最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第4章 変革

059 一夜明けて……

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 翌朝のニュースでも確認したが、やはり冗談ではなかったようだ。
 全人口の約半数が今回のダンジョンの暴走スタンビードで亡くなったのだ。
 俺たちは“たまたま”合流でき、“たまたま”避難が遅れ、“たまたま”生き残った。
 ただそれだけだった。

 朝食の際、みんなの表情はすぐれなかった。
 それはそうだ。
 今だ誰とも連絡が取れず、親戚や友達、知り合いの安否がわからない。
 一部取れた人たちもいたが、圧倒的に取れない人の方が多かった。
 カイリたちには災害伝言ダイヤルにメッセージを残したので、気が付いたら連絡が取れると思う。
 だから今はみんなの無事を祈るばかりだ。


 
「これからどうしたものだろうか。」
「そうですね。このままここにいてもいずれ物資は尽きるでしょう。その前に物資の回収をするか、それとも生き残りの人たちと合流するか選ばなくてはならないですね。」

 父さんと総一郎さんは、この先について話し合っていた。
 お互い家長としてどうするか意見をまとめているようだ。

 俺と谷浦は周辺の警戒に当たっているが、今のところ特に問題はない。
 
 美鈴と虹花さんは、今日も情報収集にあたってくれてる。
 昨日も色々集めてくれているみたいだけど、日本にある1000を超えるシェルターハウスのうち、首都圏の物はほぼ壊滅しているようだ。
 電話はつながらないが、メールやネットは何とか生き残ってくれているので、情報交換がまだできている状態だ。
 俺もパーティーメンバーにメールを送り、返事を待っていた。
 そして一ノ瀬さんにも……
 本来は借りを作るべきではないと思う。
 だが、今の状況で四の五の言っている余裕はない。
 おそらくこの先、俺と谷浦は彼らに良い様に使われるかもしれない。
 それでも家族を守れるなら、受け入れる覚悟はできて言る。
 谷浦とも話したが、同じ意見を言ってくれた。

 母さんたちは、家事を分担してこなしてくれている。
 ゴキブリ退治でレベル上げが可能なので、一応谷浦のお母さん【谷浦たにうら 冴子さえこ】さんと、叔母さんの【かつら 美織みおり】さんにもレベル上げを行ってもらっている。
 殺虫剤はごめん、近場のスーパーから買ってきた(代金はおいてきたよ)。
 ある分で出来るだけ家族にはレベルを上げてもらいたい。
 その方が生き残る可能性が増えるから。

「先輩、カイリちゃんたちと連絡取れました?」
「いやダメだな。一応メールは送ったから、見てくれるといいんだけど。」
「そう……ですね。きっと見てくれますよね。」

 おそらく谷浦は最悪の事態も考えているんだろうな。
 俺も一瞬それはよぎった。
 でもあの子たちを信じようと思う。
 きっと大丈夫。
 彼女たちは強いから。

ピロン

 すると俺のスマホに一通のメールが届いた。




 一ノ瀬さんからだ。

『中村さん、ご無事で何よりです。いまどちらにいらっしゃいますか?我々と合流するつもりはありませんか?返事を待っています。』

 どうやら一ノ瀬さんも無事のようだ。
 まあ、自衛隊だから事前に情報をわかっていて行動しているから当たり前か。
 だから俺は一ノ瀬さんにメールを送ったんだから。

「どうしたんすか先輩。浮かない顔をしてるっすよ?」
「あぁ。一ノ瀬さんからのメールだ。合流するかどうか決めてほしいそうだ。一回父さんのところへ行ってくる。任せて大丈夫か?」
「大丈夫っすよ。あ、なな姉ちゃんを寄越してくれると助かります。」
「わかった、伝えとく。」

 俺はそう言うと、谷浦と別れ、父さんたちの元へ向かった。
 居間では父さんと総一郎さんがハザードマップを広げて、今後の行動予定を確認していた。
 ハザードマップには20か所に丸印があり、その上にバツ印が書かれているところもある。
 昨日俺たちが行く予定だったシェルターハウスには、バツ印がされていた。
 父さんたちは美鈴と虹花さんと協力して、シェルターハウスの状況を確認していたのだ。
 バツ印が書かれているのはおおよそ8か所。
 他に三角印がある。
 おそらく未確定情報なんだろうな。

