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第0章 ???
000-3 前日譚 魔王
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キシワダは言われるがまま、スマホを操作した。
そして愕然とした。
思考は止まりかけ、どう判断していいのか迷いが生じてしまった。
即断即決が売りのはずの自分が、戸惑いを隠せなかったのだ。
恐らく【進化】したのだろう。
だが、その進化は嬉しいものではなかった。
——————
基本情報
氏名 :岸和田 二三男
年齢 :67歳
職業 :内閣総理大臣
称号 :魔王
スキル
共通 :世界共通言語 レベル無し
インベントリ レベル1
ユニーク:ダンジョンマスター レベル1
——————
どうやら【魔王】とやらになってしまったらしい。
モニター越しのメンバーもその内容に狼狽えていたのが見えた。
「この内容は何なんですか?!からかうにもほどがありますよ!!」
最初に騒ぎ出したのはイギリスのメアリーだ。
鉄の女と称されるほど冷静沈着を絵にかいたような人物が、我を忘れて騒ぎ立てていた。
その言葉を境に各国の首脳は堰を切ったようにさわぎだした。
岸和田とて冷静でいられなかった。
バカ騒ぎをすることはなかったが、正直これは何かの冗談であることを願ってやまなかった。
パンパン!!
その人物は皆に静まる様に手を強く叩いた。
「諸君は確認できましたか?おめでとうございます。あなた方は人間の敵【魔王】に就任しました。【生物の進化】を果たした諸君にはこれよりゲームを行ってもらいます。それはこの星の【生物】の生存権をかけた戦いの始まりです。」
やはり理解しがたい。
その人物の言っている意味が分からないのだ。
岸和田はなぜ自分たちが【魔王】とならなければならないのか納得できずにいた。
「これから一年後、世界に【ダンジョン】を発生させます。諸君らにはその管理をしてもらいます。見返りはダンジョンよりもたらされる資源。しかし、これにも制約を設けます。初期のダンジョンはそれはそれは弱いダンジョン。すぐに攻略されてしまうでしょう。攻略されたダンジョンは資源の生成ができなくなります。つまりただの洞窟となるのです。」
ダンジョン資源……
いったい何なんだ。
話についていけない。
それが全員の心の内だ。
「ダンジョンに人間が入り攻略活動を行うと、諸君には【ダンジョンポイント】が付与される。そのポイントを使ってダンジョンを強化していくのです。まあ、それについては各々で確認してください。すべてを伝えても楽しくないでしょうからね。」
参加者全員、すでに怒りの限界だった。
それも無視してその人物は話を続ける。
「そんな諸君に一つヒントを差し上げましょう。はいっと。」
その人物がまた指を鳴らすと、岸和田の目の前に二つの物体が姿を現す。
一つは空中にふわりと浮かぶ赤く輝く石のような物体。
もう一つは何やら装置のような大掛かりな物体だった。
「その石の名は【魔石】。この世界に新たに誕生した【魔素】という元素の集合体である気体を、純エネルギー体である【魔力】によって圧縮されたものです。そして、その装置はその【魔石】の中の【魔力】によって稼働する魔道具【簡易魔導機関】。どういうことはわかりましたか?つまり、エネルギー革命です!!まあ、信じる信じないは諸君にお任せしますよ。ついでですので、この会議場にもワンセット置いていきましょう。これを研究するなりなんなりは諸君にお任せします。」
その人物はそう言うと、また指をパチンと鳴らすと岸和田の前から姿を消してしまった。
モニターには会議場に居るその人物の姿が見える。
「それではある程度の説明は終わりですね。おっと、いけない。名のり忘れていましたね。私の名は【プロメテウス】。我が主の名は【セフィロト】。【神々の書庫】の主である。」
「そうか、確かプロメテウスは【人に火を与えた神】。つまり貴様は〝自分は神だ〟とでも言いたいのか?!」
そう憤ったのはライデンだった。
ライデンは根っからのキリスト教信者だ。
ライデンは〝神=キリスト〟を疑っていない。
だからこそ、自分を神だと自称するプロメテウスが理解できないのだった。
所詮は神話の中の住人。
それがライデンの答えだ。
「なるほど、貴方はキリスト教の信者ですね?なるほどなるほど。神が神たる由縁は何かわかりますか?」
