最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第4章 変革

054 明かされる事実と欲望の先

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「これはいったいどういうことなんでしょうか?」

 俺は精いっぱい睨みを効かせて、吉村を見つめる。
 それすらも意に介していないようで、その表情は崩れることはなかった。

「すまんな。君にはある種の催眠を施させてもらっている。そこの後ろに控える一ノ瀬がそうだ。」

 ?!?!⁉
 どういうことだ⁉
 どうして一ノ瀬さんがそんなことを⁉
 一ノ瀬さんはずっと俺の事を……?!

 それにしても、どうして俺はこんなに一ノ瀬さんを信用しているんだ!?
 初めて出会ったのだって、探索者講習会の時だったはず。
 それにきちんと話をしたのだって、さほど多いわけじゃない。
 なのにどうして?!

「すみません中村さん……あなたをずっと監視していました。あなたの保有スキルが、我々が探しているスキルだったものですので。監視対象とさせていただいていました。」

 意味が分からない。
 探していたスキルってどういうことだ?
 【スキルクリエイター】の事か?
 くそ⁉俺はこれからどうなるんだ!?

「そんなに怯えなくてもいい。まあ、ネタバラシではないが少し話をしよう。まずは君に精神支配をかけたことを詫びよう。これには明確な理由がある。」

 吉村がそう言うと、一ノ瀬さんが話を引き継いだ。

「中村さん、改めて謝罪をさせてください。申し訳ない。私はあなたのスキルを確認してからずっと監視していました。」

 一ノ瀬さんはとても申し訳なさそうにして、俺に頭を下げた。

「それと、訓練施設の受付にはステータスを確認できる人材を配置しています。そこで中村さんのスキルを確認したところ、【クリエイト系】スキルを保有していると確認ができたのです。」

 なるほど、訓練施設はそういった意味合いもあったのか。
 あそこは探索者になるためには必ず行かなければならない施設だ。
 他にも各県ごと訓練施設がもうけられているはずだから、監視網はしっかりと構築されているんだろうな。
 これなら、探索者を目指す人のスキルは把握しやすくなるというわけだ。

「そして私のスキルは【支配系】スキル。スキル【精神支配】です。これにより、中村さんの精神に干渉して、私を信じやすくなるように仕向けていました。」

 それで俺は、一ノ瀬さんを常に頼るようになっていたのか。
 確かにこれまでも、何かと一ノ瀬さんに相談に行っていたな。

「【神の権能】と呼ばれるスキルが存在します。それが【クリエイト系】【支配系】【七つの大罪系】【7つの美徳系】です。中村さんもおそらくお気付きでしょう。神の権能のスキルホルダーであることを。」
「……はい。」

 俺は頷くことしかできなかった。
 まさしくそうなのだから。

「それともう一つ謝ります。私もシン君の事を忘れてはいません。これは神の権能のスキルホルダーが、世界の理から外れている示唆に他なりません。」

 やっぱりか、話の流れからしてそうじゃないのかと考えていた。
 俺にバレないようにするために、あえて演技をしていたのだろうな。
 さすがとしか言いようがなかった。

「あなたを監視していたことによって、あなたの事を助けることが出来たというわけです。」

 なるほどね。
 だから不自然なまでに、一ノ瀬さんは俺の前に現れたのか。
 何か問題があるたびに、一ノ瀬さんが助けに入ってくれた。
 今考えると、おかしい話なのだ……
 あれ?じゃあ、今きちんと考えられているってことは。

「お察しの通り、支配は解除しています。体もきちんと動くはずです。」

 そう言われて俺は、自分の体を動かしてみた。
 先程まであった、強い力で抑えられる感じは全くしなかった。
 つまり、精神支配によって、肉体も連動して支配されていたというわけか……

「では本題に入ろうか。」

 一ノ瀬さんの話がひと段落すると、吉村は改めて話を引き継いだ。
 一ノ瀬さんは終始申し訳なさそうだったが、こいつは全く悪びれる様子すらなかった。

「まず、我々自衛隊は【神の権能】のスキルホルダーを探している。今我々の手元にいるのは4名。【精神支配】、【マジッククリエイター】、【寛容】、そして君の【スキルクリエイター】だ。」