「作業中ごめん。話が有るんだけどいいかな。」
「どうしたケント。何か問題があったか?」
「そうじゃないよ。判断を仰ぎたくてね。あ、虹花さん悪いんだけど見張り交代してもらっていいかな?」
「わかったわ。栄次郎が呼んでるんでしょ?」
「良く分かったね。」
「そりゃね。それとここだけの話……」

 どうやら谷浦は美鈴に一目ぼれしたらしい。
 2人とも28歳で同い年。
 問題はないけど……。
 おそらく、2人きりになったら見張りどころじゃないんだろうな。

 虹花さんが見張りに回ってくれたので、改めて父さんたちに一ノ瀬さんからの提案を話した。
 美鈴は、俺や谷浦が犠牲になるんじゃないかと憤慨していた。

 あれ?意外と谷浦に脈あるのか?

 それは後で考えるとして。
 この先の見通しが立たない以上、選択肢はほとんどないに等しかった。
 父さんと総一郎さんも、『息子を犠牲にし、自分たちが人質になるのではないか』と懸念していた。
 俺としてもその懸念があることを伝えた。
 谷浦とも話した結果を伝えると、2人とも折れてくれた。
 一家を守る長として、苦渋の選択だったと思う。
 しきりに俺に頭を下げてくる。

 母さんたちも仕方ないとしぶしぶ了承をしてくれた。

 俺はすぐに一ノ瀬さんにメールを送った。
 通信速度の関係で、すぐに返事をもらうことができないのがもどかしいな。

 しばらくすると一ノ瀬さんからメールが届いた。

『では今は自宅にいるということですね?部下をそちらに送りますので、移動できる準備を整えてください。到着予定時刻は14:00です。なお、返信は不要です。』

 皆にメールの内容を伝え移動準備を開始した。
 よくよく考えると、みんなインベントリのスキルがあることを思い出し、持てる分の食料や道具を持ち出すことにした。
 現金や預貯金が役に立つとは思わないけど、念のために持っていくことにした。



 しばらくすると、虹花さんの大声が聞こえた。

「ゴブリン発見!!数30!!こちらに向かっています!!」
「くそ!!どうしてこんな時に!!」

 俺たち4人はすぐに戦闘態勢に移行した。

 母さんにはいつでも結界を発動できるように待機してもらった。

 父さんは何気にスキル【短刀】【短刀術】を習得していた。
 ノミや小刀を扱っていたからだろうか?
 その辺は本人も良く分かっていないらしい。
 大工道具を使っていたらそうなったと言っていた。
 ただ、戦闘経験はほとんどないので、何かあった場合に備えてはもらっていた。

 総一郎さんのスキル【医術】は、戦闘行為が出来なくなるというデメリットが存在していた。
 ただ、それにも増して余りあるメリットがある。
 医療空間を作り出し、一人で手術まで出来るのだ。
 さらにスキル【麻痺攻撃】で相手を麻痺させることができる。
 これにより麻酔が不要となるそうだ。
 術後の回復にスキル【回復魔法】を使えるので、すぐに回復させることも可能。
 まさに後方支援のスペシャリストだ。

 冴子さんは、スキル【調薬】で簡単な薬を作ることができる。
 スキルレベルによって、その種類が増えるそうだ。
 今はまだそれほど高くはないので、簡単な回復薬や解毒薬、栄養剤がいいところらしい。
 ふと、スキル【製薬】とは違うのか聞いたけど、回復関連に特化したスキルみたいだった。
 一応『スミスクラン』にも登録はしていたそうだ。

 そして一番の驚きは美織さんだった。
 スキルが異常に多いのだ。
 自称神が現れたときに4つのスキルを覚えたそうだ。
 スキル【算術】は計算速度が速くなる。スキルレベルが上がればさらに加速するようだ。
 スキル【並列思考】は同時に複数の事を考えられるようになる。スキルレベルでその数が増えていく。
 スキル【火属性-】・スキル【水属性-】は言わずもがな戦闘用スキルだ。
 むしろここまでスキルがそろっているのに、探索者をしない選択をした美織さんが凄いよ。
 本人曰く、『私は生涯教師です!!生徒を見捨てることはできません!!』とのことだ。
 あくまでも先生でいようとしたらしい。
 だから探索者になることは考えなかったそうだ。
 ただ、今は探索者としても活動すべきだったと後悔していた。
 誰もこうなるとは思っていなかったから、仕方ないと思うしかないかな……


 戦闘準備の整った俺たちは、ゴブリンの集団を迎え撃つのであった。
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