最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
71 / 131
第4章 変革

067 それから……

しおりを挟む
「ゴワァ~~~~!!」
「くそ!!」

ガゴン!!

 激しい爆音とともに、洞窟型ダンジョンの地面が抉れ土埃が舞う。
 周囲の視界は遮られ、何者かの影だけが揺らめいている。

ブオン!!

 その巨体から繰り出された、攻撃は土埃を振り払いながらその影に襲い掛かる。

「これだからデカトカゲは嫌いだ!!」

 男は後方に飛び退くと、勢いのあまり止まることができず、長い距離を滑ることになってしまった。
 目の前にいるのはデカトカゲ……
 ドラゴン種だ。
 その大きさはおそらく10mを超えており、しっぽも併せたら15m前後の攻撃範囲を持ち合わせていた。

「だ~~~~ぁ!!もう!!どう攻めろって言うんだよ!!こん畜生!!」

 そのドラゴンは青白い巨体を十全に生かし、攻め立ててくる。
 一発一発とても重く、生身で耐えられるような攻撃ではなかった。
 男は距離を取りつつ、そのすべてを躱していく。
 
「グロワァ~~~~~~!!」

 一鳴きとともに大口を開けたドラゴンは、大きく息を吸い込んだ。

「やば!!【隔絶】!!」

 男がスキルを発動させると、男の前の空間がグニャリと音を立てるが如く歪み、防壁が構成されていく。

「ガッ!!」

 ドラゴンが吐き出したものは巨大な魔力の塊だった。
 その塊は周りの水分を纏い強大な水弾と化して襲い掛かってくる。

 その水弾は男が発動した防壁と激しくぶつかり合った。
 水弾は一気にはじけ飛び、辺り一面水浸しとなった。

「危なかった~~~!!なんつうばかげた威力だよ。これだからデカトカゲは嫌いなんだ!!」

 飛び散った水弾は周囲を細かくえぐり、散弾銃でも乱射したかのように辺り一面を変えていた。

「グルルルル~~~~~!!!!」

 渾身の一撃を防がれて、怒りに震えているかのように威嚇を続けるドラゴン。
 しかしこの男は言葉では焦ったと言っているが、態度は一切焦った様子もなく、ずっと隙を窺っているようだった。

「じゃあ改めてこっちから行くぞ!!」

 男はそう言うと、地面を勢い良く蹴り出し、加速していく。
 しかし、ドラゴンとの身長差を考えると、攻撃が届くとは思えない。
 そこで男はさらにスキルを発動していく。

「【結界】!!【結界】!!【結界】!!【結界】!!」

 複数の薄い板がドラゴンの周りに形成されていく。
 男はその【結界】を足場に、縦横無尽に駆け回り始めた。
 それはワイヤーアクションでもしているかのような、不可思議な動きだった。
 しかも、その速度はどんどん加速して、常人の目には追いつくことが難しくなっていた。
 ドラゴンもまた、その姿を失いかけている。

「そろそろ……。【気配遮断】【魔力遮断】【消音】!!」

 するとどうだろうか。
 男の姿形が、その戦闘区域からなくなったのだ。
 男の姿を探し、うろたえるドラゴン。
 前後左右上下見渡しても、その姿を捕らえることはできなかった。
 ドラゴンはふと寒気を感じた。
 本能だったのか、どうなのかは分からない。
 咄嗟に喉元の逆鱗を両腕でカバーした。

ザシュン!!

「ゴ……ガ……」

 ドラゴンの腕は力なくおろされていく。
 その喉元の逆鱗には、一本の剣が突き立てられていた。

 その剣を握っていたのは、先ほど姿を消した男だった。
 男がその剣を引き抜くと、勢いよくドラゴンの血液が噴き出した。

「あ!!もったいない!!」

 男は慌てて、その血もろともインベントリにドラゴンをしまい込んだ。

「これでこの区域のダンジョンは終わりだな……。あとはダンジョンコアを破壊して終了っと。」

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 大きな音と共に下層へと降りるための階段が、地面に出現した。
 男は、出現した階段を警戒すること無く下りていった
 そして残されたのは、激しい戦いの痕跡だけだった。