「その奇跡の御業にあるに決まっている!!」
憤りながらも誇らしげに答えたライデンに、プロメテウスは満足げに頷いて見せた。
「確かにそうですね。それが神が神たる由縁ですね。ではその御業の根源がどこにあるというのでしょうか。もしそれが諸君に与えたスキルだとしたら……どうです?」
「な!?そ、そんなわけがないだろう!!」
プロメテウスの言葉に動揺を隠せなくなったライデンは、声を荒げるしかできなかった。
「おかしいですね?今あなたが体験したはずでは?キリストにその力を与えたのは私ですよ?与えたスキルは【残魂(ざんこん)】。残りの魂の数だけ生き返ることができるスキルです。なかなか面白いでしょ?遺体が焼かれようが何しようが、魂の数だけ復活ができるのです。」
それを聞いたライデンは開いた口が塞がらなかった。
今まで信じてきたことが、スキルのたった一言で片づけられてしまったのだ。
だがこれと言って深い信仰心のない岸和田は、その言葉で理解してしまった。
おそらく、この世界の偉人や英雄、神と言われる人物のほとんどが、スキルの恩恵を受けたものだということに。
「それに私は聖書が嫌いなのです。我が主が与えたタダの神々の道楽でしかないものを神格化させ、あたかもそれが真実であるかのように広めていった。事実を捻じ曲げるほどに強い力を持ってしまった。今すぐにでも消し去りたい気持ちでいっぱいだ!!」
プロメテウスは、突然怒りを滾らせていた。
その殺気に画面越しと言えども、メンバーもたじろぐほどのものだった。
「失礼しました。話がそれましたね。まぁ、この世界の本のすべての原型が神々の書庫からもたらされたものと理解ください。」
もう何が何だかわからなかった。
岸和田は、プロメテウスからもたらされた言葉を疑うことを諦めていた。
疑ったところで何も変わらないと思ったからだ。
ライデンはまだ立ち直れずにいた。
他にも数名うなだれてしまっていた。
そんなことよりも、自分たちが魔王になったことを考えないといけない。
「ではこれで私は失礼済ます。あとは諸君の頑張り次第だということを理解ください。あ、そうそう。不甲斐ないようならば再度介入しますのでご留意ください。ではまた。」
そう言い残すと、プロメテウスは会議場からも姿を消したのだった。
それから各国の動きは激動と言えるものだった。
もたらされた魔石の解析。
魔素・魔力の解明。
何よりも首脳陣の魔王化に伴う政権運営。
ダンジョンが出現した際の対応についての取り決めや法整備。
一年でそのすべてを完了させなくてはならなくなったのだ。
岸和田は寝る間も惜しんで行動を起こしていた。
自身に与えられたダンジョンマスターなるスキルについても、自らが実験台となりその研究を進めていった。
そんなこんなであっという間に1年が過ぎ、ついにその日がやってきた。
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神デス!!』
世界の人々の前にプロメテウスがその姿を現したのだ。
これから始まる激動の世界に、岸和田は緊張を隠せないでいた。
岸和田達15人の首脳陣はこれからが本番なのだ。
【ダンジョンマスター】として、己の命を懸けた戦いが始まったのだった。
そして愕然とした。
思考は止まりかけ、どう判断していいのか迷いが生じてしまった。
即断即決が売りのはずの自分が、戸惑いを隠せなかったのだ。
恐らく【進化】したのだろう。
だが、その進化は嬉しいものではなかった。
——————
基本情報
氏名 :岸和田 二三男
年齢 :67歳
職業 :内閣総理大臣
称号 :魔王
スキル
共通 :世界共通言語 レベル無し
インベントリ レベル1
ユニーク:ダンジョンマスター レベル1
——————
どうやら【魔王】とやらになってしまったらしい。
モニター越しのメンバーもその内容に狼狽えていたのが見えた。
「この内容は何なんですか?!からかうにもほどがありますよ!!」
最初に騒ぎ出したのはイギリスのメアリーだ。
鉄の女と称されるほど冷静沈着を絵にかいたような人物が、我を忘れて騒ぎ立てていた。
その言葉を境に各国の首脳は堰を切ったようにさわぎだした。
岸和田とて冷静でいられなかった。
バカ騒ぎをすることはなかったが、正直これは何かの冗談であることを願ってやまなかった。
パンパン!!
