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第4章 変革
055 お願い
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「さて、今回の件についての謝罪は改めてさせてもらうとして、一ノ瀬。」
「はい。」
ソファーに座りなおした吉村は少し頭を抱える様子を見せた。
緊急事態とはいえ強力な精神支配を強制的に喰らったのだから、精神的ダメージを負ったとしても何らおかしな話ではなかった。
「彼の……、中村君のスキルについてもう一度教えてくれないか。」
「はい、中村さんのスキルは【スキルクリエイター】で間違いありません。我らが集めている【神の権能】の一つです。さらに彼のパーティーメンバーに1人、【シールドクリエイター】の確認もできております。」
さすがは一ノ瀬さんというところなんだろうか。
まあ、ダンジョン入り口で網を張られている以上、必ずばれるというわけか。
だますとしたら、【隠匿】とかが必要になるかな。
「まずはスキルクリエイターから説明です。現在判明していることは、中村さん自身のレベルを使用して、『新たなスキルを“習得”できる。』そうです。そのほか派生スキルで、【スキルコンバート】【スキルカスタマイズ】【スキルアップグレード】があるそうです。派生スキルについてはまだ検証中とのことでした。」
あれ?一ノ瀬さんの説明が一部おかしい。
故意に隠したのか、それとも間違ったのか……
俺にはその意図がわからなかった。
そばにいるスキル【生物鑑定】を保有した自衛官に鑑定されればすぐにばれてしまうのに。
ただ、先ほどの緊急事態の対応の様子を見る限り、その自衛官はどちらかと言えば一ノ瀬さんサイドの人間に思えた。
「なるほどな。つまり、せっかく上げたレベルを犠牲にして、スキルを習得すると。そうなると、強くなることが難しいのではないのか?」
「おっしゃる通りです。中村さんは強くなりづらいことになります。おそらく【クリエイター系】のスキルホルダーは全員そういったリスクを負っていると愚考します。」
【マジッククリエイター】の保有者がいるんだから、これについてもボーナスポイントの振り分けの裏技について把握しているんじゃないのか?
ただ、吉村の言動的に考えて、知らないようにも思えた。
どうやら自衛隊とて一枚岩ではないということかな。
「なるほど。我々の戦力と考えるのは難しいというわけだな。」
「はい。その通りです。」
「わかった。」
一ノ瀬さんから話を聞いた吉村は、ソファーに深く座りなおし思考の海へとダイブしていった。
俺はどうしていいかわからず、お茶を飲みながら待つことにした。
しばらくすると、吉村は思考を終えて俺を見つめてきた。
「中村君。君はレベル上げで強くなることは難しい。そう考えてもいいんだね?」
「そうですね。おそらくそうなると思います。ただ、これ以上スキルを取らないなら、レベルを上げていくことは問題ありません。結果どちらを取るかという話になります。」
「そうか。わかった。君のスキルにさほど危険性が無いことは理解した。しかし、ダンジョン攻略の点では君の力が必要だ。そこで、我々としては有事の際に協力要請を出すということにしたい。頼めるかな?」
つまり、半分繋がりを持っておきたい。
だけど、自由にはしていていい。
そう言った感じだろうか。
特に断る理由もないし、受けるしかないかな。
「わかりました。俺自身どれだけ役立つか分かりませんが、その時はご協力いたします。」
「うむ、よろしく頼む。では話は以上だ。一ノ瀬、中村君を送って差し上げろ。」
「はっ!!」
そう言い残すと、中村は部屋から出ていった。
正直、【強欲】をどうするのか気になるところだけど、暴走しないでもらえると嬉しいかなって思ったりする。
「では中村さん。ご足労いただき、ありがとうございました。これからご自宅まで送りますので、また玄関まで移動を願います。」
「わかりました。」
俺は中村さんの後をついて、部屋を後にした。
それにしても、どうして一ノ瀬さんはあのような話をしたのだろうか。
ばれたらかなりまずいんじゃないだろうかと思ってしまう。
「中村さん。車内で少し大事なお話が有ります。それまでは口を閉ざしていただけると、助かります。」
「わかりました。」
それはきっとこの施設内で話せない内容なんだろうな。
それを伝えて声も俺に届くかどうかのぎりぎりの声だったから。
また厳重なセキュリティーを抜けると、朝の隊員の方が待っていてくれた。
「お待ちしておりました!!」
これまた元気な声で挨拶してきたのは、朝と同じ隊員の方だった。
自衛隊員ってみんなこんな感じなんだろうかと思ってしまった。
「児島一曹、出迎えご苦労様。中は問題ありませんか?」
「はっ!!ご要望通りとなっております!!」
「わかりました、ありがとう。では中村さん中へ。」
へ~、児島さんって言うんだ。
あれか?大島さんって一回呼んでみるといいのかな?
車に乗り込んだ俺と一ノ瀬さんは、児島さんの運転で自宅への帰路へとついた。
「そういえば一ノ瀬さん。上司に“うその報告”してもよかったんですか?」
「そのことですか?“うそ”はついてませんよ?」
確かに“うそ”は言ってないね。
話してないだけで……
「でも、どうしてそんなことを?いずればれるでしょう?」
「そうですね。それについてもお話します。まずは今回の件ですが、内部で意見が割れております。というよりも、日本の政治が割れています。ダンジョンをクリアすべきか否か。」
どういうことだ?