 指折り数えながら話す吉村に、何とも言えない違和感を感じた。
 そもそも協力するとはまだ言っていないのにもかかわらず、すでに自分の手駒のような話しぶりだ。
 正直こいつを信用してはいけないと思えた。

「そして最終的には、すべてのスキルホルダーを集めるつもりだ。それはなぜかわかるか?スキルホルダーでなければ、ダンジョンを完全攻略出来ないのだ。つまり、その戦力を多く手に入れた国は、この世界の最強になれるということだ。」

 始まったよ……ドンだけなんだ。
 絶対現れるよな、こういうやつって。

 そして、吉村から語られる話は夢無双の物語だった。
 今まで虐げられてきた日本が、世界を牛耳る。
 世界の覇者となると……
 むしろ俺はこいつに絶対力を貸したくない。
 こいつに世界を任せてはいけないと思った。

「おっとすまないね……。ここ数日暴走気味で仕方ない。」

 暴走……?
 これ……どこかで見たような……
 まさか!?

「誰か!!こいつを鑑定してくれ!!早く!!」

 俺が慌て吉村を鑑定するように頼んだ。

「誰か!!幕僚長に【生物鑑定】を!!」

 一ノ瀬さんは俺の慌てた様子を察して、部下に鑑定を指示した。
 指示された部下は、すぐにスキルを発動させた。
 そして、その内容を見て慌てふためいていた。

——————

 氏名  :吉村よしむら 良秀よしひで
 年齢  :56歳
 職業  :陸上自衛隊 陸上幕僚長
 称号  :欲深き暴君

スキル

 共通  :世界共通言語 レベル無し
      インベントリ レベル2
 
 ユニーク:強欲

——————

 やっぱりか!!
 こいつも【強欲】に精神干渉を受けているんだ!!

「一ノ瀬さん!!こいつはスキルから精神干渉を受けています!!一ノ瀬さんなら止められるんじゃないですか!?」
「やってみよう!!」

 一ノ瀬さんは慌てて精神支配を発動させる。
 すると、すぐに効果が出始めた。
 吉村の体から、何か靄のようなモノが抜けていくのが見えた。
 次第に吉村の表情が柔らかくなっていく。

「ここは……、いったいなぜ私がここにいるのだ?なぜ皆私に銃を向けているのだ⁉」

 吉村は周囲の様子に困惑しているようだった。
 それはそうだろう、突然暴走していく上司を見ていたら誰だって疑心暗鬼になる。
 俺だって警戒を解除していない。

「覚えていらっしゃらないのですか⁉」

 吉村と一緒に入ってきた男性も驚きを隠せないでいた。

「中村さんありがとうございます。助かりました。」
「いえ、シンとの闘いがここに生きてくるとは思いませんでしたけどね。」

 そうとしか言いようがない。
 シンもまたスキルからの精神干渉で暴走してしまい、最後はスキルに飲み込まれてしまったのだから。
 吉村は運が良いと言っていいのかもしれない。

「幕僚長。あなたに【強欲】が発現しています。おそらくそれの影響で暴走されたと思われます。」
「それは本当か?!私は何ということを……何か被害は出たのかね?!」

 さっきまでとは違う感じのおじさんに、大変身してしまった。
 これじゃあ、怒るに怒れないな……

 一ノ瀬さんから大体の経緯を聞いた吉村は、ここにいた人間に頭を下げた。
 まさか隊のトップが頭を下げるとは思わず、面食らってしまった。

「それにしても問題だな。この強欲は強力過ぎる。一ノ瀬助かった。」
「いえ、礼は私にではなく中村さんに。いち早く異変に気が付き、そのおかげで対応が迅速に行えました。」
「そうだったか。中村君、ありがとう。」

 もう一度深々と吉村が頭を下げるのだった。
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