その人物は皆に静まる様に手を強く叩いた。
「諸君は確認できましたか?おめでとうございます。あなた方は人間の敵【魔王】に就任しました。【生物の進化】を果たした諸君にはこれよりゲームを行ってもらいます。それはこの星の【生物】の生存権をかけた戦いの始まりです。」
やはり理解しがたい。
その人物の言っている意味が分からないのだ。
岸和田はなぜ自分たちが【魔王】とならなければならないのか納得できずにいた。
「これから一年後、世界に【ダンジョン】を発生させます。諸君らにはその管理をしてもらいます。見返りはダンジョンよりもたらされる資源。しかし、これにも制約を設けます。初期のダンジョンはそれはそれは弱いダンジョン。すぐに攻略されてしまうでしょう。攻略されたダンジョンは資源の生成ができなくなります。つまりただの洞窟となるのです。」
ダンジョン資源……
いったい何なんだ。
話についていけない。
それが全員の心の内だ。
「ダンジョンに人間が入り攻略活動を行うと、諸君には【ダンジョンポイント】が付与される。そのポイントを使ってダンジョンを強化していくのです。まあ、それについては各々で確認してください。すべてを伝えても楽しくないでしょうからね。」
参加者全員、すでに怒りの限界だった。
それも無視してその人物は話を続ける。
「そんな諸君に一つヒントを差し上げましょう。はいっと。」
その人物がまた指を鳴らすと、岸和田の目の前に二つの物体が姿を現す。
一つは空中にふわりと浮かぶ赤く輝く石のような物体。
もう一つは何やら装置のような大掛かりな物体だった。
「その石の名は【魔石】。この世界に新たに誕生した【魔素】という元素の集合体である気体を、純エネルギー体である【魔力】によって圧縮されたものです。そして、その装置はその【魔石】の中の【魔力】によって稼働する魔道具【簡易魔導機関】。どういうことはわかりましたか?つまり、エネルギー革命です!!まあ、信じる信じないは諸君にお任せしますよ。ついでですので、この会議場にもワンセット置いていきましょう。これを研究するなりなんなりは諸君にお任せします。」
その人物はそう言うと、また指をパチンと鳴らすと岸和田の前から姿を消してしまった。
モニターには会議場に居るその人物の姿が見える。
「それではある程度の説明は終わりですね。おっと、いけない。名のり忘れていましたね。私の名は【プロメテウス】。我が主の名は【セフィロト】。【神々の書庫】の主である。」
「そうか、確かプロメテウスは【人に火を与えた神】。つまり貴様は〝自分は神だ〟とでも言いたいのか?!」
そう憤ったのはライデンだった。
ライデンは根っからのキリスト教信者だ。
ライデンは〝神=キリスト〟を疑っていない。
だからこそ、自分を神だと自称するプロメテウスが理解できないのだった。
所詮は神話の中の住人。
それがライデンの答えだ。
「なるほど、貴方はキリスト教の信者ですね?なるほどなるほど。神が神たる由縁は何かわかりますか?」
「その奇跡の御業にあるに決まっている!!」
憤りながらも誇らしげに答えたライデンに、プロメテウスは満足げに頷いて見せた。
「確かにそうですね。それが神が神たる由縁ですね。ではその御業の根源がどこにあるというのでしょうか。もしそれが諸君に与えたスキルだとしたら……どうです?」
「な!?そ、そんなわけがないだろう!!」
プロメテウスの言葉に動揺を隠せなくなったライデンは、声を荒げるしかできなかった。
「おかしいですね?今あなたが体験したはずでは?キリストにその力を与えたのは私ですよ?与えたスキルは【残魂(ざんこん)】。残りの魂の数だけ生き返ることができるスキルです。なかなか面白いでしょ?遺体が焼かれようが何しようが、魂の数だけ復活ができるのです。」
それを聞いたライデンは開いた口が塞がらなかった。
今まで信じてきたことが、スキルのたった一言で片づけられてしまったのだ。
だがこれと言って深い信仰心のない岸和田は、その言葉で理解してしまった。
おそらく、この世界の偉人や英雄、神と言われる人物のほとんどが、スキルの恩恵を受けたものだということに。
「それに私は聖書が嫌いなのです。我が主が与えたタダの神々の道楽でしかないものを神格化させ、あたかもそれが真実であるかのように広めていった。事実を捻じ曲げるほどに強い力を持ってしまった。今すぐにでも消し去りたい気持ちでいっぱいだ!!」
プロメテウスは、突然怒りを滾らせていた。
その殺気に画面越しと言えども、メンバーもたじろぐほどのものだった。
「失礼しました。話がそれましたね。まぁ、この世界の本のすべての原型が神々の書庫からもたらされたものと理解ください。」
もう何が何だかわからなかった。
岸和田は、プロメテウスからもたらされた言葉を疑うことを諦めていた。
疑ったところで何も変わらないと思ったからだ。
ライデンはまだ立ち直れずにいた。
他にも数名うなだれてしまっていた。
そんなことよりも、自分たちが魔王になったことを考えないといけない。
「ではこれで私は失礼済ます。あとは諸君の頑張り次第だということを理解ください。あ、そうそう。不甲斐ないようならば再度介入しますのでご留意ください。ではまた。」
そう言い残すと、プロメテウスは会議場からも姿を消したのだった。
それから各国の動きは激動と言えるものだった。
もたらされた魔石の解析。
魔素・魔力の解明。
何よりも首脳陣の魔王化に伴う政権運営。
ダンジョンが出現した際の対応についての取り決めや法整備。
一年でそのすべてを完了させなくてはならなくなったのだ。
岸和田は寝る間も惜しんで行動を起こしていた。
自身に与えられたダンジョンマスターなるスキルについても、自らが実験台となりその研究を進めていった。
そんなこんなであっという間に1年が過ぎ、ついにその日がやってきた。
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神デス!!』
世界の人々の前にプロメテウスがその姿を現したのだ。
これから始まる激動の世界に、岸和田は緊張を隠せないでいた。
岸和田達15人の首脳陣はこれからが本番なのだ。
【ダンジョンマスター】として、己の命を懸けた戦いが始まったのだった。
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