「お、あったあった。いつ見ても不思議な空間だよな。」

 男がそういうのもうなずける。
 30畳ほどの円形の洞窟の真ん中に台座が置かれていた。
 その台座の上に、ふわふわと浮いている一つの球体。
 その球体はガラスとも違う素材でできており、濃い紫色で淡い光を発していた。
 その光は揺らめきながら壁に吸い込まれていく。
 恐れくこの光が【魔素】であり【魔力】なのだ。
 そして台座からは、その球体に向けて同じく光が照射されていた。
 これは可能性だが、ダンジョンで消費された【魔素】や【魔力】はダンジョンに吸収され、そして巡り巡ってまたこの球体へと帰っているのだろう。
 そして球体から放たれた【魔素】や【魔力】がモンスターやアイテムを生み出す。
 その循環を制御しているのが、この目の前の球体【ダンジョンコア】なのかもしれない。

「いったい何個壊してきたんだろうな……さすがに数えるの面倒になってきたな。」

 そう言うと男は何の躊躇もなくその【ダンジョンコア】に剣を突き立てた。
 【ダンジョンコア】は一瞬強く発光したのち、その光は弱まり、漆黒の球体が浮いていた。
 そしてその球体はふわりと台座に落ち、パリんという音と共に砕け散った。

グラグラグラ

 小さな地震があったかと思うと、ダンジョンからモンスターの気配がしなくなっていた。
 ダンジョンはただの洞窟に変わったのであった。

「これでここの用事は完了っと。にしてもダンジョンコアを壊したときの経験値はえげつないな。」

 男は体の変化を確認しつつ、ダンジョンを引き返していった。

 台座に落ち割れたダンジョンコアは、徐々に崩れはて、そして粉となった。
 どこからともなく吹き込んだ風に舞い、ダンジョンは活動を停止したのだった。

「うわ!!まぶし~~~!!もう日中だったんだ。目がものすごく痛い。」

 男は手でひさしを作り、太陽を睨み付けていた。
 その顔にはいくつもの傷があり、瞼には2本の縦傷がついていた。
 それは歴戦の戦士といってもおかしくない風貌となっていた。

「おかえりなさい。これで最後のダンジョンですね。」
「あ、ただいま戻りました。」

 男を出迎えた男性は、自衛隊服に身を包んだ青年だった。
 男は自衛隊員が求めた握手を交わし、にこやかに告げた。

「一ノ瀬さん、これで予定のダンジョン攻略は完了です。」
「わかりました。中村さん……。ありがとうございました。」


 俺はあの日以来、自衛隊が管理していないダンジョンを攻略して回っていた。
 そのおかげと言えばいいのか、レベルを超えた先にある力を手に入れ始めていた。
 本来であればCランクの俺は、Bランクのダンジョンへの立ち入りは許されていない。
 しかし、一ノ瀬さんの計らいで、この地域限定ではあるが立ち入りを許可されていた。
 そして、その許可を元にひたすら攻略を続けていた。
 来る日も来る日も……
 ただ一つの目標の為に。

「では、中村さん。あなたにBランクライセンスを発行します。レベルは50を超えたんでしょう?」
「はい、すでに取得スキルを合わせても50を超えました。」

 すると一ノ瀬は、にこやかな表情から一転して真剣な面持ちとなっていた。
 周りにいた自衛官たちも同じく、いつになく真剣な面持ちだった。

「中村殿!!この度の中立地域開放への御助力、誠にありがとうございました!!」
「ありがとうございました!!」

 一ノ瀬さんや自衛官の方々が、一斉に敬礼で俺に謝意を示してくれた。
 これに関しては突然のことであっけに取られてしまい、どうしていいか戸惑ってしまう。
 とはいうものの、今回攻略したダンジョンがこの周辺の最後のダンジョンだった。
 つまり、自衛隊管理以外のダンジョン領域以外は全て人類に介抱されたことを意味している。

 じゃあ、俺以外の探索者たちはと言うと、自衛隊管理のダンジョンい潜り、資源の回収に勤しんでいた。
 それはレベル上げも含めて行われていて、この先またスタンビードが発生したときに後悔したくないという思いが強かったみたいだ。

「では中村さん。ついにいかれるのですね。」
「はい、カイリ達が待ってますから。」

 これでようやく俺は、カイリたちを追うことが出来る。
 やっと、やっとだ……
 
 それから三日後……俺は生まれ育った街を出て【首都圏解放戦線】へと向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...