生は、立派に勤め上げているではありませんか。何を卑屈になるのです。堂々としていましょう。」
「ありがとう、青木。」

 書類を拾い集めた青木は、机に書類を戻し、キシワダに話しかけた。

「そう言えば先生。この後の昼食はいかがなさいますか?普段であれば、この後面会があるのですが、珍しく本日は予定がありません。」
「そうか……。ならば青木、一杯付き合ってくれないか。今日は少し飲みたい気分だ。」
「お付き合いいたします。」

 そう言うと青木は昼食の準備の為、執務室を立ち去ろうとした時だった。

ピロリンピロリン

 突如キシワダのスマホが鳴り始めたのだ。
 執務室にいる間は常にマナーモードのはず。
 キシワダは訝しがりながらスマホを操作した。
 しかし、何をやっても音が鳴りやむことはなかった。

『はろ~~~~~~~諸君。私は神です!!』

 スマホから聞き覚えのないが聞こえだした。
 驚いたキシワダはスマホを床に落としてしまい、慌てて拾いなおした。

「こ、これはいったい……。」
「先生!!安全保障理事会事務より連絡です。すぐにオンライン回線を開けるようにとのことです!!」
「わ、わかった。すぐにやってくれ。しかし、これはいったいなんだんだ。何が起こっているのだ。」

 急遽つなげた会議の映像に本来であれば集まっていたであろう、国連安全保障理事会会議場が映し出されていた。
 その円卓の中央に1人の人物が立っていた。
 その人物はピエロに近い服装で、白地に金の刺繍が入ったローブを羽織っていた。
 顔にはピエロの仮面をしており、表情や性別までは確認できなかった。

『あ~、あ~。聞こえますか?聞こえますか?私の言葉通じますか?』

 その人物から発せられる声は、一応聴きとることはできた。
 しかし、ノイズが混じったかのような声に、何やら不気味さを感じてしまう。

『では先に諸君にプレゼントを差し上げよう。』

 そう言うと、その人物はパチンと指を鳴らした。
 それと同時にキシワダのスマホが光り出し、光の球体に包まれていった。
 光が収まると、またいつものスマホに戻ったように見えた。

「これで私の声が聞こえたかな?」

 先程までとはうって変わって、ノイズの無いクリアな声が聞こえてきた。
 いったい何が起こったのか。
 キシワダは困惑の色を隠せないでいた。

「それじゃあ、もう一つ。」

 その人物はまた指をパチンと鳴らした。
 するとどうだろうか、キシワダの目の前に同じ様相の人物が突如として現れたのだ。
 モニターを確認すると、どうやら各参加者の目の前にも現れたようだった。
 つまりはその人物が同一人物なら16人存在しているということだ。
 これはあり得ない。
 そう思うしかなかった。

「先生、アメリカのライデン様より直接ラインでの入電です。」
「繋げ。」

 青木が小声で、ライデンからの入電を知らせた。
 その人物に悟られないように通話を開始した。

「キシワダ。これはどういうことだ。」
「わからない。としか言えない。」
「「え?」」

 キシワダとライデンは、互いに驚きを隠せなかった。
 その理由は、通訳を介していないのにもかかわらず、会話が成立したからだ。

「お、ご理解いただけたみたいですね。」

 ピエロマスクの人物は、愉快そうに体を揺らして笑っていた。
 その動き一つ一つが、より一層不気味さを醸し出している。

「先ほど皆さんに与えたのは共通スキルとして、【世界共通言語】と【インベントリ】の二つです。その恩恵であなた方は言葉の壁がなくなったのですよ。」

 有り得ない。
 有り得るはずがない。
 空想の世界ならばいざ知らず、そのような非現実的なことが起こり得るはずがない。
 そうキシワダは自分に強く言い聞かせていた。

「さて、そろそろ本題に入りましょうか。」

 モニター越しに参加者全員が混乱しているのが伝わってくる。
 キシワダも同じく、何が始まるのかが全く読めない。
 むしろ、目の前のこの人物はいったい何者なのかすらつかめずにいるのだ。

 その人物は一つ咳ばらいをすると、驚きの言葉を口にした。

「私はこの世界の管理者の使いです。我が主はこの世界に退屈を覚えてしまいました。したがってこの世界を再構築します。」

 意味が分からなかった。
 この世界の管理者?我が主?世界を再構築?

「何を言ってるね?意味が分からないね。ちゃんと説明してほしいね。」

 中国のワンが説明を求めて騒いでいる。
 キシワダも同じ意見だ。
 モニター越しのメンバーも同じように説明を求めると強く言っている。

「言葉のままなんですがね?世界の摂理をすべて書き換えます。つまりは、今まで通り、あなた方人間が、世界の頂点であることは無くなるということです。」
「人間が世界の頂点でなくたるとはどういうことだね?意味が分からないのだが……」

 その人物の言葉に反応したのは、ライデンだった。
 さすがはライデンというべきか。
 世界の頂点は我がアメリカだ!!とでも言いたげに不満をあらわにしていた。

「そうですね~。面倒なのではっきり言いますが、来年の今日。すべての【生物】の【進化】を開始させます。それは人だけに限らないということ。その【進化】の一端を教えてあげましょう。先ほど諸君の端末に改造を施しました。見てみればわかりますよ。」

 キシワダは慌ててスマホを確認した。
 そこには見知らぬ文字が表示されていた。

個人情報▼
インベントリ▼

 いったいこれは……

 さらにその人物は話を続けていく。

「あなた方15名が最初の対象者です。ここは世界の安全を守る者たちの集いなのでしょ?うってつけのメンバーではありませんか。というわけで、あなた方には強制的に【進化】していただきます。」

 そう言うとその人物はまたパチンと指を鳴らした。
 と、同時にキシワダは悲鳴を漏らした。
 体全体に強烈な痛みが襲ってきたのだ。
 さらには頭も割れるように痛い。

「先生!!誰か!!誰か医者を!!」

 うろたえる青木を余所に、その人物はカラカラと笑っていた。

「おつきの方々、心配には及びませんよ。もうすぐ【進化】は完了しますから。」

 次第に痛みは落ち着き、粗くなっていた呼吸も元に戻っていく。
 キシワダは若干痛みの残る体を起こし、椅子へ座りなおした。

「それではお待ちかねの確認タイムです。ほら、端末の個人情報を触ってみなさい。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...