ダンジョンは攻略して、資源を集めろって言いだしたのは政府だろう?
それなのに意見が割れてるってどういうことだ?
俺が話が見えないと首をひねっていると、一ノ瀬さんが追加説明をしてくれた。
「確かにダンジョンは探索が進めば、より上質な資源が手に入ります。しかし、クリアした場合は話が違います。すでに確認済みですが、ダンジョンがクリアされると、ただの洞窟になります。何も資源を生み出さない、ただの穴です。」
うわ~。
確かにそれはまずいな。
クリアしてしまったら、資源を回収できなくなってしまう。
そうすると、昨今の状況を考えると、国力低下になることこの上ないな。
「つまり、今現在は攻略しない方がいいという意見の方が優勢です。」
「まあ、それはそうですよね。資源がなくなるってことは他国からの輸入になるんだから。」
「ですので双方の陣営で攻略のカギである【神の権能】持ちを確保する動きが出てきております。」
なるほどね。
つまり、どちらの陣営としても、できれば俺を拘束したいってのが本音か。
「で、自衛隊は……。一ノ瀬さんはどっち派何ですか?」
「そうですね。私は〝攻略しなくてはいけない〟。そう考えています。」
「攻略派とは違うんですか?」
「神の権能を得たせいでしょうか。日常でとても違和感を感じる出来事が増えました。このままこの世界を、自称神の思い通りにしてはいけない。そう考えています。今はまだ、この状況が始まったばかりです。しかし、これが20年30年と続くとなれば話は変わります。この生活が〝当たり前〟になってからでは遅い。そう思うのです。」
確かに一ノ瀬さんの言っていることは正しい。
俺も違和感を覚えている。
そして、ダンジョンの外の生物が【生物の進化】を始めたことに危機感を抱いている。
近いうちに何かあるんじゃないかと。
「中村さん。出来れば私たちに協力してください。この世界を狂った世界を終わらせるために。」
「どうして一ノ瀬さんはそこまで……。」
一ノ瀬さんは、俺の質問に答えなかった。
ただ、何かを思案しているようにも思えた。
俺の自宅につく少し前。
一ノ瀬さんは意を決したように、話してくれた。
「中村さん。今から話す内容は他言無用でお願いします。児島一曹、君もです。」
「はっ!!」
「まずは、このダンジョンが発生した経緯についてお話します。」
一ノ瀬さんから聞いたその内容に、俺は唖然としてしまった。
「はい。」
ソファーに座りなおした吉村は少し頭を抱える様子を見せた。
緊急事態とはいえ強力な精神支配を強制的に喰らったのだから、精神的ダメージを負ったとしても何らおかしな話ではなかった。
「彼の……、中村君のスキルについてもう一度教えてくれないか。」
「はい、中村さんのスキルは【スキルクリエイター】で間違いありません。我らが集めている【神の権能】の一つです。さらに彼のパーティーメンバーに1人、【シールドクリエイター】の確認もできております。」
さすがは一ノ瀬さんというところなんだろうか。
まあ、ダンジョン入り口で網を張られている以上、必ずばれるというわけか。
だますとしたら、【隠匿】とかが必要になるかな。
「まずはスキルクリエイターから説明です。現在判明していることは、中村さん自身のレベルを使用して、『新たなスキルを“習得”できる。』そうです。そのほか派生スキルで、【スキルコンバート】【スキルカスタマイズ】【スキルアップグレード】があるそうです。派生スキルについてはまだ検証中とのことでした。」
あれ?一ノ瀬さんの説明が一部おかしい。
故意に隠したのか、それとも間違ったのか……
俺にはその意図がわからなかった。
そばにいるスキル【生物鑑定】を保有した自衛官に鑑定されればすぐにばれてしまうのに。
ただ、先ほどの緊急事態の対応の様子を見る限り、その自衛官はどちらかと言えば一ノ瀬さんサイドの人間に思えた。
「なるほどな。つまり、せっかく上げたレベルを犠牲にして、スキルを習得すると。そうなると、強くなることが難しいのではないのか?」
「おっしゃる通りです。中村さんは強くなりづらいことになります。おそらく【クリエイター系】のスキルホルダーは全員そういったリスクを負っていると愚考します。」
【マジッククリエイター】の保有者がいるんだから、これについてもボーナスポイントの振り分けの裏技について把握しているんじゃないのか?
ただ、吉村の言動的に考えて、知らないようにも思えた。
どうやら自衛隊とて一枚岩ではないということかな。
「なるほど。我々の戦力と考えるのは難しいというわけだな。」
「はい。その通りです。」
「わかった。」
一ノ瀬さんから話を聞いた吉村は、ソファーに深く座りなおし思考の海へとダイブしていった。
俺はどうしていいかわからず、お茶を飲みながら待つことにした。
しばらくすると、吉村は思考を終えて俺を見つめてきた。
「中村君。君はレベル上げで強くなることは難しい。そう考えてもいいんだね?」
「そうですね。おそらくそうなると思います。ただ、これ以上スキルを取らないなら、レベルを上げていくことは問題ありません。結果どちらを取るかという話になります。」
「そうか。わかった。君のスキルにさほど危険性が無いことは理解した。しかし、ダンジョン攻略の点では君の力が必要だ。そこで、我々としては有事の際に協力要請を出すということにしたい。頼めるかな?」
つまり、半分繋がりを持っておきたい。
だけど、自由にはしていていい。
そう言った感じだろうか。
特に断る理由もないし、受けるしかないかな。
「わかりました。俺自身どれだけ役立つか分かりませんが、その時はご協力いたします。」
「うむ、よろしく頼む。では話は以上だ。一ノ瀬、中村君を送って差し上げろ。」
「はっ!!」
そう言い残すと、中村は部屋から出ていった。
正直、【強欲】をどうするのか気になるところだけど、暴走しないでもらえると嬉しいかなって思ったりする。
「では中村さん。ご足労いただき、ありがとうございました。これからご自宅まで送りますので、また玄関まで移動を願います。」
「わかりました。」
俺は中村さんの後をついて、部屋を後にした。
それにしても、どうして一ノ瀬さんはあのような話をしたのだろうか。
ばれたらかなりまずいんじゃないだろうかと思ってしまう。
「中村さん。車内で少し大事なお話が有ります。それまでは口を閉ざしていただけると、助かります。」
「わかりました。」
それはきっとこの施設内で話せない内容なんだろうな。
それを伝えて声も俺に届くかどうかのぎりぎりの声だったから。
また厳重なセキュリティーを抜けると、朝の隊員の方が待っていてくれた。
「お待ちしておりました!!」
これまた元気な声で挨拶してきたのは、朝と同じ隊員の方だった。
自衛隊員ってみんなこんな感じなんだろうかと思ってしまった。
「児島一曹、出迎えご苦労様。中は問題ありませんか?」
「はっ!!ご要望通りとなっております!!」
「わかりました、ありがとう。では中村さん中へ。」
へ~、児島さんって言うんだ。
あれか?大島さんって一回呼んでみるといいのかな?
車に乗り込んだ俺と一ノ瀬さんは、児島さんの運転で自宅への帰路へとついた。
「そういえば一ノ瀬さん。上司に“うその報告”してもよかったんですか?」
「そのことですか?“うそ”はついてませんよ?」
確かに“うそ”は言ってないね。
話してないだけで……
「でも、どうしてそんなことを?いずればれるでしょう?」
「そうですね。それについてもお話します。まずは今回の件ですが、内部で意見が割れております。というよりも、日本の政治が割れています。ダンジョンをクリアすべきか否か。」
どういうことだ?
ダンジョンは攻略して、資源を集めろって言いだしたのは政府だろう?
それなのに意見が割れてるってどういうことだ?
俺が話が見えないと首をひねっていると、一ノ瀬さんが追加説明をしてくれた。
「確かにダンジョンは探索が進めば、より上質な資源が手に入ります。しかし、クリアした場合は話が違います。すでに確認済みですが、ダンジョンがクリアされると、ただの洞窟になります。何も資源を生み出さない、ただの穴です。」
うわ~。
確かにそれはまずいな。
クリアしてしまったら、資源を回収できなくなってしまう。
そうすると、昨今の状況を考えると、国力低下になることこの上ないな。
「つまり、今現在は攻略しない方がいいという意見の方が優勢です。」
「まあ、それはそうですよね。資源がなくなるってことは他国からの輸入になるんだから。」
「ですので双方の陣営で攻略のカギである【神の権能】持ちを確保する動きが出てきております。」
なるほどね。
つまり、どちらの陣営としても、できれば俺を拘束したいってのが本音か。
「で、自衛隊は……。一ノ瀬さんはどっち派何ですか?」
「そうですね。私は〝攻略しなくてはいけない〟。そう考えています。」
「攻略派とは違うんですか?」
「神の権能を得たせいでしょうか。日常でとても違和感を感じる出来事が増えました。このままこの世界を、自称神の思い通りにしてはいけない。そう考えています。今はまだ、この状況が始まったばかりです。しかし、これが20年30年と続くとなれば話は変わります。この生活が〝当たり前〟になってからでは遅い。そう思うのです。」
確かに一ノ瀬さんの言っていることは正しい。
俺も違和感を覚えている。
そして、ダンジョンの外の生物が【生物の進化】を始めたことに危機感を抱いている。
近いうちに何かあるんじゃないかと。
「中村さん。出来れば私たちに協力してください。この世界を狂った世界を終わらせるために。」
「どうして一ノ瀬さんはそこまで……。」
一ノ瀬さんは、俺の質問に答えなかった。
ただ、何かを思案しているようにも思えた。
俺の自宅につく少し前。
一ノ瀬さんは意を決したように、話してくれた。
「中村さん。今から話す内容は他言無用でお願いします。児島一曹、君もです。」
「はっ!!」
「まずは、このダンジョンが発生した経緯についてお話します。」
一ノ瀬さんから聞いたその内容に、俺は唖然としてしまった。
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